再会
その後、騒ぎにより勇者達は全員起き、先輩もしっかりと目を覚ました。
今は、大広間でヴァレッド様が勇者達に魔波での事を話している。
どうやらこの後すぐにパーティーの様で、大広間には料理や飲み物なども置かれている。
そして俺は何故か、ティアと側に立っている。
「何で俺、ここに立ってるの?」
ティアに声を掛けると、
「シュウさんは、勇者としての立場ではなく、国を救った英雄扱いなのですよ」
そう説明してくれるティア。
俺が英雄?
そんな事ないのに…。
やがてヴァレッド様が話を終え、飲み物を手に取る。
それと同時に、エルミールさんがティアと俺、コレットさんに飲み物を渡してくれる。
ルリィはまた、料理の手伝いをしている。
だが、この後すぐに戻ってくると言っていたな…。
俺がそんな事を考えている間に、大広間にいる全員が飲み物を手に持っている。
そして、
「今回の魔波、凌ぐ事が出来た事に…かんぱ~い!」
ヴァレッド様そう言って、飲み物を上に掲げた瞬間、
「「「乾杯!」」」
大広間にいた人達が、飲み物が入ったグラスをぶつけ合う。
「シュウさん、…リリアーナ様も。今回もありがとうございます」
ティアが俺の名前を言った後に、リーシャの名前を小声で言って俺の持っていたグラスにぶつけてくる。
チンッ…、と音が鳴った後、ティアが僅かに飲み物を飲む。
俺もそれに合わせて少しだけ飲む。
「シュウさん、お疲れ様です」
俺とティアがそうしていると、エルミールさんとコレットさんが俺達の所に来て、グラスをぶつけ合う。
「シュウ、どんどん食べてね」
そう言いながら、俺に皿を渡してくるコレットさん。
「ありがとうございます。頂きます」
「コレット、そろそろ挨拶に行くわよ」
「は~い。じゃね!」
コレットさんはティアに連れられて、大臣達の方へ歩いて行ってしまった。
すると、
「柊ちゃん」
声が掛けられる。
声が聞こえた方を向くと、
「先輩」
涙目になっている先輩が立っている。
「本物よね?」
「本物ですよ」
「そうよね。同じ柊ちゃんの匂いだもの」
「ん??」
先輩が何やら変な事を言った気がする。
俺がそんな事を思っていると、
「ガハッ…」
腹に衝撃が伝わり、それと同時に俺に抱き付いてくる春乃。
「うぅぅぅ~…」
どうやら、春乃も心配してくれたみたいだ。
「悪かったな春乃」
俺はそう言いながら、春乃の頭を撫でる。
「…柊」
俺が春乃を撫でていると、先輩の隣に姉さんが立つ。
姉さんはいつも通り凛としている。
だが、俺の方へ歩いてくると、俺に抱き付いてくる。
力一杯、もう放さないという様に。
「ごめん。心配掛けて」
俺がそう言うと、先輩が俺達の側に来る。
その隣には、涙目だが笑顔の結城さんもいた。
「良かった…」
結城さんがそう言ってくれる。
何だろう…、俺ってここまで大事にされていたのか…。
俺がそう思った瞬間、
「ご主人様!只今戻りました!」
ルリィが俺の元に走りながらそう言ってくる。
「「「……」」」
「おかえりルリィ。お疲れ様」
「あ~…」
ルリィが俺に抱き付こうとして、既に抱き付いている春乃と姉さんの事を見る。
「どちら様ですか?」
ルリィがそう言った瞬間、
「貴女こそどちら様?私達の柊ちゃんの事、ご主人様って呼んでたようだけど」
先輩がルリィにそう声をかける。
見ると、先輩の目が濁っている…、怖い。
「ひぅっ…ご、ご主人様」
先輩に見られて、ルリィが短い悲鳴を上げて俺に助けを求めてくる。
「先輩、彼女はルリィです。俺のメイドというか、身の回りのお世話をしてくれてるんです」
俺がそう言うと、先輩が俺とルリィの交互に見て、
「柊ちゃん、お世話なら私がする」
低い声でそう言った。
「先輩は勇者なんですから、俺の世話なんかしてる暇ないですよ!」
俺が先輩にそう言うと、
「勇者引退するわ。これからは柊ちゃんの奥様ね」
先輩は何故か胸を張ってそう言った。
「いやいや勇者引退しちゃダメですよ!」
「柊ちゃんのお世話したいわ。というかするわ」
「決定ですか!?」
俺と先輩がそんな事を話していると、
「ご主人様のお世話は、ルリィの役目です!誰にも渡しませんよ!!」
ルリィが先輩に向かってそう言った。
その瞬間、先輩がルリィの事を睨みつける。
ルリィと先輩の視線が交差し、火花が散っている様に見える。
すると、俺に抱き付いていた春乃と姉さんが俺から離れる。
その時見えてしまった…。
2人の目がドロドロと濁り、薄く笑っているのを…。
俺は何かマズいと思い、2人の肩に手を置く。
「何…柊」
「お兄ちゃん手を放して…」
俺の事を見てくる2人の目がとても怖い…。
すると、
「先輩さん達も春乃も!今日はお祝い事なんだからそういう雰囲気にしないで~!」
結城さんが苦笑いしながら、言ってくる。
結城さんの言葉に、3人は互いに視線を送る。
まるで、アイコンタクをしているように。
「わかったわ。ごめんなさい柊ちゃん。ルリィさんも」
「…ごめん」
「むぅ…。仕方ないっか」
やがて3人はそう言って、ルリィに話しかけていく。
俺はその光景を見て、少しだけ安心をして、
「結城さん、ありがとう」
結城さんにお礼を言う。
すると、彼女は手をブンブン振りながら、
「いつもの事なんで大丈夫ですよ!先輩も、無事で良かったです!…色々な意味で」
俺にそう言ってくる。
最後だけ、少し聞こえなかったが。
それから6人で話をしていると、
「皆、無事で良かったよ!俺の戦いぶり見てくれましたか?」
獅子原が大きな声を出しながら、俺達の輪に入ってくる。
流石、獅子原…。
皆がいるから、俺に嫌な視線を送ってきただけで、俺に関して嫌味も言わない。
流石にハーレム?の中に入って行く勇気は無いので、俺はそっと移動しようとした時、
「今、大事な話をしていた所なのよ。邪魔しないでくれる獅子原君?」
先輩が獅子原にそう言う。
先輩の言葉に続いて、
「邪魔…消え失せろ」
「何で来るの?」
「はぁ~…空気読んで下さい…」
姉さん、春乃、結城さんの順番で笑顔の獅子原にそう言う。
「そんなのと話してるより、俺と話しましょうよ!」
コイツ…さらりと俺の事、そんなの扱いですか…。
まぁ、こっちの世界に来て、まともに人扱いされたから少し忘れていたが、俺って向こうでは嫌な扱いされてたからな。
今だって、春乃と姉さんが俺とまともに話しているのがおかしいんだ。
俺は少し前の事を思い出していたら、
『シュウ、今のシュウは皆に必要とされてるのよ。そんな後ろ向きの考えじゃダメよ』
リーシャが、励ましてくれる。
『ありがとう、リーシャ』
俺はリーシャにお礼を言って、先輩達に、
「まぁまぁ。お邪魔な俺は消えるので、後は恋人同士の会話を楽しんで下さい」
そう言った。
瞬間、
「「「「はぁ?」」」」
何言ってんだコイツ…みたいな表情をしてくる先輩、姉さん、春乃、結城さん。
獅子原は、ニヤニヤ笑っている。
「し、柊ちゃん?だ、誰が恋人同士なの?」
先輩が俺に聞いてくる。
「え?生徒会メンバーの皆、獅子原君と付き合ってるんですよね?」
俺がそう言った瞬間、
「「「「え?」」」」
4人が間抜けな声を出す。
「え?」
俺も釣られて、変な声を出してしまった。
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