あ~ん
エルフの皆がそれぞれの仕事に戻った後、俺はルリィに鬼豚を狩って来た事を伝えると、ルリィは大き目なナイフを手に外に出る。
鬼豚は既に死んでいるから、解体しても大丈夫だろう。
俺もルリィに付いて行くと、
「ほぁ~」
ルリィは鬼豚の姿を見て、口を開けている。
「どうしたのルリィ?」
俺がそう言うと、ルリィは鬼豚を見ながら、
「いえ、お肉の姿なら見た事あるんですが、本来の姿はこんなにも大きかったんですね」
そう言った。
だが、すぐにルリィは鬼豚の体にナイフを突き刺し、解体していく。
それからは、どんどん肉塊がルリィが貸してもらっている家に運ばれていく。
俺も手伝ったが、なかなかの量だ。
「これなら、結構持つんじゃないですか?」
俺が、肉塊も一緒に運んでいるエルネットさんにそう聞くが、
「まだ。もしもの時の事を考えると、足りない」
彼女は俺の質問にそう返す。
その後俺はルリィの手伝いで、ルリィが作った料理を不腐草で包んだりしていた。
ルリィの作る料理はいい匂いがするから、ついつまみ食いをしてしまったエルフの人達の気持ちも分からなくは無い。
その後、黙々と魔波の準備をしていき、夜になった。
今はリザベルトさんとエルネットさんの家で夕食を食べている。
「それにしても、ルリィちゃんには助かったわ。あのままだったら、腐った物を食べる事になってたかもしれないわね」
「えへへ、ありがとうございます」
リザベルトさんがルリィの事を褒めると、ルリィは照れ笑いをしながらお礼を言う。
「…」
その様子をもぐもぐ口を動かしているエルネットさんが黙って見ている。
『シュウ』
俺が食事の光景を見ていると、リーシャが声を掛けてくる。
『どうしたのリーシャ?』
『今日の魔法剣の事よ』
『どうかした?』
『今まで火、水、風、雷の魔法剣を試してみたけど、他の魔法は試してないじゃない?』
『そうだね』
『明日狩りに行くんだから、その時に試しておくと魔波や今後に役立つと思うのよ』
『そうだね。属性によって特性がありそうだし、調べておいた方が良いと俺も思うよ』
俺はリーシャにそう言いながら、今までの魔法剣の事を思い出す。
火魔法の時は、切れ味は普通だと思うが、燃やす力が加わっているからか物が斬れやすい印象がある。
風魔法の剣は、切れ味は抜群で、斬撃も風の刃でよく斬れる。
水と雷魔法は、まだしっかりと調べた事がない。
明日は魔法剣の訓練と違う町に行って買い物でもするか。
俺が明日の予定の事を考えていると、
「…シュウ」
エルネットさんが俺に話しかけてくる。
「どうしたんですか?」
「これ…美味しい」
エルネットさんはそう言って、俺の口に料理を運ぼうとする。
すると、
「あ~!エルネット何してるの~!」
リザベルトさんがやけに大きな声でそう言ってくる。
その言葉に、ルリィも気が付き、
「ご主人様!あ~んして下さい!」
ルリィも俺の口に料理を近づけてくる。
「…邪魔」
「邪魔ではないです!」
俺の前で、ルリィとエルネットさんが料理をぶつけ合う。
「お行儀が悪いわよ」
そんな2人を見て、そう言うリザベルトさん。
だが、注意されている2人はリザベルトさんの声が聞こえないのか、戦いに熱中だ。
どんどん、俺から離れていく料理を見て、少し安心していた瞬間、
「シュウ君、そこの料理を取ってくれないかしら?」
リザベルトさんが俺の近くにある魚料理を指差す。
「わかりました」
俺はそう言って、皿を持ち上げようとして、手に衝撃が…。
なんだ?
そう思いながらも皿に手を近づけると、またもや衝撃が。
見ると、リザベルトさんの後ろにコソコソ隠れている精霊が見えた。
「…」
「どうしたのシュウ君?」
俺がリザベルトさんを見ると、目を逸らしながら俺にそう言ってくる。
試しにフォークで魚料理を取ろうとすると、手に衝撃が来ない…。
俺は仕方なく、フォークで料理を取り、リザベルトさんに近づける。
すると、
「あらシュウ君!食べさせてくれるの?嬉しいわ。あ~」
リザベルトさんは大袈裟にそう言って、口を開く。
だが、
「母上?何をしているの?」
「ご主人様!ルリィも食べさせてください!」
争っていた2人が、俺とリザベルトさんの行動に気が付き、エルネットさんはリザベルトさんの口に持っていた料理をねじ込んでいる。
ルリィは、持っていた料理をフォークごと俺に渡してきて、口を開けて待っている。
どうしてこうなったんだ…。
俺がそう思っていると、エルネットさんがルリィの口に手を当てる。
「…何してる?狐」
「邪魔しないで下さい」
ルリィはそう言うと、エルネットさんの手に噛み付こうとする。
だが、エルネットさんは手をヒョイッと動かしてルリィの噛み付きを避ける。
『私もシュウに、あ~んして欲しいわ』
リーシャが俺にそう言ってくる。
『今度しようか』
俺がそう言うと、
『是非お願いするわ』
リーシャが嬉しそうにそう言う。
その後も、ルリィとエルネットさんは言い争いをしていたが、夕食は終わり皆で片付けをして、リザベルトさんの提案で俺とルリィはリザベルトさんとエルネットさんの家に泊まる事になった。
だが、ルリィが俺と一緒に寝るのを知った2人は、不謹慎だと言い、俺はルリィが料理していた家に行くことになってしまった…。
俺はトボトボとエルフの村を歩き、ルリィが仕事をしていた家の中に入る。
俺は、家の中で横になれる場所を探す。
すると、リーシャが人の姿に戻る。
「意外に材料があるわね」
リーシャが家の中を見て、そう呟く。
「これだけでも足りないらしいけどね」
「魔波の規模がわからないから、どれだけ備えても足りるとは言えないわ。食糧が無くなって魔波に飲まれた村や国があったのよ」
「どうにかして、魔波の規模が分かれば良いんだけどね」
「アルがいれば、ある程度絞れると思うのだけれど…」
俺の言葉に、リーシャがそう答える。
それからリーシャは俺の腕に戻ってもらった。
食材の所為で、寝るスペースが狭いのだ…。
俺は食材の間に横になり、眠りについた。
のだが、なぜだか体が重い…。
寝てからどれくらい経ったんだ?
俺はそんな事を思いながら目を開き、ゆっくりと自分の体を見る。
そこには、
「シュウく~ん?起きてる~?」
リザベルトさんが顔を赤らめながら俺に覆い被さっていた。
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