猛毒
アルの言葉を詳しく聞こうとしたが、ちょうどその時先輩が少し息切れしながら朝食を食べに行こう部屋の扉を開けて誘いに来てくれた。
その後、とりあえず朝食を食べながら話を聞くという事にして、皆で食堂に行く。
すると、さっきまで一緒にいた皆が席を取っていてくれた。
「こっちですよ!」
結城さんが手を振りながら俺達を呼ぶ。
俺達は皆の所に行き、俺の左隣にリーシャ、右隣にルリィが座り俺の向かい側に先輩と両隣に姉さんと春乃が座った。
朝食はパンとスクランブルエッグの様なものとスープだった。
「いただきます」
俺はそう言って、パンを千切って口に入れる。
ルリィも同じようにしている。
リーシャはスープを口に入れて、
「……」
動きが止まった。
「どうしたのリーシャ?」
俺がリーシャにそう聞くと、
「何でもないわ。それよりシュウ、あ~ん♪」
リーシャは笑いながらそう言って、俺にスープを飲ませようとしてくる。
「リリアーナさん行儀が悪いですよ?」
先輩がリーシャにそう言うが、
「いつもこうしているので。一回だけですから」
先輩に笑顔でそう言うリーシャ。
俺は口を開け、リーシャのスープを飲もうとした瞬間!
「ダメ!!」
先輩が魔法で鎖を取り出して、リーシャのスプーンを弾く。
「はぁ…やっぱりそうでしたか」
リーシャがため息をついて、先輩にそう言う。
「何の事かしら?」
リーシャにそう言われた先輩は引き攣った笑顔でそう言う。
「どうしたんだリーシャ?」
リーシャの隣で豪快にパンを食べているアルがリーシャにそう聞くと、
「食べてみなさい」
アルにスープの入った器を手渡す。
アルはリーシャから器を受け取り口を付ける。
「ん?ズズ…。あ~、なるほどな~!あっはっはっは!すごいなコレ!珍しい物入れてんな!」
アルが大笑いしながらそう言った。
その姿を見た先輩と姉さん、春乃が固まる。
俺を含めた他の人は、皆訳が分からず呆然とする。
「まさかこうしてくるなんて…」
「どういう事リーシャ?」
リーシャが呆れている様な態度をする。
俺がリーシャにそう聞くと、
「シュウ、このスープに猛毒が入ってるんだぜ!」
アルが代わりに答えてくれる。
「猛毒!!」
俺がアルの言葉に驚きそう言うと、アルは笑いながら、
「ブガライトっていう鉱石の粉末だな!たった数量でドラゴンすら毒殺できるとも言われている奴だ。よく手に入ったな」
アルはそう言いながら、スープをがぶ飲みする。
「アル!飲んじゃだめだよ!」
俺が声を出すと、
「オレとリーシャは毒なんか効かないぞ!シュウも知ってるだろ?」
アルはスープを飲み干してそう言ってくる。
リーシャは全能のスキルで毒を無効にできるし、アルは体が魔力の塊的な事を言ってたし毒は効かないんだろう。
だが、誰がリーシャにこんな事をしたんだろう?
俺がそう思っていると、
「そんなの決まってるじゃねえか。そこの3人だよ」
アルがそう言って先輩と姉さんと春乃に視線を向ける。
「待ってアル!先輩達がそんな事する訳ないじゃないか」
「いやいやシュウ。お前はどこまでこの3人の事を知ってる?」
アルにそう言われて、俺は考える。
だがやはり、リーシャに毒を盛る意味が分からないし、そんな事をする皆ではないと思う。
「シュウ良いか?この3人はリーシャがお前と結婚した…というかキスしたこと自体が許せないんだ」
「え?何で?」
アルの言葉に俺がそう返す。
「単純な話だ。そこの3人はシュウの事が好きなんだよ」
「でも、それで何でリーシャに毒を盛るの?」
「…そうしないとシュウの1番を名乗れないからよ」
俺とアルが話していると、リーシャが先輩達を見ながらそう言った。
「俺の1番?」
「えぇ、私がシュウの1番という事が決ってしまったのだから、1番を…妻を名乗っている私がいなくなれば、自分達がそこにいけると思ったのね」
「大方その通りだな。ただ、1人はそう思っているが残りの2人は、そう思ってないな。出来れば1番になりたいが、そうじゃなくても良いと思ってる」
リーシャとアルがそう言って先輩達を見る。
2人に見られている先輩は最初は悔しそうな顔をしていたが、アルの言葉にどんどん驚愕の表情をしていく。
姉さんと春乃は悔しそうな表情で固まっている。
俺はいまだに先輩達がそんな事をするとは思えなくて、頭がパニック状態だ。
すると、結城さんと目が合った。
彼女の顔は悪戯がばれた子供の様に苦笑いをしている。
「嘘ついても無駄だぞ。オレのスキルで嘘は見抜ける。正直に言うんだな」
アルが先輩達にそう言う。
だが、
「良いわよアル。これはシュウの妻の座を奪い合う女の争いよ。もっと簡単な話があるわ」
リーシャがそう言って立ち上がる。
リーシャの突然の動きに、皆がリーシャに注目する。
「力尽くでシュウの隣を奪ってみなさい」
リーシャはそう言って、先輩達を見る。
その瞬間、3人から殺気が溢れる!
「それは本気で殺しにいっても良いのかしら?」
先輩が立ち上がりながらそう言う。
顔は微笑んでいるが、彼女から出ている禍々しいオーラの様な物が見える…。
「…容赦しない」
姉さんが立ち上がりそう言う。
その表情は本気で、目が鋭くなっている。
「頑張ってやる!」
春乃がそう言う。
目がドロドロとしているのはもう気にしないでおこう…。
「ふふっ…楽しみね」
3人に黒い笑みをしながらそう言うリーシャ。
リーシャも黒い…。
初代勇者であり、単純な攻撃でも3人を遥かに上回るはずだ。
それなのに、戦って決着を決めようなんて…。
それから皆で城の訓練場に移動しようと思ったのだが、城の皆に迷惑になってしまうと結城さんが言って、皆で広い場所に移動する事になった。
場所はアルが指定して、リーシャが転移魔法を使う。
「あそこが1番良いと思うぞ」
「まぁそうね…わかったわ」
アルとリーシャが場所の話し合いをしている。
それも決まったようで、皆の所に来る。
「皆くっ付いてちょうだい」
リーシャが俺達にそう言った瞬間、皆が俺にくっ付いてくる。
「なんか釈然としないけど…」
そう言いながら、リーシャも俺に触れてくる。
そして、
「転移!」
リーシャが魔法を使い、周りの景色が変わる。
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