落下
時は少し遡り、ザール達が戦っている頃、エルフの村では…。
俺は振り下ろされた魔物の足を避ける。
魔王を早く倒したいが、この魔物達を倒さないと邪魔になりそうだな。
俺はそう思いながら、緋焔と舞雷を握りしめる。
「どうだい?俺の子供達は強そうだろ?」
魔王が笑いながら俺にそう言ってくる。
「今思ったんだが、3体もいるのに名前がグレモなのか?1体の名前しか決めて無いじゃないか」
俺がそう言うと、魔族は何を言ってるんだこいつは?みたいな表情をしながら俺の事を見てくる。
「ちゃんと3体とも名前を呼んだじゃないか。グレモと」
もしかして…。
「グ・レ・モって名前なのか?」
俺は魔王に確かめる。
すると、魔王は、
「当り前じゃないか!他に名前がある訳がない!」
胸を張ってそう言った。
どうやらコイツは俺よりネーミングセンスが無い様だ。
俺がそんな事を思っている内に、魔物が俺に拳を振り下ろす!
「ハァッ!!」
俺は舞雷を迫ってくる拳に振るう!
「オォォォ!!」
舞雷に雷に当たり、声を出すグレモのどれか。
『リーシャ!身体剛化をお願い!』
俺が緋焔と舞雷を魔素を掻き消して、リーシャにそう言う。
『わかったわ。身体剛化』
俺がお願いすると、リーシャが魔法を使ってくれる。
「魔拳!」
俺は魔素を圧縮して拳を作る。
俺の後ろには追い付いてきたエルフの人達がいる。
下手に緋焔や舞雷を使うと、迷惑になってしまうな。
それに、魔震も使えない。
こいつらを簡単に倒すには、魔震が一番早いんだろうが…。
「武器を捨てたのか?」
俺の事を見ている魔王がそう言ってくる。
それと同時に魔物が殴りかかってくる!
俺は、右腕で迫ってくる拳を殴りつける!
瞬間、魔物の腕が吹き飛び、地面に轟音を立てながら落ちる。
片腕を失った魔物は、叫び声を上げながら血が出るのを押さえる。
俺はその隙を逃さず、魔物の両足を殴りつける!
俺に殴られたことにより、吹き飛んでいく魔物の両足。
「アァァァァ!!」
両足を失い、地面に倒れる魔物。
「魔翔大剣!」
俺は倒れている魔物に、容赦なく魔素を圧縮して作り出した大きい剣を魔物に突き刺した!
しばらく苦しみもがいていたが、やがて命尽きたようだ。
その様子を呆然と見ていた魔物2体は、俺に臆することなく向かってくる。
だが、その攻撃は荒っぽく、余裕が無いように感じる。
俺に殺された1体を見て、マズい奴だと思ったのかもしれない。
俺は残りの2体を1体ずつ殺していく。
俺に殴られた体は吹き飛び、その様子を見ていた魔王は顔を引き攣らせていく。
俺の戦いを後ろから見ていたエルフの人達は、俺が魔物を倒していくたびに歓声を上げる。
そして、魔波の魔物も、エルフの人達の精霊術や魔法で、次々に数を減らしていく。
見ると、リザベルトさんとエルネットさんは、後で魔力切れになってしまうんじゃないかという程、精霊術で魔物を蹴散らしていく。
どこか2人共、スッキリとした表情をしている。
あの2人なら、もう大丈夫だろう。
そう思いながら、俺は魔王の方を向く。
魔王は自分の操っていた魔物を倒されて、少し困惑の表情をしている。
どうやら、魔物達が殺されたのは予想外だったようだ。
「後は、お前だけだ」
俺が魔王の事を指さしながらそう言うと、引き攣った顔をしながら、
「俺には魔物を操るスキルしかないんでね。直接戦闘は出来ないんだよ」
そう言った。
魔王がそう言うと、右腕を上げる。
何だ?
俺は魔王の動きに注意して、魔視を発動する。
すると、彼の隣が青白く光る。
その瞬間、そこに人が現れた!
「どうしたんですか?」
「イスティム、何でそんなにボロボロなんだ?」
「勇者の1人にやられました。それで?あなたはどうなんですか?」
「俺の方もダメだ。あいつが強い。もっと大群…軍隊でも連れてこないとダメだわ」
魔王が俺の事を指差すとそう言った。
いきなり現れた男は、俺の事を見る。
「ふむ…、普通の人間にしか見えないですが」
「俺もそう思ったんだけどよ。イスティム戦ってみるか?」
「負傷している者によくそんな事が言えますね…。わかりました、風の力は諦めましょう。ガレス様は既に風の力は手に入れていますし」
魔王とイスティムと呼ばれた男が俺の事を見てくる。
「今回は、これで引きましょう」
「だが、次会った時は、お前を殺してやる!」
そして、俺にそう言ってくる。
「俺はそう簡単に負けるつもりはない!」
俺がそう言うと、魔王と隣のイスティムが笑う。
そして、イスティムが魔王に触れる。
「今度会うまで死んでるんじゃないぞ!」
「失礼します」
そして、2人が青白く光ると一瞬で消える。
どうやら、転移魔法を使ったようだ。
俺は、魔王がいなくなった事に安堵するが、次にサンレアン王国に行かなければ!と思い、後ろを見る。
既に魔波での魔物を全て殺して終わったエルフの人達が、地面に座っていたりしている。
俺は、その中からリザベルトさんとエルネットさんを見つけ、傍による。
「大丈夫ですか?」
俺が地面に座っている2人に声をかけるが、2人は苦笑いしながら、
「…やりすぎた」
「あはは、動くのが辛いわ~!シュウ君おんぶして~」
リザベルトさんはそう言って両手を広げる。
だが、
「すみませんリザベルトさん。俺今から行かないといけない所が出来たんです」
俺はリザベルトさんにそう言う。
すると、俺の顔を見て、ニコッと笑うリザベルトさん。
「頑張っていってらっしゃい」
そして、俺にそう言ってくる。
「ありがとうございます」
俺がそう言うと、
「でも、終わったらすぐに帰ってきてね。待ってるわ」
リザベルトさんが笑いながら、俺にそう言ってくる。
「…必ず」
俺はそう言って、エルネットさんの方を向く。
「後はお願いします」
俺がそう言うと、エルネットさんは、
「頑張って」
そう言ってくれた。
俺は、立ち上がる。
『リーシャ、転移魔法で移動できる?』
『出来るけど、下手にサンレアン王国近くに転移するわけにはいかないわ』
『魔物の群れの真ん中に転移しちゃう可能性もあるから?』
『そうよ』
リーシャに言われて考える。
そして思いついた!
『リーシャ!上空に転移して!』
『上空に?』
俺の言葉にリーシャが聞き返してくる。
『それなら魔物の群れとか関係ないと思って』
『そうね。行くわよシュウ?』
『いつでも良いよ!』
俺がそう言った瞬間、
『転移!』
リーシャが魔法を使い、景色が変わる。
そして、突然の浮遊感。
俺はそのまま下を見る。
そして、ザールさんの大剣を持っている男が歩いているのが見えた。
俺は、そのまま落下していく!
そうしている内に、男が先輩達が倒れている所へ。
『リーシャ、火魔法を』
『炎珠!』
リーシャが魔法を使い、俺が緋焔に形作る。
高速で落下している俺は、ある事に気づく。
『リーシャ?このまま地面と激突して死んだりしないかな?』
『身体剛化で頑丈になってるから大丈夫よ』
リーシャがそう言うなら、大丈夫だろう。
俺はそう思いながら、地面に落下する!
激しい音に砂ぼこり。
だが、そんな事を気にしていられない。
男が先輩に手を伸ばしている。
「先輩から…離れろ」
俺は男の事を睨みつけながら、そう言った。
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