起床
姉さん達がアルに触れられて、夢の中に入ってから既に4日経過している。
俺の時も5日間眠っていたと言われたから、そろそろ皆目を覚ますとは思うが、それでも心配で皆の傍で異常が無いか確認する。
魔視を発動して、魔素の変な動きが無いかを確認している。
皆、穏やかな寝顔をしているが、夢の中では戦っているんだ。
俺には、こうやって傍で応援している事しかできない…。
「歯痒いな…」
俺はそう呟く。
リーシャとアルは、今は4人が目を覚ますのを待つと言って普通に生活している。
ルリィは、俺と一緒に4人の様子を見ていてくれていたけど、疲れてしまって今は寝ている。
すると、
「ん…」
先輩が目を覚ました!
「ここ…は」
「怜華さん大丈夫ですか?少し触りますね」
俺は怜華さんの頭に触れて、角が生えていないか確認すると同時に、体温を測る。
アルが言うには、魔族は人と比べられないほど体温が低いらしい。
だから、人肌くらいなら大丈夫だと教えてもらった。
「柊ちゃん」
怜華さんが、額に手を当てている俺の手に自分の手を重ねてくる。
「お疲れ様です。今日はゆっくり休んで下さい。何かあれば言って下さいね」
俺がそう言うと、怜華さんは隣を見る。
「まだ、皆目を覚まさないのね」
「はい。皆まだ頑張ってます」
俺がそう言うと、怜華さんが手を伸ばしてくる。
俺は怜華さんの額から手を離し、怜華さんの手を握る。
「私、強くなれたのよ。これで…」
怜華さんが俺の手を強く握る。
「怜華さん?」
「…魔法が使えなくなってる?」
「もしかしたらMP切れなんじゃないですか?」
俺がそう言うと、怜華さんがため息をつく。
「そうみたい…。このまま寝ても良いかしら?」
「どうぞ。手、握ってますから」
俺がそう言うと、怜華さんが目を閉じる。
それからすぐに怜華さんは寝てしまった。
俺は、怜華さんが辛くないような位置に手を置いて握る。
怜華さんが寝てからしばらくした後、姉さんが動いた。
俺は怜華さんに心の中で謝って、手を離して姉さんの傍に行く。
「おはよう姉さん」
俺がそう言うと、姉さんがカッと目を開く。
「…柊?」
「だ、大丈夫?」
俺が姉さんにそう聞くと、姉さんはハッと何かに気付いた様な顔をして、突然もぞもぞ動き始める。
「どうしたの姉さん?少し触るね!」
俺は姉さんの額に触れるが、特に問題はなさそうだ。
「…柊、寝顔見てた?」
姉さんが俺にそう言ってくる。
「う、うん。見たけど」
俺がそう言うと、姉さんの顔が一気に赤くなる!
「…恥ずかしいから、寝顔は見ないで欲しい」
口元を隠して顔を赤くしている姉さんを見て俺は、いつもはカッコいい姉さんが可愛く見えてしまった…。
「ご、ごめんね姉さん」
俺がそう謝ると、
「…こっそり脱がすなら、良い」
そう言う姉さん。
その言葉を聞いて、俺は固まる…。
寝顔はダメだけど、脱がすのは良いのか…。
俺がそう思っていると、
「…今寝てる。脱がすなら、気づかない今がチャンス」
目をつぶって、俺にそう言ってくる姉さん…。
「起きてるでしょ姉さん…」
「…寝てる」
俺が呆れていると、うっすらと目を開けて俺の様子を確認する姉さん。
それから少しの間、姉さんとそんな会話をしていたら、
「…お兄ちゃんの秘蔵コレクションがッ!」
春乃がそう叫び声を上げて突然起き上がる!
そしてすぐに横になる春乃。
「は、春乃?」
俺はおそるおそる春乃に声を掛ける。
すると、俺の方を向いてくる春乃。
俺は姉さんの傍を離れて、春乃の様子を見る。
春乃の頭に触れて、異常がないか確認するが、特に問題はなさそうだ。
「お兄ちゃん」
「頑張ったね春乃」
俺は、春乃の頭に触れながらそう言って春乃の頭を撫でる。
「お兄ちゃん、私に触れても興奮しないんだね…」
俺の様子を見て、春乃がそう言ってくる。
「流石にしないよ」
俺がそう言うと、春乃は不満そうに頬を膨らませる。
「…おっきくなってない」
春乃が俺のやや下を見ながら、そう言ってくる。
「…春乃さんや?どこを見てるのかな?」
「そんなの、お兄ちゃんの…」
「ごめん、俺が悪かった。言わないで下さいお願いします」
春乃が律儀に俺の質問に答えようとして、俺は慌てて春乃の言葉を遮る。
「…春乃、お疲れ様」
姉さんが春乃にそう言うと、春乃は姉さんに笑いかけて、
「お姉ちゃんもお疲れ様。どうだった成果は?」
姉さんにそう言う。
「…戦える力は手に入った。これでこれまで以上に戦える。春乃は?」
「ん~、力は手に入ったけどまだ完璧に使いこなせてないから、訓練しないといけないなぁ」
そう話している2人。
3人共、無事に戻ってこれてよかった。
俺はそう思いながら、未だ眠っている結城さんを見る。
彼女はまだ、起きていない。
「お兄ちゃん」
俺が結城さんの様子を見ていると、春乃が声を掛けてくる。
「どうした?水とかいるか?」
俺がそう聞くと、春乃は首を振る。
「お姉ちゃんの服脱がせようとしたの?」
ジトッとした目で俺を見てくる春乃。
「そんな事してないよ」
俺がそう言うと、
「…柊、私も頭撫でて。あとお尻も」
姉さんがそう俺に言ってくる。
「頭だけね…」
俺はそう答えて、少し移動して姉さんの頭を撫でる。
「…ふふふ」
嬉しそうに笑う姉さん。
すると、
「ねぇお兄ちゃん?」
春乃が声を掛けてくる。
俺は姉さんの頭を撫でながら、春乃の方を向き、
「どうした?」
声を掛ける。
春乃は俺を見ながら、
「お兄ちゃんはやっぱり胸が大きい人が好きなの?」
そう聞いてきた。
「そんな事は無いよ」
俺が春乃の質問にそう答えると、結城さんが突然起き上がる。
「あっ、真海が起きた」
結城さんが起きた事に春乃が気づきそう言う。
俺は姉さんの頭から手を離して、結城さんの側に行く。
「結城さん」
俺が声を掛けると、こちらを向く。
「ごめんね。ちょっと触るね」
俺はそう言って、結城さんの頭に触れる。
手が触れた瞬間、結城さんの体がやけに冷たいのを感じた!
もしかして!
俺はそう思った瞬間、結城さんの額から僅かに突起物が出ている!
「マズい!ごめんね!」
俺は慌てて、魔素を操って結城さんの体を拘束する!
結城さんは体が動かない事に、目を見開き俺の方を睨んでくる。
「魔族化…してきてる…」
結城さんの様子を見て、俺はそう呟いた。
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