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初代勇者を腕に  作者: 雪羅
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春乃VS魔王イスティム

イスティムは春乃の様子を窺う。

自分の転移魔法に追いつける春乃が、異常に見える。

もしかしたらあの勇者も転移魔法が使えるのかもしれない。

イスティムがそう思っていると、


「…考え事ですか?」


後ろから声が聞こえる。

見ると、気味の悪い笑顔で自身を見ている春乃が立っていた。

イスティムは慌てて転移魔法で距離を取る。


「はぁ…もっと速くならないとお兄ちゃんの事見失っちゃう…」


春乃はそう呟いて、魔法を使用する。

そして、駆ける!

その速さは、転移魔法と並ぶほどの速さだ。

またもや距離を縮められたイスティムは春乃に向かい打つ!

激しい金属のぶつかり合う音が響き渡る。

そして、春乃の剣がイスティムに掠る。

この私が、傷を付けられるとは…。

イスティムはそう思いながら、目の前に立っている春乃に対して、全力で戦う事を決める。

少しでも気を抜けば、こちらが殺されてしまうと思ったからだ。


「転移」


イスティムは転移魔法を使い、空中に転移する。

だが、春乃はそれに追いつき、連撃を繰り出す。

イスティムも春乃の攻撃を防ぎつつも、剣を振るう。

春乃は、ここまで自分と速く戦う者に驚愕する。

今までダンジョン攻略の際に、ダンジョン内で現れる魔物は全員、春乃の速さに追いつけず殺される。

だが、イスティムはそんな春乃に追い付いている。

こいつを倒せば、私は更に速くなれる!

春乃はそう思って、更に加速していく!

だが、イスティムも転移魔法を応用して、春乃の速さに対抗する。

更にイスティムは転移魔法で春乃の攻撃が当たりそうになると、空中に転移してしまう。

春乃は一旦魔法を止め、空中に転移し続け留まっているイスティムを見る。


「もっと速く…もっと速く…」


イスティムの事を見ながら呟き続ける春乃。

そして、魔法を再度使用する春乃。

春乃が魔法を使用したのがわかったイスティムは警戒する。

その瞬間、春乃が消える。

すると、右肩に痛みが走る!

見ると、浅くだが斬られている。


「どういう事だ」


そう言った瞬間、更に左頬が斬られる。

イスティムは転移魔法で移動する。

だが、それでも背中が斬られる!


「グ…」


イスティムは、痛みに声を出す。

どこを見ても春乃が見えないイスティムは、どうする事も出来ず、ただ辺りを見渡すことしかできない。

すると、地面の草が踏まれた様に見えた。


「ここか!」


イスティムが剣を振るうと、激しい衝突!

春乃が驚きながら、イスティムから一度距離を取る。


「何でわかったんですか?」

「草が踏まれたのが見えた。女、君はどうやって私に追い付いている?」


春乃の質問に、イスティムはそう答えて、逆に春乃に質問する。


「私は、ただ走りながら斬り裂いているだけです」


イスティムの質問に、そう答える春乃。

春乃がやっていることは簡単だ。

加速魔法を使って、ただ走っているだけなのだ。

走りながら、剣を振るっていると、いつの間にか相手を斬り裂いている。

イスティムは、走っている春乃の近くに転移をして斬られただけなのだ。


「そうなると、貴女の足が届かない所から攻撃しましょうか」


イスティムはそう言って、転移魔法で移動する。

そこは、遥か高い上空。

ここから一方的に攻撃をすればあの女勇者でも無事では済まないし、あわよくば他の勇者も倒してしまおう。

イスティムはそう思いながら、


「命に飢えた死神よ、今ここに現れ、破壊せよ」


闇魔法の高位魔法を詠唱し始める。

だが、


「…逃げないで下さい」


声が聞こえた。

イスティムが後ろを恐る恐る見ると、そこには春乃が…。

後ろで、既に短剣を振り被っている春乃が見えた。

そして、


「グゥハァァッ!…」


背中に春乃が持っていた短剣が深々と刺さる!

更に、春乃は刺した短剣をグリグリと傷を広げる様に抉っていく!

イスティムは春乃の攻撃から逃げようとするが、背中の激痛で転移魔法に集中できない。

そのまま春乃はイスティムの腕を手に取り、一気に加速して地面にイスティムを叩き付ける!

春乃はイスティムの様子を窺う。


「ハァ…ぐ…まさかここまでとは」


イスティムはそう言いながら起き上がり、春乃を見る。

春乃も度重なる魔法の連続使用で、息切れはしているものの、怪我という怪我はしていない。

対して、イスティムの体は浅く斬られた所もあれば、背中の傷からどんどん血が出てくる。

イスティムは今の状態では、この勇者に勝てないと悟る。

非力だと思っていた人間にここまでボロボロにされたイスティムは、次合う時は仕留めて見せると思いながら、転移魔法で撤退した。

実は春乃も、逃げたイスティムを追いかける力は残っていなかった。

魔力も底を尽きそうで、体の倦怠感に蝕まれて、今すぐにでもこのまま地面に倒れて寝てしまいたいと思っていた。

イスティムが完全にいなくなった事で、少しだけ安心する。

もしイスティムが、あのまま戦闘を続けようとしたら、一方的に殺されていただろうと春乃は思う。


「もっと…強くならないと」


そう思いながら、春乃は地面に座り込んだ。


「怜姉ちゃんとお姉ちゃん、真海はどうだったかな?」


そう呟いて、春乃は辺りを見渡す。


「もっと強くなって、絶対にお兄ちゃんを見つけて、もう離れない様に一生追いかけてやるんだから」


春乃はそう呟いて、地面に倒れた。


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