神、レクシシュ
春乃がアルの声を聞いて、俺の首から手を放す。
俺はそのまま起き上がろうとすると、
「お兄ちゃん、後日ゆっくり話そうね」
春乃が黒い笑みをしながらそう言ってくる。
「うん。俺も皆と話さなきゃいけない事があるから」
俺は皆の事を見ながら、そう言って立ち上がる。
少しフラフラするが、歩く事に問題はなさそうだ。
俺はそう思い、アルの所へ行く。
「お待たせ。よろしくお願いします」
俺がアルにそう言って頭を下げると、
「おいおい、そこまで畏まらなくても良いじゃねえか」
俺にそう言って手で頭を上げようとしてくる、
俺はアルの手の誘導に従い、頭を上げる。
アルの顔を見ると、何やら不思議そうな顔をしている。
「どうしたのアル?」
俺がそう言うと、アルは俺の顔をじっと見てくる。
そして、
「何かあったのか?顔つきが少し違うぞ」
俺にそう言ってくる。
「少しだけね。決心というか、覚悟みたいなね」
「なるほどな。だが、無理すんじゃねえぞ」
俺がアルの質問に答えると、アルはニカッと笑いそう言ってくる。
「ありがとう。アルも何かあったら、1人で悩まないで、リーシャや俺に相談してね」
俺がそう言うと、
「あいよ」
アルがそう返事をする。
それから俺とアルは城の外に出ることになった。
アルに案内されて城を出ると、リーシャが外で待っていた。
久しぶりに感じるな、アルとリーシャと俺って…。
俺がそう思っていると、アルが、
「よし、これからシュウの修行を開始する!」
そう言った。
「よろしくお願いします」
俺がそう言うと、
「まぁ、今回はオレやリーシャは一緒じゃないんだけどな」
アルは苦笑いしながら、俺にそう言ってくる。
「そうなの?」
「あぁ。今回はシュウにレクシシュと会って貰いたいんだ」
アルが俺にそう言ってくるが、レクシシュさんと言えば…。
「神様ッ!?」
俺が大声を出したせいで、周りの騎士の人が俺達を見てくる。
俺は騎士の人達に大声を出してしまった事に謝り、改めてアルに、
「そう簡単に会えるの?」
そう問う。
「リーシャの転移魔法でサクッと行けるぜ。そこならシュウが思いっきり修行できると思ってな」
「そ、そうなんだ。そこまで考えてくれてありがとう」
俺がアルにそう言うと、
「あの幼女の所に行くと、碌な事がないんだけど…。シュウの為に頑張るわ」
そう言って、俺に触れてくるリーシャ。
「リーシャ、ありがとう」
俺がそう言うと、リーシャが微笑む。
「さて、じゃあ頼むぜリーシャ」
アルが俺とリーシャにくっ付いてそう言う。
「はいはい。転移!」
リーシャが魔法を使った瞬間、城の外だった景色が変わる。
まるで、夜空や宇宙の様な真っ暗は空間に、キラキラと小さな光が散り光り輝いている。
そのせいか、真っ暗だと言うのに、リーシャやアルの姿はハッキリと見える。
「ここに…神様が?」
俺が2人にそう聞くと、2人共頷く。
すると、
「仕事したくないのじゃ!」
「ダメです。しっかりとこの書類にレクシシュ様の名前を書いて下さい」
「名前を書くだけならセエレが書けば良いじゃろ!」
そんな声が後ろから聞こえてきた。
後ろを向くと、少し離れた所に大きな机があり、そこに金髪の女の子が座りながらバタバタしている。
その脇には、何かを持っているであろう白い女性が立っている。
「あん?誰だあれ?」
「私達の後に来た神見習いじゃない?とにかく行きましょ」
アルが疑問の声を上げ、リーシャがアルの言葉に答えつつ歩いていく。
俺とアルもリーシャの後に続き、近づいて行くと、
「んん?おぉ!!リーシャにアルではないか!!」
座っていた女の子が2人に気づき、そう声を出す。
その声は、さっきの声とは違い、とても嬉しそうだ。
「久しぶりねレクシシュ」
「相変わらず、見習いに書類全部任せてるんじゃねえだろうな」
リーシャとアルが女の子…神、レクシシュ様にそう言う。
すると、
「お前達と違ってセエレは厳しくてのぅ…。ここ3日間は仕事漬けじゃ…」
そう言うレクシシュ様の瞳は赤く充血している。
そんなレクシシュ様の言葉に、
「何言ってるのですか?全部の書類を私に押し付けて部屋に閉じ籠ったんじゃないですか」
後ろにいる白い女性がそう言う。
「焼き菓子を1日中食べた後に、そのまま寝てたかったんじゃ!悪くないんじゃよ!!」
「1日中食べた後に、2日間寝続けたのはどこのどちら様でしょう?」
「…知らんもん…」
そんな話をする2人を見て、リーシャとアルがため息をつく。
「それで2人は何の用…待て、後ろの者はどちら様じゃ?」
レクシシュ様が俺に気づき、そう声を掛けてくる。
俺はレクシシュ様に自分が見えるよう立ち、
「初めまして。神、レクシシュ様。私は冒険者をしています、シュウ・ハヤマと言います」
そう自己紹介をすると、
「おぉ~!そなたがリーシャの蜘蛛の巣を取り払った男か!もっと近くにくるのじゃ!」
レクシシュ様が大はしゃぎをして、俺を呼ぶ。
俺はレクシシュ様に従い、レクシシュ様の近くに行く。
「ちょっとレクシシュ!蜘蛛の巣って何よ!」
俺がレクシシュ様の所に行くと、リーシャが怒りながらそう言う。
「そんなの、洞窟で1人寂しくこそこそ生きてきたリーシャに良く似合うではないか!それに、リーシャの股の巣も払ったと言う意味でもあるんじゃよ!上手いじゃろ!ブヘッ!?」
「レクシシュ様、神であり一応女性でもある御人が、はしたない事を言うのは止めて下さい」
レクシシュ様がリーシャの質問にそう答えた瞬間、レクシシュ様の頭に拳骨が落とされる…。
拳骨を落としたのは、脇にいた白い女性だ。
「何でそんな事知ってるのよ…」
リーシャが顔を赤くしてそう言うと、
「わしのスキルを忘れたか??そんな事お見通しなのじゃ!」
リーシャに向かって胸を張るレクシシュ様…、頭がポコッと腫れている…。
「まぁ、その事についてはそっとしといてやれレクシシュ。それより頼みがあるんだ」
アルが頭を掻きながらレクシシュ様にそう言う。
「ん?何じゃ?言うてみい?」
「シュウの為に、部屋を作ってくれないか?」
「何じゃそんな事か…もっと面白い事がしたいのぅ…。ほれ!」
レクシシュ様がそう言って指を鳴らすと、何もなかった空間に突然扉が現れた…。
読んで下さってありがとうございます!
ブックマークして下さった方ありがとうございます!
評価、感想、ブックマークして下さると嬉しいです!
誤字脱字などありましたら、連絡して下さい。
よろしくお願いします。
 




