再来
ルリィに事情を聞くと、獣人とエルフは昔は同じ森に住んでいたらしい。
だが、森での狩りを行う獣人と森での殺しをしないエルフでよく対立していたようだ。
そして、獣人は元々住んでいた森をエルフに明け渡し、獣人は森を移動してバラバラになったらしい。
昔のことだが、今でも親から子へ子から更に子へと、獣人達は言い伝えていて、ルリィもそれを親から聞いたと言った。
そのせいで、獣人のほとんどはエルフに良い印象を持っていないようだ。
「そう言う事か…。じゃあルリィはここで待ってる?」
俺がそう言うと、
「嫌です!一緒に行きます!離れたくないです!」
ルリィは俺にくっ付いてくる。
周りの人達が、俺とルリィを見てくる。
「ごめんね、置いて行くつもりで言った訳じゃないんだ。ルリィが行きたくないと思って」
俺がそう言うと、ルリィは俺から離れて、
「確かにエルフには会いたくはないです。…でもご主人様と離れるのはもっと嫌です」
そう言った。
俺はルリィの頭をなでなでしながら、
「ありがとう」
ルリィにお礼を言う。
それから宿屋に戻り、部屋に戻って忘れ物がないか確認してから宿屋を出る。
さっさと行くために、俺とルリィは早足でヴェルーズを出発する。
少し離れて、俺とルリィはくっ付いてリーシャの魔法でエルフの森の近くに転移する。
「あそこに見えるのが…エルフの森ですか?」
ルリィが先に見えるエルフの森を指差して俺に聞いてくる。
「そうだよ」
「ご主人様はあそこに行った事があるんですか?」
「あるよ」
俺がそう言うと、ルリィが、
「どうでしたか?エルフの人達は?」
そう聞いてくる。
「ん~、話せば良い人達だと思うよ」
俺がそう言うと、ルリィは不安そうな顔になる。
「大丈夫だよ。行こう」
俺はルリィと手を繋いで、森へ歩いて行く。
すると、森の前にエルフの人が2人立っていた。
エルフの人達が俺に気がついて走り寄ってくる。
「シュウ様!お久しぶりです!」
「シュウ様!どうしたんですか!」
エルフの人達が俺の元に来て、笑顔で話しかけてくる。
「フェリアンさんに頼まれて来ました。魔波の準備とかしてました?」
俺がそう言うと、2人はお互いを見て、
「正直、長がいた時は長に任せっきりでしたから、私達は今出来る事しかしてません」
「それでお2人は、森の外で見張りを?」
「はい。後は、食糧の確保や魔波に使うであろう物などを作ってます」
指で数を数えながらそう言う。
「もしかして…、魔波全て前長が片づけてましたか?」
俺がそう言うと、2人は目を逸らす。
これじゃあ、フェリアンさんが不安になるのもわかる。
「とりあえず、村に行っても良いですか?」
俺がそう言うと、2人は、俺の後ろに隠れているルリィを見る。
「シュウ様、そちらの獣人は?」
「彼女は俺の仲間です。入っても良いですよね?」
俺がそう言うと、2人は少し困惑している。
だが、
「森での狩りはさせないで下さい」
1人がそう言って、道を開けてくれる。
これは…、エルフも獣人に対して良い印象を持っていないようだ。
「ありがとう」
俺はそう言って、森に入る。
前に来た時と同じ、とても静かな森だ…。
俺はそう思いながら森を歩いて行くと村が見えてきた。
見る限り、皆大変そうだ。
だが、
「シュウ様だ!」
「変態様だ!」
子供達が俺に気づいて声を上げる。
すると、大人の皆も俺に気づいて、走り寄ってくる。
「おぉ!シュウ様!ようこそ!…ですが、今は忙しい故、おもてなしが出来ず申し訳ありません」
「いえ、皆さん戻って下さい。俺はリザベルトさんに話がありますから」
俺がそう言うと、皆各々の仕事に戻って行く。
俺は村の中を歩いて行き、リザベルトさんとエルネットさんの住んでいる家に着いた。
コンコン
俺が扉をノックすると、
「はい、今開けます」
中からそう聞こえて、扉が開く。
扉を開けてくれたのは、リザベルトさんだ。
どうやら体調が悪いのか、少しフラフラだ。
「だ、大丈夫ですか?」
俺がそう声をかけると、彼女は俺の顔を見て、
「遂に幻覚まで見えるようになってきたわ。シュウ君が私をお迎えに来てくれたの?」
「いやいやリザベルトさん!本当に大丈夫ですか!」
俺が慌ててそう言うと、
『天聖治癒』
リーシャが魔法を使って、リザベルトさんの不調を治してくれる。
やがて、リザベルトさんの様子は元に戻って来た。
そして、
「ご、ごめんなさい!どうしたの?って、シュウ君!?ヤダ!こんな格好見ないで!ちょっと待ってて!」
元に戻ったかと思えば、何やら慌てて家の扉を閉めてしまった…。
リザベルトさんってあんな人だったっけ?
「ご主人様、エルフの人達って、意外に怖くないですね」
俺の後ろにいるルリィがそう言う。
それからしばらくして、扉が開いた。
「おかえりなさ…どうぞ」
先程まで着ていた服から、少し露出が多い物に着替えている。
あと、少し言い間違えましたよね?
「お邪魔します」
俺は気にしないで家の中に入る。
そこには、このエルフの森周辺の地図が置いてあり、その上には何かの駒が置かれている。
どうやら作戦を考えていたのだろう。
見ると、様々な方角から来た時の対処法などが細かく書かれている。
おそらくリザベルトさんの不調は、これを考えたり書いていたりしていたからだろう。
「ごめんなさい家が汚くて。魔波の所為でこうなってるのよ?普段は綺麗なのよ。家事全般任せて貰っても大丈夫だからね?」
リザベルトさんが俺にそう言ってくる。
「前に泊まった時は綺麗なのは知ってますから、言い訳しなくても…。それより、エルネットさんはいないんですか?」
俺がリザベルトさんにそう聞く。
「あの子は今、食糧調達に行ってるわ。だから、今は二人っき…あら?」
リザベルトさんが、俺の質問にそう答えると俺の後ろにいるルリィに気がつく。
「シュウ君?その狐の子はどちら様?」
リザベルトさんが俺に聞いてくる。
「この子はルリィって言います。今は俺と一緒に旅に出たり一緒に行動しています」
俺がそう言うと、ルリィが俺の隣に来て、
「ルリィと言います。その…、よろしくお願いします」
自己紹介をして頭を下げる。
「そ、そう…。え?ずっと一緒なの?」
リザベルトさんがそう言った瞬間、
俺達が今しがた通った扉が、勢いよく開いた。
見ると、息を切らしたエルネットさんが立っていた。
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