監視
怜華、秋沙同様にアルネウスに触れられて、夢の世界にいる春乃。
「…」
私の目の前に私の顔そっくりの人が立っている。
でも、様子がおかしい。
「貴女は、どうして強くなりたいの?」
さっきから何回も聞いた言葉だ。
でも、私は強くなりたい訳ではない。
「だから何回も言ってるでしょ?私はお兄ちゃんの監視していたいの!強くなりたい訳じゃないの!」
「…」
そして、私がそう言うと黙ってしまう。
「何でそんなにお兄ちゃんの監視がしたいの?」
私そっくりの人がそう聞いてくる。
「お兄ちゃんの事が好きで、ずっと見ていたいから」
私は当然のように答える。
私がお兄ちゃんを監視したい理由なんて、そんなのお兄ちゃんの事が大好きだからに決まってる。
むしろ、皆こういうものだ。
怜華姉ちゃんもお姉ちゃんも、私が録っておいたお兄ちゃんの生活模様をダビングして持って帰ったし、真海が遊びに来た時は鑑賞会をする。
真海は恥ずかしそうにしていたが、私も最初はそうだった。
でも、その羞恥心も時間が経てば無くなる。
「…何でお兄ちゃんの事を好きになったの?」
そっくりさんが私に聞いてくる。
私がお兄ちゃんを好きになった理由か~。
そんなの、
「私がブラコンだから?」
こう言うしか無い。
見ると、そっくりさんが慌てている。
「そう言う事じゃなくて、思い出とか!そう言う事よ!」
「お兄ちゃんとの会話、出来事、全てが思い出であり、お兄ちゃんを好きになる理由だよ」
「…」
私がそう言うと、そっくりさんがまた黙る。
「それより、早くお兄ちゃんをもっと監視する力が欲しいんだけど?どうすれば良いの?」
「…強くなる力であり、監視する力じゃないんだけど…」
私の言葉に、呆れているそっくりさん。
「まぁ良いや。私と手を繋ぎましょ?そうすればもっと強…監視する力が手に入るよ」
私にそう言って手を伸ばしてくるそっくりさん。
私はその手を掴もうとして、止まる。
「どうしたの?」
「監視する力って、具体的にはどんな力なの?」
「それは…まぁ色々だよ」
私の質問に、曖昧に答えるそっくりさん。
「私は説明書や契約書とかはしっかり全部読むタイプなの。詳しく教えてくれないと、この手は握れない」
私はそう言って手を引っ込める。
「…じゃあもう、力尽くでも良い?」
「…ふ~ん」
私とそっくりさんが睨み合う。
私のそっくりさんだから、今私も同じ顔をしているんだろうな。
私から見て、そっくりさんは獰猛な笑みを浮かべている。
「良いんだよね?」
「勿論」
私がそう言った瞬間、加速魔法を使う。
一気に加速して、そっくりさんに斬りかかるが躱されてしまう!
「ハァ!」
「ヤァ!」
私達の声が重なり、互いの斬撃が交差する!
どんどんそっくりさんに斬りかかるが、向こうも私と同じ考えなのか、剣がぶつかり合うだけ。
互いに一歩も引かず、加速魔法を使用しながら斬りかかる!
すると、そっくりさんのスピードが速くなる!
私の攻撃が当たらないのに、そっくりさんの攻撃が私の肩を掠る!
これ以上速くするためには、風魔法と加速魔法を同時使用しないといけない…。
そうすると、MP切れが早くなっちゃう…。
でも、このままじゃ私が負けちゃう!
仕方ないよね…。
私はそう思いながら風魔法を使う。
「ッ!?」
そっくりさんが私が風魔法を使うのがわかったのか、慌てて私から距離を取ろうとする。
だが、私は逃がさない!
そっくりさんの動きを予測し、後ろに回り込んで斬りかかる!
「くッ!」
私の攻撃を何とか防ぐそっくりさん。
だが、反撃の隙を与えるつもりはない!
更に、スピードを上げて斬りかかる!
すると、私の刃がそっくりさんに当たる感触がした!
このまま一気に押し切る!
私はそう思いながら、加速魔法、風魔法の更に使う。
それと同時に、MPがごっそり無くなるのを感じる…。
早くしないと…。
そう思っていると、そっくりさんの速度が速くなった!
向こうも風魔法使ったようだね…。
更に加速するそっくりさんの攻撃を避けていくが、さっきよりも掠る事が多くなる!
私も負けずに斬撃を繰り出すが、そっくりさんの攻撃に比べると、私の攻撃は当たってない…。
「どう?私のこの力が欲しくない?」
斬撃を繰り出しながら、私にそう言ってくるそっくりさん。
でも、これは私の望んでいる力ではない…。
怜華姉ちゃんやお姉ちゃんが、私と同じ力を持っていたら、私は勝つ事が出来ない…。
その理由は、元々私は運動が苦手なのだ…。
今だって、攻撃をしている間に何回か転びそうになったし…。
出来れば、激しく戦うより、援護とかの方が私に合ってるんじゃないかと思ってしまう。
「欲しいでしょ?欲しいんでしょ?」
そう言いながら、私に今まで以上の最速の連撃を繰り出してくる!
その攻撃を防ごうとするが、MP切れの所為で体に倦怠感が襲い、防ぐ事が出来ず体中を斬られてしまう!
「くぅぅ…」
体中を斬られ、更に襲ってくる倦怠感に、私はMP切れの所為で魔法を強制解除して倒れる。
スピードの所為で単純に倒れるだけじゃなく、ゴロゴロ転がってしまう。
「ぐっ…いった~」
私はそう言いながら、体を起こす。
すると、
「どう?ここまで圧倒した力を手に入れるつもりはないの?」
私の背後に回り込んで、首に剣を当てるそっくりさん…。
刃が首の皮膚に当たり、痛い。
多分、血が出てるんだろうな…。
乙女の肌はそう簡単に傷つけちゃいけないのに…。
私がそう思っていると、
「欲しいって言えば、すぐに渡せるんだよ?」
私の耳元でそう言うそっくりさん。
「私は運動が苦手なの。そんなに動いたら何回転ぶかわかったもんじゃないよ」
私がそう言うと、後ろからクスクスと笑う声が聞こえる。
「確かにそうだね」
私の言った事がそんなに面白いのか、静かに笑い続けるそっくりさん。
そして、
「じゃあ、貴女はどんな力が欲しいの?」
私に囁いてくるそっくりさん。
私は考える、どんな力があればお兄ちゃんを監視できるんだろう…。
あと、ついでに強くなれるんだろう…。
速いだけじゃない、瞬間移動とどんな所に居ても目的のモノが見える眼が欲しいな…。
私がそう思うと、視界に変化があった…。
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