表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
初代勇者を腕に  作者: 雪羅
128/430

未練

リザベルトさんが俺が起きているか確認するためか、俺の顔を覗き込んでくる。

すると、リザベルトさんからお酒の匂いがする。


「シュウ君~?起きてるの~?」


完全に酔っぱらってる…。


「リザベルトさん?どうかしたんですか」


俺はリザベルトさんにそう聞く。


「シュウ君起きてる~!」


俺が起きてると気づくと、俺の頬を優しく撫でてくるリザベルトさん。

その後、どうにかして起き上がる。

見ると、酒瓶なのか、リザベルトさんの隣には瓶が置いてある。

俺は家の中を探し、水を見つけると彼女に渡す。


「ありがとう」


リザベルトさんは俺にお礼を言って一気に水を飲み干す。


「お酒の飲み過ぎは体に毒ですよ」


俺がそう言うと、


「自分でもダメだと思ってるのよ。でもお酒を飲んでから寝ないと、上手く寝られないの」


リザベルトさんは顔を伏せながら俺にそう言ってくる。


「…そうですか」


俺は彼女が何故眠れないのか、多分だがわかる。

俺の反応に、


「未練がましい女でしょ?」


リザベルトさんは俺の考えている事を察したのか、苦笑しながら俺に言ってくる。

だが、俺には未練がましいとは思えない…。

俺だってリーシャが死んでしまったら…、彼女の様に眠れなくなってしまうだろう。

もしかしたら、生きることを諦めるかもしれない程だ。

だが、リザベルトさんは村の皆の為に、諦める訳にはいかないのだろう。


「俺は、そんな風には思えません」


リザベルトさんが普段は明るく振る舞うのは、長として弱っている所を見せないようにしているのと、寂しさを紛らわせるためだと思う…。


「夢にね…夫が現れるの。家族との、村の皆との楽しい日々の思い出、ディデリクと一緒に過ごした日々を寝ている間、見てしまうの。ディデリクは死んでなかった。現実の方が夢だったんだって思ってしまうわ。そして、起きてしまえば辛くなってしまう。…最初は眠る事すら怖かったわ。でも眠らないと村の皆に心配をかけてしまう。だから、お酒を飲んで深く、あの幸せだった日々を見ない様に眠るようになったわ」


そう言いながら、リザベルトさんは瓶を撫でている。


「辛いですよね…」

「…そうね…。もうあの人に会えないと思ってしまうと、後悔しかないわ…。あの時こうしとけば良かった、あの時言えば良かったなんて思ってしまうわ…。もう遅いけどね」


俺はリザベルトさんを見る。

彼女は苦笑しているが、その表情が無理をしているものだとわかる。

彼女の瞳には、涙が今にも溢れそうな程溜まっている。


「…溜め過ぎない方が良いですよ」


俺がそう言うと、リザベルトさんは首を振る。


「私はこの村の長よ。弱い所を見せる訳にはいかないわ」


俺はリザベルトさんの様子を見て、このままじゃ彼女は壊れてしまう…。

そう思う。


『リーシャ、起きてる?』

『…すぅ…』


…リーシャは起きているだろう。

だが、俺の考えている事に黙っていてくれるようだ。

本当、リーシャには感謝してもしきれない。

俺はリーシャに感謝をして、


「リザベルトさん?」

「…なにかしキャッ!」


俺はリザベルトさんを抱きしめる。

少し苦しいかもしれないけど、強く抱きしめる。


「ど、どうしたのシュウ君!?」


リザベルトさんが俺にそう聞いてくる。


「俺はエルフでもないですし、村の住民でもないです。俺には、弱い所を見せても良いんじゃないですか?」


俺がそう言うと、俺の腕の中で少し動いていたリザベルトさんが動かなくなる。


「…良いのかしら?」

「…はい」


俺がそう返事をすると、徐々にリザベルトの泣き声が聞こえてくる。

それからしばらく、俺はリザベルトさんを抱きしめていた。

外に聞こえない様に、しっかりと。

その後、落ち着いたリザベルトさんを離す。


「「……」」


少し…気まずい。

リザベルトさんは、俺に背を向けている。

俺はどうしよう…と思いながら、視線を泳がせる。

すると、俺はこちらを見ている人影に気がついた。

人影はゆっくりと家の中に入って来る。

どうやらお母さんが心配だったようだ。

俺がそう思った瞬間、


「…母上」


リザベルトさんに声を掛けるエルネットさん。

すると、声を掛けられたリザベルトさんがビクッとする。


「…エルネット?」


リザベルトさんがそう言った瞬間、エルネットさんがリザベルトさんに抱き付く。


「母上、母上だけに問題を押し付けてしまい申し訳ありません」


リザベルトさんに抱き付きながら、エルネットさんは涙声でそう言う。


「良いのよ。私が皆を導かないと」

「父上の事も…、母上は普通にしていて、母上がこんなにも思い詰めているとは思っていませんでした」

「良いのエルネット。貴女だって辛いはずなのに…。弱い母でごめんなさい」


リザベルトさんが、エルネットさんの頭を撫でながらそう言う。

それからは親子の本音での話が続いた。

互いに無理をしないで、辛かったら辛いと…。

嬉しいなら嬉しいと…。

もっと話そうという事になった。

最初は涙声だった2人だが、話が終わる頃には互いに笑い合って良い感じだ。

これで…リザベルトさんとエルネットさんは大丈夫だろう。

俺がそう思っていると、2人が俺の方を向いてくる。

どうしたんだ?

そう思っていると、2人が頭を下げる。


「どうしたんですか!頭を上げて下さい!」


俺は、突然頭を下げた2人に慌ててそう言う。

すると、


「ありがとうシュウ君」

「…感謝」


俺にそう言ってくるリザベルトさんとエルネットさん。


「俺は何にもしてませんよ」


俺がそう言うと、2人は顔を見合わせて俺から少し離れる。


「これは…、どうしましょうか?」

「…拘束?」

「それはダメよ」


何やらコソコソ話して俺の方をチラッと見る2人。

その後、何やら話し合っている2人を見ながら俺は欠伸した事で、2人は家に戻って行った。

俺はまた横になる。


『…リーシャ』

『…何?』

『さっきはありがとう』

『良いわよ。ただ、私も少し覚悟しないといけないわね』

『どういう事?』

『シュウには教えられないわよ』

『そんな~…』


リーシャと話しながら、俺はいつの間にか眠りに着いた。

読んで下さってありがとうございます!

評価して下さった方ありがとうございます!

ブックマークして下さった方ありがとうございます!

評価、感想、ブックマークして下さると嬉しいです!

誤字脱字などありましたら、連絡して下さい。

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ