奴隷兵
契約内容は、今後この男は全世界の人に危害を与えない。
もし違反するなら、この男の体に激痛が襲う様に。
「やめろやめろ!私は家畜なんぞに堕ちたくはない!!」
ヴァランス帝国の王が大声でそう言う。
「貴方の言葉は人を馬鹿にする言葉しかないのか?」
「うるさい!早く私を解放しグハッ!!」
王の言葉に、俺は左腕で殴りつける!
「これ以上、サンレアン王国にも、エルフにも全世界の人にも!貴様の汚い手を出させる訳にはいかない!」
俺がそう言うと、ヴァランス帝国の王は俺の事を睨みつける。
「家畜に家畜と言って何が悪い!あれは私の物であり、道具だ!」
ヴァランス帝国の王が、俺に向かって大声を出した瞬間、
「シュウさん!」
エルミールさんが慌てた様子で、俺の名前を呼ぶ。
彼女を見ると、エルミールさんは俺の事は見ておらず、城の奥から出てきた騎士達の方を見ている。
俺もその方を見ると、鎧を付けた大柄な男が見えた。
それは、ザールさんの様に大剣を持っている。
ヴァランス帝国の王は、俺達が見ていた男に気がつくと、
「バンジャンか!?この男を殺せ!」
男に向かってそう叫ぶ。
すると、バンジャンと呼ばれた男が、
「オォォ!!!」
雄叫びを上げながら、こちらに向かってくる!
だが、
「邪魔はさせませんよ。相性は悪いですが、足止めぐらいはできます」
エルミールさんが、バンジャンに向かって、どこからか取り出したナイフを投げる!
エルミールさんが投げたナイフが鎧に当たって、金属同士がぶつかる音が響く。
するとバンジャンは、エルミールさんに向かって、大剣を振り下ろす!
だがエルミールさんは、無駄のない動きで振り下ろされる大剣を避けると、バンジャンの後ろに回り、短剣を背中に向かって振り下ろす!
バンジャンは大柄な体に大剣を持っているので、動きがそんなに早くない。
エルミールさんの短剣がバンジャンの鎧の隙間に突き刺さる!
だが、
「アァァ!!!」
バンジャンは、まるで痛みを感じてないのか、体を揺さぶり背中にいるエルミールさんを振り落とす!
エルミールさんも、空中で体勢を整えて地面に着地する。
「まるで効いて無いみたいですね」
エルミールさんがそう言うと、
「ふはは!当たり前だ。バンジャンは人体実験や薬物実験の賜物で、筋力は常人を上回り、痛みを感じない。我が国最強の奴隷兵だ!」
ヴァランス帝国の王が笑いながらそう言う。
「なるほど。では…殺すつもりでいきましょう」
ヴァランス帝国の王の言葉を聞いたエルミールさんがそう呟くと、背中がゾクッとするほどの寒気が襲う。
エルミールさんはそう言った瞬間、駆ける!
バンジャンもエルミールさんを殺すつもりで、大剣を振り下ろす!
「そんな単調な動き」
エルミールさんは、華麗に攻撃を躱すと、バンジャンの顔面に短剣を突き刺そうとする。
だが、バンジャンはそれをギリギリで躱す。
「…チッ」
エルミールさんは、初手を躱されたが、連撃でバンジャンに攻撃していく。
だが、バンジャンはエルミールさんの攻撃を受けて血が噴き出しても、止まる事はしない。
エルミールさんの素早い攻撃とバンジャンの重い一撃が交差する!
俺はその光景を見ながら、あることを考える。
それは、エルミールさんの武器は、メイド服に隠されている短剣やナイフ。
それがバンジャンの鎧に当たると、砕け散っている。
もう何本目かわからないが、このままエルミールさんの武器が砕け散ると彼女には武器が無くなる可能性があるのだ。
『リーシャ、契約の方はどう?』
『もう少しよ』
今の俺は、ヴァランス帝国の王を押さえている所為で加勢が出来ない。
エルミールさんの武器が無くなる前に、契約が終われば…。
そう思いながら、エルミールさんとバンジャンの攻防を見る。
「流れる水よ、止める事は出来ず、突き進め、水螺旋」
エルミールさんが魔法の詠唱をしながら、バンジャンの体に切り傷を与えていく。
そして、彼女の手から水で作られたドリルの様な魔法で、バンジャンの鎧を攻撃する!
すると、鎧が砕けた。
「いくら改造されていても、人体の急所は同じ!」
エルミールさんがバンジャンの心臓の位置に、ナイフを突き刺した!
バンジャンの動きが止まる。
エルミールさんはナイフを手放し、バンジャンから離れる。
「面倒な相手でしたが、動きに無駄が多いですね」
そう言いながら、エルミールさんが俺の方へ振り返り、こちらに歩いてくる。
だが、バンジャンの手が動いた。
「エルミールさん!後ろ!」
俺がそう言った瞬間!
エルミールさんは振ら返ろうとして、彼女のメイド服のスカート部分が斬り裂かれた!
「これは…魔法!?」
エルミールさんが驚きながらそう言うと、
「そうだ!バンジャンの強みは、その体だけじゃない!何種類もの高位魔法を無詠唱で使える事だ!」
ヴァランス帝国の王が大きな声でそう言う。
その瞬間!
「風塵刃」
バンジャンが魔法を使用する!
「ッ!!」
エルミールさんを囲う様に風の刃が飛び交い、エルミールさんの体を傷つける!
風の刃が止むと、エルミールさんの体は、メイド服が破けて、肌から血が出ている!
エルミールさんは、攻撃の所為で地面に座り込む。
『出来たわ!縛命!』
リーシャがそう言って魔法を使うと、王の体から黒いモヤモヤした手が出てきて、王の体に群がる。
「な、何だこれは!!」
王が大声でそう言うが、俺はエルミールさんの事しか気にならない。
『リーシャもうコイツはいいの?』
『もう契約は済んだわ!行くわよシュウ!』
俺は魔素を操り纏う。
そして、ヴァランス帝国の王を全力で蹴り飛ばして、エルミールさんに駆け寄る!
「大丈夫ですかエルミールさん!」
俺はエルミールさんの傍に行くと、
「見ないで…下さい。私の…醜い肌を…」
エルミールさんは顔を青くしながら、俺にそう言ってくる。
エルミールさんがこんなに弱っている所を初めて見た。
俺はリーシャに替えの服を取り出してもらい、エルミールさんの肌が隠れるように服を掛ける。
「遅れてすみません。後は任せてください」
俺は魔視を使って、バンジャンの周りの魔素を見る。
赤色、火魔法だ。
「炎…」
バンジャンが魔法を使う前に、俺はバンジャンの周りの魔素を払う。
すると、
「??」
魔法を使えない事に、困惑しているバンジャン。
「魔翔剣」
俺は、魔素を圧縮した剣を飛ばし、バンジャンの腹に刺した。
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