不安
その後、俺はザールさんとフェリアンさんに挨拶をして、部屋を出てアルとルリィの2人を探す。
2人は冒険者に交じって冒険者達の仕事が張り出されている掲示板を見ている。
「お~い!2人共!」
俺はそう声を掛けながら、2人に近づくと、2人は困惑している様な顔をしている。
「どうしたの?」
俺が2人にそう聞くと、
「こんな簡単な仕事何でやらないんだ?」
「この薬草、すでに持っているんですけど」
2人がそう言う。
どうやら、冒険者の仕事に不満というか、何かを感じたのだろう。
ただ…、周りの冒険者の視線が痛いので、俺は魔拳を作り2人の手を掴んで、
「失礼しました~!」
そう皆に聞こえる様に大声を出して、冒険者ギルドを後にした。
だって…、周りの冒険者達の視線がどんどん怖くなっていったから…。
その後、俺達は城に戻ったのだが…。
「これは一体…」
なんとリーシャと先輩達の他にティアとコレットさん、エルミーユさんも話に加わっている。
「柊ちゃんは私の事を1番愛しています」
「そんな事はないわ。私はシュウと結婚までしているのよ」
「…姉好き」
「妹が好きに決まってるじゃん!」
「わ、私だってシュウさんと仲良いです!」
「シュウは私の専属騎士になるんだから、皆手出さないでよ!」
「シュウさんは私の下着姿に興奮していました」
何やら皆、俺の話をしているようだ。
俺が皆に近づいて行くと、皆がバッと俺の方を見てくる!
少しホラーみたいで怖いが、無視する訳にもいかず皆に、
「な、何の話をしているの?」
俺がそう聞くと、
「柊ちゃん?私は誰とも付き合ってないってわかったんだから、もう我慢しなくていいのよ?おいで」
先輩が俺にそう言って腕を広げる。
「あの先輩…」
「誰がシュウの女かどうかの話は後にしてくれ」
俺は先輩に、色々と説明しようとすると、アルが俺の言葉を遮ってそう声を出す。
皆の視線が、アルに集まる。
「これから皆には修行してもらう。今度はこっちから魔族達に攻め込まないといけないからな。そこでオレがお前らを早く強くする!」
アルがそう言いながら、皆を見渡していく。
「まず、勇者達はもっと自分達が求めている強さを手に入れられるようにしてやる。次に王女!」
「はい!」
アルはティアの事を指差す。
「お前は聖槍が使えるんだよな?」
「はい。ですが、聖槍は当分発動させれません」
ティアは表情を暗くしながらそう言う。
「それは心配するな。魔力ならリーシャとシュウがすぐに聖槍の魔力を溜めてくれるだろう」
アルはそうティアにそう言って、俺とリーシャを見る。
俺とリーシャはほぼ同時に頷く。
「そこの王女とメイドは戦いには向いていない。メイドは王女を護るために、戦闘を優先しないだろ?」
「はい。私はコレット様を護るので、戦える事は良い事ですが、コレット様から離れる訳にもいきませんから」
アルの言葉に、エルミールさんはコレットさんを見ながらそう答える。
「シュウとリーシャも今回は頑張ってもらうぜ」
そう言いながら、アルは何故か黒い笑みで俺とリーシャを見てくる。
俺達は何をさせられるんだろう…。
それから話し合いで、明日から皆それぞれ修行を始める事になり、今日は解散になった。
俺とリーシャ、ルリィは同じ部屋に帰り、アルは別の部屋に案内された。
先輩達やティアとコレットさんは元々の部屋に帰って行った。
先輩達は自分達の部屋に俺を案内しようとしていたが、結城さんが、
「我慢しましょうね~。葉山先輩は既婚者なんですから」
そう言って皆を連れて行ってくれた。
今は部屋でゆっくりしようと、着替えている。
着替えと言っても、防具を外しているだけなのだが…。
すると、
「シュウ」
リーシャが俺に声を掛けてくる。
「どうしたのリーシャ?」
「私ね…シュウが傍に居てくれるなら、ルリィや他に…レイカさんやお義姉さんと婚姻関係になっても良いと思ったの」
「ッ!」
「どうしたの急に?」
リーシャの言葉にルリィがビクッと反応し、俺は困惑する。
「少し話しただけだけど、皆シュウの事を大切に思っているわ。まだ日が浅い私と違って、あの子達は昔のシュウの事をいっぱい知っている。私が知らないシュウの事を沢山知っていたわ」
「でも、昔の俺を知っているから恋人や夫婦になる訳じゃないんだよ」
俺がそう言うと、リーシャが俺の目の前に来る。
「そうだけど…」
「どうしたのリーシャ?」
俺はリーシャの様子がおかしい事に気づく。
俺はそっとリーシャの頬に触れる。
すると、頬を触れている俺の手をリーシャがさらに上から手を当ててくる。
「あの子達は本当にシュウの事を愛している。少し不安になったの。あんなに好意を持たれたら、シュウだってそっちが良いんじゃないかって。でも、私はシュウを渡したくない。もしかしたら嫉妬してシュウに当たっちゃうかもしれないわ」
「リーシャがそんな事するようには見えないけど…」
リーシャの言葉に俺がそう言うと、リーシャが首を振るう。
「毎日、時を刻むごとに私はシュウの事をどんどん好きになっているわ。もしかしたら嫉妬に狂ってしまうかもしれない…」
リーシャがそう言った瞬間、
「不安になるなら、お兄ちゃんを諦めて下さい」
上から声が聞こえた。
見ると、春乃が天井に張り付いている。
「よっと」
春乃が天井からシュタッと下りてきて、リーシャを見る。
「嫉妬で狂うなんてもう済ましてるんです。お兄ちゃんが私と結婚してくれるなら、何人だろうと殺します」
それはダメだろう…。
俺が心の中で春乃にそうツッコむと、
「…私は痛くしてくれるなら…放置されても快感になる」
何故かベッドの下からニョキッと顔を出す姉さん…。
どうしてここにいるんだ…。
俺はそう思いながら、
「2人共何でここに…自分の部屋に帰ったんじゃないの?」
2人の顔を見てそう言う。
すると、
「「覗きに来た」」
2人が同時に答える…。
「何を覗き見するつもりだったの?」
更に2人に問うと、
「「夫婦の営み」」
と答えた。
俺がいない間に2人に何があったんだろう…。
俺がそう思った瞬間、
「柊ちゃ~ん!私と寝ましょう!」
勢いよく扉が開き、先輩が入ってくる。
だが…。
「何で下着姿なんですか~!!」
先輩の姿を見て、俺は絶叫する。
リーシャと俺の大事な会話は、先輩達の奇襲によりうやむやになってしまった。
俺はベッドのシーツを下着姿の先輩に投げた。
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