崩壊
口から血を流すバンジャン。
俺は、バンジャンを止める方法を考える。
『リーシャ、この人を元に戻す事は出来る?』
『…無理よ。精神がここまで壊れている人間は、もう救う事は無理よ。あの大男を救いたいなら、殺してあげるべきよ』
『わかった』
リーシャの回復魔法でももう、治せないと言われて、殺す事がこの男にとって救いになるのなら、もう躊躇わない。
「魔拳」
俺はそう言って、バンジャンの元へ走る!
「オォォ!!!」
バンジャンは雄叫びを上げながら、大剣を構える。
あまり苦しめたくない…。
「魔翔剣」
俺は剣を作り飛ばさず、左手で握る。
『リーシャ、火魔法をお願い!』
『炎珠!』
右手から、炎が出てくると同時に、魔素を操り炎を剣の形に変える。
「オォォ!!!」
バンジャンが大剣を振り下ろす!
俺は、エルミールさんの様に無駄のない様に大剣を避け、魔翔剣でバンジャンの右肩から左脇腹にかけて斬り裂く!
そして、右手に握っている炎の剣をバンジャンの体に叩き付ける!
すると、斬り付けた所から発火していく!
「アァァ!!!」
流石に体が燃えるのは、マズいと思ったのか、叫び声を上げる!
放っとけば、燃え尽きるだろう…。
だが、
『リーシャ、雷魔法をお願い』
『…わかったわ』
それはバンジャンを苦しめるだけだ…。
俺は右手をバンジャンに向ける。
『雷牙』
リーシャが魔法を使い、右手からバンジャンに向かって、雷が出る。
「!!!?!」
もはや声も出せていないバンジャンが雷に打たれて消滅する。
そこに残ったのは、僅かな燃えカス…。
俺は、少しの間その燃えカスを見つめて、振り返る。
「バ、バンジャンが…」
周りにいる騎士の1人がそう言うと、騎士の人達は武器を落としたり消滅させたりしている。
どうやらバンジャンが死んだ事で戦意損失したようだ。
俺は、エルミールさんの傍に行く。
「大丈夫ですか?」
「…はい」
エルミールさんは肌を見られない様に動く。
まぁ、女性なんだから当たり前か。
俺はそう思いながら、俺が蹴り飛ばしたヴァランス帝国の王の所へ歩いて行く。
「ひゅ~…ひゅ~…」
何故か虫の息だ…。
とりあえず、俺はヴァランス帝国の王の足を持ち、引きずって城を出る。
外に出ると、意外に野次馬の人達が大勢いた。
俺を見た後に、俺に引きずられている王の姿を見てぎょっとしている。
「皆さん、これからヴァランス帝国は変わります」
俺が野次馬に向かってそう言うと、王を見てぎょっとしていた人達が俺の事を見てくる。
「この男は、これからどんな事が起きても、人々に危害を与えないという契約を強制的に結びました。これから、この国がどのような国になるかはわかりませんが、貴方達も協力してあげて下さい」
俺がそう言うと、
「奴隷はどうなるんだ!」
人混みからそう言われて周りの人達も、そうだそうだ~と言い始める。
「奴隷制度はなくなります」
俺がそう言った瞬間、俺の顔面に石が飛んでくる。
俺は首を動かして石を避ける。
やはりここにいる人達は皆、奴隷制度が必要なのだろう…。
それは、様々な理由で。
だが、奴隷になりたくてなっている人なんていない。
皆、苦しそうだった。
「わかりました。じゃあ、文句がある人は俺と勝負しましょう」
俺がそう提案すると、ぞろぞろ俺の前に出てくる。
相当文句があるんだろう。
その後、押し寄せてくる者達を魔拳で引っぱたいて黙らせ、触れた瞬間にヴァランス帝国の王と同じ契約を密かに結んでおく。
結局、この国の奴隷以外の人ほとんどの人間が俺に引っ叩かれていた。
これで、この国は変わるはず…だと思う。
俺は、リーシャの転移魔法でエルミールさんを連れてヴァランス帝国からサンレアン王国まで一瞬で帰り、エルミールさんは急いで城の中に消えていった。
俺もその後に城の中に入って行く。
すると、ティアが俺を迎えに来てくれた。
どうやら、エルミールさんが走って城に入って来たのが見えて、迎えに来てくれたみたいだ。
その後、ヴァレッド様とティシール様に会いに行くと、城で働いている皆に感謝された。
そうして今は、ヴァレッド様とティシール様がいる部屋で椅子に座っている。
「この度はありがとう。君には助かったよ」
「いえ、俺はそんなに大した事はしてませんよ」
「謙遜するな。お前のおかげでサンレアンの情報が流れ続けなくてよかった」
ヴァレッド様とティシール様が俺にそう言ってくる。
「じゃあ、約束通り例の物を」
ヴァレッド様がそう言うと、2人の後ろにいたティアが前に出てくる。
その手には、何やら袋だ。
「はい、お疲れ様でした。この度は本当にありがとうございました」
ティアがそう言って、俺に袋を渡してくる。
ずっしりと重く、中からジャラジャラと金属の擦れる音がする。
「報酬…ですか?」
「あぁ。確認してくれ」
俺が質問すると、ティシール様がそう言ってくる。
俺は袋を確認すると、王金貨が沢山入っている。
「1億ラティー用意した」
「1億!?」
俺が驚愕の数字に大きな声を出すと、
「少なかったか?なら…」
そう言って更に金額を上乗せしようとしてくるティシール様。
「いえいえ!多すぎる気がします!」
「そんな事は無い。むしろ少ないんじゃないかと心配している。1億程度じゃ国は作れない」
「俺はただの冒険者です!これだけあれば十分なので増やさないで下さい」
俺がそう言うと、ティシール様は不服そうな顔をしながら頷いてくれた。
それからは、ヴァレッド様とティシール様、ティアとコレットさんと一緒に夕食を食べて、俺は部屋に帰って来ていた。
「今日はお疲れ様シュウ」
人の姿に戻っているリーシャが、俺にそう言ってくる。
「リーシャも今日はありがとう」
俺はそう言って、ベッドに座る。
「そう言えばリーシャ?」
「何?」
「ヴァランス帝国の王や国民にした契約を違反すると、どうなるの?」
「様々な死を体験できるわ。痛みも苦しみも完璧に再現されているわ」
「そんな魔法もあるんだね」
俺がそう言うと、リーシャは胸を張って、
「あれは私の考えた高位魔法よ!多分私しか使えないわ!」
そう言う。
「どういう事?」
「あの魔法は、闇魔法、幻覚魔法、毒魔法、拘束魔法を同時に使用した魔法なの」
「なるほどね。そんなに魔法を使えるリーシャにしか使えない魔法か」
何種類もの魔法を使えるのは相当の実力者だろうし、レアスキルを持っているのもそんなにいないだろう。
俺がそう思っていると、
コンコン
扉がノックされる。
リーシャが慌てて、俺の腕になる。
俺はそれを確認してから扉を開けると、
「こんばんはシュウ。少しよろしいですか?」
ティアが微笑みながら立っていた。
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