勇者の戦い
ザール達が大魔王ガレスと戦い始めた頃、勇者達は魔波が終わったと思い気を抜いていた。
だが、そこに現れたのはザールに最初に話しかけた魔王イスティムだ。
彼の他に、4人の魔族が勇者達の前に揃っている。
「貴方達はどちら様でしょう?見たところ友好的には見えないですが」
怜華が魔族にそう言うと、1人の魔族が笑いながら、
「まぁ、友好的ではないな~。これからお前たち勇者を誘拐しに来た俺達なんてな!」
そう言った。
すると、彼の隣にいたイスティムが呆れた態度で、
「止めないかレラジズ」
隣で笑っている魔族にそう言う。
そして、一歩前に出てきて、
「初めまして勇者の者達!我らは大魔王ガレス様に従い貴方達を捕らえに来た魔王イスティムです。以後お見知りおきを」
イスティムがそう言うと、彼の隣にいる魔族達が、
「同じく魔王レラジズ!覚えなくても良いけどな」
「魔王エレシオン」
「魔女王ヴィネよ」
「魔王ハルファスだ。よろしく」
それぞれ自己紹介をする。
自分達の前に、魔王が来たことに驚き恐怖している勇者達。
その様子を見て、魔王全員が簡単な仕事だと思った。
だが、彼らには可笑しな者が見える。
自分達魔王を睨みつけて、今にも襲いかかって来そうな女勇者3人とそれを苦笑いで見ている女。
更に、弱そうなのに自信満々な男。
少し戸惑った瞬間!
「拘束!」
怜華が魔法を使って魔王を捕まえようとする!
それぞれ魔王達は拘束魔法から逃げるために散らばるが、
「私から逃げれると思ってるんですか?」
転移魔法で上空に逃げたイスティムの背後に、既に魂の剣を出現させた春乃が斬りかかっていた!
「ッ!!」
慌ててイスティムは転移魔法で地上に下り立つ。
イスティムに続いて、春乃が地面に着地する。
別の場所では、秋沙がスキルを発動して、恍惚な表情をしながら魔王ハルファスに斬りかかっていた。
肉体強化の魔法を使用しているハルファスと互角に斬り合う秋沙。
「なかなか重い一撃だ」
「この体を走る苦痛…柊の為に体を蝕む…。アァ…」
ハルファスは秋沙がどうしてこんな表情をしているのか理解できない。
何度もハルファスは連撃を繰り出し、秋沙はその攻撃を剣で受け止める。
ハルファスの剣はザールの大剣よりも大きく、それを筋力で振るっている。
そんな一撃が決して軽いわけではない。
それ以上に、秋沙の身体能力が異常なのだ。
そしてそんな2人を見ながら、自分も頑張らないとと思っている怜華。
彼女の前には魔女王ヴィネ。
「魔王を前に随分余裕そうね」
怜華の様子を見てそう言うヴィネ。
「貴女を拘束すれば良いだけですから」
怜華はそう言って剣を出現させる。
ヴィネは魔法を使う準備をする。
そして、
「拘束!」
「根縛!(こんばく)」
お互いが拘束系魔法を使用する。
怜華の拘束魔法は、鎖を呼び出し対象を拘束する。
対するヴィネの魔法は、前にリーシャが少し使った事がある自然魔法。
それを応用して、草木の根で相手を縛る魔法だ。
怜華の鎖とヴィネの根が絡み合う。
それと同時に2人は、駆ける!
怜華が剣を構え、ヴィネも剣を出して構えながら走る。
そして、怜華の剣とヴィネの剣が交わる。
「お互いに同じような戦いをするのね」
怜華がそう言うと、ヴィネも笑いながら、
「そうね」
と返事をする。
すぐさま2人は、互いに距離を取る。
先に戦い始めた3人の戦いを見ている真海は、いつでも支援が出来る様に待機している。
だが、
「先に始めやがって~。俺にはこんなのしか残ってないのかよ」
真海の元に魔王レラジズが歩いてくる。
「こんなので悪いですね~!」
ベ~と舌を出す真海。
「ガキみたいなやつだな」
レラジズの言葉に、真海がキレた。
「え~と?魔王レラジズさん?」
「あ?なんだよ」
「一回苦しんで下さい!外傷復活!」
真海が魔法を使用した瞬間、レラジズの体に回復魔法のような光が降り注ぐ。
「回復魔法??敵に何…グフッ…」
レラジズは真海のした事を笑おうとしたが、そんな事をしている暇はない。
何故なら、真海が行った魔法は古傷をもう一度開くという拷問に近い魔法だったからだ。
どんなに古い古傷だろうが、完全に完治した傷だろうが、全てを復活させてしまう魔法。
それを知らないレラジズはあっさりと、真海の魔法の効果で古傷が全開に開いた。
「グハァァ!!」
激しい痛みにレラジズが叫び声を上げる。
やがて、真海が苦しんでいるレラジズの傷を回復魔法で塞ぐ。
真海が敵であるレラジズの傷を塞いだのには、理由がある。
それは、真海の攻撃手段は先程の魔法、外傷復活が主だ。
真海は回復魔法や支援魔法を得意とする魔法しか使えない。
攻撃手段が無い中で遂に相手にダメージを与える魔法が使えるようになった。
だが、それは相手が怪我をしていない状態の時限定にしか使えない。
故に、真海は敵に対しても回復魔法をして、それから攻撃をする。
ある意味、彼女の魔法は拷問に近い。
「ハァ…何だったんだ今のは」
レラジズが、真海の回復魔法で回復したと同時に、声を出す。
また別の所では、獅子原とその他大勢の勇者が魔王レシオンと対峙している。
「さぁ来い魔王!俺の力で八つ裂きにしてやる!」
「……」
「獅子原く~ん!頑張れ~!!」
獅子原が魔王レシオンにそう啖呵を切ると、獅子原の後ろにいる女子達が応援する。
魔王レシオンは、その光景に溜息しか出ない。
「どうした!俺に臆して動けないのか!」
魔王が動かない事に獅子原がそう言う。
すると、後ろにいる他の勇者が彼を応援する。
「そっちが来ないなら俺から行くぞ!」
獅子原はそう言って、魔王レシオンに向かって走る!
魔王レシオンはその光景を見て、少し強いだけの人間だな。
そう思いながら、自身の魂の剣を出現させる。
彼の剣は大きく曲がっている曲刀だ。
「くらえ!呪剣!」
獅子原は、闇魔法を剣に付与してレシオンに斬りかかる!
だが、大した威力もなく簡単に防げる。
「なかなかやるな!だが、これならどうだ!」
獅子原と他の勇者達が勝手に盛り上がる。
獅子原は、剣に風魔法と闇魔法を付与する。
これは…ハズレだ。
魔王レシオンはそう思い、曲刀を構える。
そして、静かに振るう。
その瞬間!
「グハッ!」
獅子原の体に浅いが切り傷を作る。
これが…本当に勇者なのか?
自身の攻撃をいとも簡単に食らった獅子原と、この光景に悲鳴を上げている後ろの勇者達を見ながら、魔王レシオンはそう思った。
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