枕
突然現れたリーシャに、ルリィとアル、それにティア以外の皆が驚いて固まっている。
リーシャは悠然と立ち、皆が落ち着くのを待っているようだ。
すると、
「柊ちゃん、腕が…」
先輩がリーシャよりも俺の腕を見て、驚いている。
先輩の言葉に他の人達も意識が戻ってきたようだ。
俺の腕を見て、姉さんと春乃が泣きそうになっている。
というか春乃はすでに泣いている。
コレットさんも驚いているようだ。
エルミールさんは俺が右腕を失っているのを知っていたから、俺の腕よりリーシャに驚いている。
結城さんは俺の腕とリーシャを交互に見てオロオロしている。
その後、皆が落ち着くのを待ってから、リーシャの説明をすることにした。
「彼女が俺の奥さんになったリリアーナ・シャル・ティオレットです」
「リリアーナです。よろしくお願いします」
俺がそう言うと、リーシャが頭を下げる。
「リリアーナさんは、どうして柊ちゃんと結婚したんですか?」
先輩がリーシャに質問する。
「愛しているからです」
先輩の質問に堂々と答えるリーシャ。
それからはリーシャに対して皆がどんどん質問していく。
その全てに律儀に答えていくリーシャ。
だが、結城さんは引き攣った顔をしている。
彼女の視線の先には、黒い笑みを浮かべている先輩、姉さん、春乃の3人が部屋の隅で何やら集まっている。
その後、部屋の皆の質問攻めで時間はどんどん進んでいき、俺は先に寝てしまった…。
皆が話しているのを聞きながら、俺は意識を手放した。
翌日、俺は目を覚まし起き上がろうとするが、体が動かない…。
どういう事だ?
俺がそう思っていると、
「んん…すぅ~」
右脇から声が聞こえた。
見ると、リーシャが俺の傍に寄り添って寝ている。
「…ごひゅひんしゃまぁ」
左脇からも声が聞こえて、そちらを見るとルリィが笑いながら寝ている。
…キュル
何やら音が聞こえた。
何の音だろうと思い、頭を動かすと…。
俺は姉さんのお腹を枕にしていたようだ…。
いや俺は寝る時、しっかりと枕を使った記憶がある…、なのにどうして俺は姉さんのお腹の上に頭を乗せているんだ?
俺がパニックになっていると、
「チュゥ~」
右の二の腕が何かに吸われている!
慌てて見ると、
「おいしい…しゅうちゃん」
先輩が俺の二の腕にキスをして吸い付いている…。
というか、今気がついたが俺は上半身裸になっている…。
俺は脱いだ記憶がないのに…。
もしかして…。
俺はそう思い、頭を少し上げて自分の周りを見ると、春乃は先輩の反対側。
つまり左の二の腕に顔をくっつけて、頬を擦り付けている。
更に足にはティアとコレットさんが抱き付いている…。
一国の王女様なのに何してるんですか…。
俺はティアとコレットさんにそうツッコミを思っているが、問題はアルとエルミールさんだ…。
アルは俺にくっ付いていないのだが、人口密度の多さ故か室内が暑い所為で、アルは薄着になっている。
目の猛毒だ…。
だがもっと問題はエルミールさんだ…。
彼女は俺の股で寝てる…。
しかも俺は今、朝起きた状態で色々とマズい形状なのだ。
それを知ってか知らずか、エルミールさんは顔をくっ付けている…。
こんな状態でエルミールさんの目が覚めてしまったら、悲鳴を上げられてしまう…。
俺は必死に頭を冷静にするが、アレは言う事を聞かない…。
その時、あることを閃いた!
それは、姉さんの師匠だと言っていたエロイーズさんの姿を思い出す!
エロイーズさんには失礼だが、あの姿、挙動を思い出すと、アレは縮んでいく。
良かった…。
そう思いながら、姉さんのお腹に頭を沈める。
「…ンッ!」
姉さんが喘ぎ声の様な声を出す。
止めて欲しい…。
すると、エルミールさんがもぞもぞ動き出す。
変に刺激しないで欲しいんだが…。
すると、
「…凄い状態ですね」
結城さんが起きて俺にそう言ってくる。
「出来れば助けて欲しいんだけど…」
「幸せな顔して寝てる皆を起こす?嫌ですよ。まだ死にたくありません」
皆を起こすのに生死に関わるのか!?
俺がそう思っていると、
「それにしても、先輩が結婚してるなんて思いませんでしたよ」
結城さんが笑いながらそう言ってくる。
「そうだよね」
俺は結城さんの言葉に笑う。
でも、俺はリーシャと出会った事に恥ずかしいが運命を感じる。
そう思いながら、俺がリーシャの寝顔を見ていると、
「でも、先輩はこれから大変そうですね」
結城さんが苦笑しながらそう言ってくる。
「どうして?」
「怜華先輩も秋沙先輩も春乃も諦めてないって事ですよ。というか、暴走しそうで怖いです」
結城さんは俺にくっ付いている先輩と姉さん、春乃を見て顔が引き攣っている。
「それより、ティアリスさんとコレットさん、エルミールさんも手籠めにしたんですか?」
結城さんが、俺の事を睨んでくる。
「手籠めって…。ただ、仲良くしてくれているだけだよ」
「その状態を見て、単純な友情関係ってよく言えますね?」
結城さんの言葉に、俺は納得してしまい何も言い返せない。
「先輩、もしかしてこれ以上いませんよね?」
「誰が?」
「仲が良い女性」
結城さんの言葉に、俺は考える。
俺と仲が良い女性限定と言ったら、リザベルトさんとエルネットさんぐらいだろう。
「エルフの人が2人かな」
「…まだいるんですか…」
結城さんが俺の言葉を聞いて、呆れている。
「ちなみにどんな人達ですか?」
「どんなって…綺麗な人達だよ」
「まぁエルフですからね。他には?年齢とか」
「ん~、そう言えば2人の年齢は知らないな。でも母娘だよ」
俺がそう言った瞬間、
「母娘!?人妻に手を出したんですか先輩!それだけはダメですよ!」
結城さんが怒りながらそう言ってくる。
「手出してないから!俺はリーシャとしか経験ないから!」
俺は結城さんの言葉に大きな声で返すと、俺にくっ付いていた皆が動き出す。
おそらく、今の俺の声で目が覚めかけているのだろう。
そうしている内に、次々と皆が起き始める。
皆の顔は何かに満たされた様につやつやで、姉さんなんか恍惚の笑みまで浮かべていた。
とりあえず皆、自身の部屋に一度戻りに部屋を出て行った。
今は、俺とリーシャとアルとルリィが部屋にいる。
「そう言えばアル?どうしてここに?」
俺がアルに声を掛けると、
「アルの事だから、結婚祝いをしに来ただけじゃないんでしょう?」
リーシャが更にアルを見ながらそう言う。
アルは笑いながら、
「あぁ!勇者達の力を強くする方法を教えに来たんだ!他にも色々とな!」
そう言った。
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