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初代勇者を腕に  作者: 雪羅
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炎と水

俺が冒険者ギルドに入るとザールさんが俺に近づいてくる。


「人が少ないようですが、どうかしたんですか?」

「逃げられた」

「え?」


俺が首を傾げると、アルベールさんとヤニックが来る。


「ザールの訓練が辛いから、皆今日は逃げましてね。今日は私たちだけで行きましょう」


アルベールさんが、俺にそう言ってくる。


「師匠、俺も今日は休みたいん…」

「却下だ。行くぞ」


ヤニックが言おうとする前に、ザールさんが言葉を遮ってギルドから出て行く。


「ふふ、今日も大変ですねヤニック」

「…何とかしてくださいよアルベールさん」


2人もザールさんに続いてギルドから出て行く。

俺もそれに続く。

それから、俺達一行はヴェルーズから少し離れた草原に来ている。

今はヤニックがザールさんと一騎打ちの勝負をしている。

ヤニックが加速魔法で何度も連撃をザールさんに仕掛けるが、全てザールさんの大剣に防がれている。


「どうしたヤニック!どんどん遅くなってるぞ!」

「ハァ…ハァ…。ウオォォ!」


ザールさんの一言にヤニックがスピードを上げるが、それでも防がれている。


「ヤニックは加速魔法しか使わないんですか?」


俺は2人の戦いを見ながら、隣に座っているアルベールさんに聞く。


「彼はもう一種類魔法が使えるんですけど、彼は加速魔法を極めたいと言ってああやって加速魔法しか使わないらしいですよ。もう1つの魔法はⅠだから使わないとも言ってましたね」

「そうなんですか。…ちなみにアルベールさんはどんな戦い方をするんですか?」


俺がアルベールさんにそう聞くと、ヤニックが吹っ飛ぶ。


「私の戦い方は、主に魔法ですよ。この剣はほとんど使いません」

「魔法ですか…。何魔法か聞いても良いですか?」

「全然大丈夫ですよ。水魔法と氷魔法です。両方ともⅣです」

「Ⅳ!?凄いですね」


俺が驚いてそう言うと、


「私なんて全然ですよ。私の親は…Ⅴだったと思います」


アルベールさんはどこか悲しむような表情をする。


「アルベールさんの親…ですか」

「親と言っても血は繋がってないんですがね。親、師、友…どれが当てはまるか…」

「その人は…もしかして」

「はい」

「…すみません」


深く聞き過ぎた。


「いえ。私が冒険者をしているのも、彼が関係してるんです」

「そうなんですか。深く聞いても?」

「面白い話ではないですよ」

「良いです」


俺がそう言うと、アルベールさんは空を見る。


「3年前、私と彼はいつも通りのどかな山で生活していました。平和で自由に。でもそこに、ある人物がやって来たんです」

「ある人物?」

「はい。魔族なのは確かなのですが詳しくは…。あの男は土魔法と闇魔法を使って私たちをいきなり攻撃してきたんです。私は当時まだ両魔法共Ⅲしかなく、向こうは最低でもⅣはありました。彼が私を守りつつ戦っていたんですが、遂に彼が魔族の男の攻撃を食らいました。おそらく即死だったと思います。そして、私も攻撃されて気を失ってしまいました。私が気が付いた時には、彼の遺体も魔族の姿も無かったです」


そう言うアルベールさんの瞳には、確かな怒りがあった。


「じゃあアルベールさんは、その魔族を見つけ出す為に冒険者を?」

「そうですね。冒険者は情報が入るのも早い。あの魔族を見つけ出して絶対に彼の敵討ちをしたいと今でも強く思っています」


ふと、ある違和感を感じた。

魔族が人を襲い、殺した人の遺体をどこかへ持っていく…。

少し前に同じような事を聞いたぞ。


「アルベールさん、もしかしたらそれって魔王だったんじゃ?」


俺がそう言うと、アルベールさんが目を見開く。


「どうしてそう思うんですか?」

「少し前に、俺がエルフ絡みでその様な話を聞いたんです」

「エルフ…。エルフの長が殺された話ですか?」

「はい。長を殺した魔族は遺体を持っていったらしいです。そして、俺がエルフの村に行ってる時に魔王が人間と結託して生きているエルフの人も連れて行こうとしていました。しかも、エルフの村で一番強い人を。その時に魔神復活の生贄にすると言っていました」

「そんな事が…」


だが、リーシャがあの時、魔神復活には生贄は要らないと言っていた。

それに、3年前から魔神復活の儀式的なモノが行われていたら、勇者召喚は3年前からされていたんではないか?

時間が合わないと思う…。

俺がそう思っていると、


「ヒィヒィ…」

「もう少し動きにひねりを入れてみろ。今のままじゃ、攻撃が分かりやすい」


先程まで戦っていた2人がこちらにやって来る。

ザールさんはまだまだ余裕そうだが、ヤニックは、既に息が切れて膝も震えている。

立っているのもやっとのようだ。


「終わったんですか?」

「ヤニックの動きが悪くなったからな。アルベールはどうだ?」

「そうですね。強くなるために頑張りましょうか」

「魔法はどうする?」

「使いましょう」


そう言いながら、離れていくザールさんとアルベールさん。

隣では既に地面にうつ伏せに倒れているヤニック。


「大丈夫か?」

「だい…じょうぶ…なわけ…ないだろ」


俺が声をかけると、そう言ってくるヤニック。

俺はこれ以上はいいかと思い、ヤニックをほっといて、ザールさんとアルベールさんの戦いを見る。

だが、


「水螺旋!!」

「炎斬!」


水と炎がぶつかる!


「水斬り!」

「回炎斬り!」


アルベールさんの魔法がザールさんを襲うが、ザールさんは炎を出しながら回転して周りに炎の壁を作り出す。

何度も何度も炎と水が交差する。

どうやら、アルベールさんは完全な遠距離攻撃しかしないようだ。

そして、ザールさんもアルベールさんに合わせて魔法を使って戦っている。


水針雨天すいしんうてん!!」


アルベールさんがそう言った瞬間、雨雲が現れて雨が降ってくる。

だが、ただの雨ではなく、鋭く速い言葉通り針の様な無数の雨。


『高位魔法ね。しかも無詠唱。凄いじゃない』

『リーシャがそう言うって事は、本当に凄いんだね』


リーシャが声を出し、俺が答えていると、


焔舞えんぶ!!」


ザールさんも負けずに、炎を繰り出して無数の雨を全てかき消す。

それからしばらく、2人は互いに引くことなく、全力で戦っていた。


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