新しい技
俺は、言い争っている2人を呆然と見ている。
ティシール様とティアはあまり仲良くないのかな?
そう思っていると、
「お母様はもう少し人の事を考えてください!」
「だから今回の奴は、私と戦ってもピンピンしてるんだ!何も問題ない!」
2人はこちらに気づいたようだ。
すると、ティシール様は目をギラギラ輝かせて俺を見る。
獣が獲物を狩る時の様な目だ…。
ティアは、俺を見て心配そうな様子だが、突然ハッとして満面の笑顔になる。
その笑顔は、何だろう…。
そう思っていると、
「さぁやるぞレスティン!」
ティシール様が俺に向かってそう言ってくる。
すると、
「お母様!少しお待ち下さい!」
ティアがティシール様にそう言う。
「まだ止める…」
「違います!人払いとそれと呼びに行ってきます!待ってて下さい!」
ティアはそう言って、城の方へ走って行く。
「何なんだティアは…」
城へ走って行くティアの後ろ姿を見ながら、ティシール様がそう呟く。
俺は今が好機だと思い、ティシール様に近づく。
「ティシール様、おはようございます」
「あぁ、おはよう」
俺が挨拶をすると、ティシール様も返してくれる。
「ティシール様、今回も訓練ですか?」
「そのためにレスティン、お前を呼んだ」
「では、1つ賭けませんか?」
「賭け?何をだ?」
「今回の勝負、ティシール様が勝ったら、何でも1つ言う事を聞きます。もし俺が勝ったら、1つ頼みたい事があります」
「…1つじゃ足りん。3つにしろ」
「わ、わかりました」
俺がそう言うと、ティシール様は何やら考える仕草をする。
「勝敗のつけ方は?」
どうやらその事を考えていたようだ。
「今回の勝負、俺から言いだした事です。ティシール様が決めて下さってかまいません」
俺がそう言うと、ティシール様は物凄い良い笑顔になる…。
嫌な予感しかしない…。
そう思っていると、
「先に意識を失ったら負けだな」
悪い顔をしてそう言うティシール様。
つまり、最後まで戦ってみたいって事だな。
「どうだ?」
「わかりました。良いですよ。ただし手加減しませんよ」
「逆に手加減していると感じたら殺してやる」
そう言い合って、ティシール様と笑い合っていると、
「お待たせしました~!」
城の方からティアの声が聞こえてきた。
そちらを見ると、ティアがこちらに手を振っている。
そして、その後ろには何人か人がいる。
目を凝らして見ると、不機嫌そうなコレットさんにコレットさんの後ろで無表情のエルミールさん。
「どういう事だティア?」
「お母様、ぜひコレットとエルミールの見学を許して下さい」
「…まぁいいだろう。ただし、何があっても止めるなよ」
「わかりました」
ティシール様とティアがそう話している光景を見ていると、
「…どういう事?」
不機嫌そうなコレットさんが声を出す。
「お母様が、シ…んん、レスティンさんと訓練で戦うようなので、一緒に見ましょう?」
コレットさんにそう言うティア。
「お姉様、そんなことする必要あるのですか?」
「もちろんです。さぁさぁ!エルミール、敷物を用意して下さい!」
「…わかりました」
ティアがエルミールさんに指示を出して、エルミールさんが訓練場の隅に布を敷き、3人がそこに座る。
完全に野次馬みたいになっている…。
『まぁ、周りに人の気配はしないから、全力で戦ってねシュウ』
『うん!…ん?リーシャは手伝ってくれないの?』
『もちろんよ。これはシュウの戦いなんだから』
『それもそうだね』
リーシャにそう言われて、俺は改めて意識を目の前に立っているティシール様に集中する。
「じゃあ、いくぞ」
ティシール様が、獰猛な笑みを浮かべて俺に聞いてくる。
「お願いします」
俺がそう言った瞬間!
背中に衝撃が伝わる!
前に戦った時より、スピードが速くなっている!
この前のは、手加減してたのか…。
俺はそう思いながら、後ろを向く。
相変わらず、この人の攻撃は衝撃が貫通する…。
「魔拳」
俺は、魔素を圧縮して両腕を包み込む。
それと同時に、魔素を体全体に纏わせて、身体能力を僅かにだが向上させる。
そして、ティシール様の元に駆ける!
だが、彼女も黙って待ってくれるはずも無く、俺の攻撃に反撃しようと体勢を変える。
「はぁ!!」
ティシール様の腹を殴ろうとするが、
「遅いな」
俺の拳は、簡単に止められてしまう。
俺は、拳を止められた瞬間、連撃で更に殴っていくが、全て彼女に止められてしまう。
マズい、今の俺じゃティシール様に攻撃が当てられない…。
俺がそう思っていると、
「集中しろ!」
ティシール様の攻撃を避ける事が出来ず、食らってしまう…。
どうすれば彼女に勝てる…。
魔翔剣では斬り殺してしまう可能性がある。
魔震は加減を間違えれば、周りにも攻撃の余波で何が起きるか分からない…。
新しい力が欲しい…。
俺はそう思いながら、彼女の攻撃を上手く躱したり、防御する。
ティシール様の攻撃は、力強く速い…。
攻撃を当てるためには、彼女のスピードに追いつかなければ…。
そう思った瞬間!
俺に何度も攻撃してくるティシール様の動きが止まる。
なんだ?
「今日は、お前から仕掛けて来ないんだな」
俺がそう思っていると、ティシール様がそう言う。
「イライラする!死んでも文句は言わせないぞ!!」
怒号を放った瞬間!
腹に衝撃が!
「ぐはっ!」
怒りで更に速くなってないか…。
「はぁぁぁ!!!」
連撃!!
俺は殴られながら考える…。
この速さを止めるにはどうすればいいのか…。
そう思った瞬間、俺はティシール様の攻撃を受け止めようと構えている魔拳を見る。
その瞬間、1つ試してみたい事ができた。
だか、そのためにはティシール様を一定に位置に留めないと!
仕方なく俺は、彼女の拳を無抵抗で食らう!
腹の衝撃で意識を失いそうになったが、寸前の所で持ちこたえる。
そして、俺の腹に突き刺さっている拳を掴む…。
「なんだ?やっとやる気になったか?」
「…圧縮」
俺は魔素を圧縮する。
ティシール様の周りを、固めるように。
圧縮していく。
すると、
「ん?なんだ?動けない…」
ティシール様が自分に起きている事に気がついたようだ。
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