必需品
包丁を片手に俺に飛びつこうとするルリィ!
「危ないですよルリィさん」
飛び込んでくるルリィと驚いている俺の間にエルミールさんが割り込む。
すると、ルリィは空中で体勢を変えてエルミールさんにぶつかる前に地面にシュタッと着地する。
「刃物を持ったまま動くのは危険ですよ」
「…すみません」
エルミールさんがルリィの事を叱る。
俺は突然の事に驚いている。
ルリィってあんなに身のこなしが軽かったかな?
獣人ってそういうものなのかな?
俺がそう思っていると、
「ご主人様、申し訳ありません」
ルリィが俺の目の前に来て頭を下げる。
「大丈夫だよ。ルリィこそ大丈夫だった?」
「私は大丈夫です。しっかりご主人様の為に色々勉強してるんです!」
「勉強?」
「はい!色々な国の料理や編み物も勉強してます!今も鍛冶について学んでいるんですよ!」
ルリィは俺にそう言って頭を俺にグリグリ押し付けてくる。
「ごめんね。寂しい思いさせちゃって」
俺はそう言いながら、ルリィの頭を撫でる。
頭を撫でている最中に大きな耳も少し強めに触ると、嬉しそうに声を出す。
何だろう…、平和だな~…。
ルリィの頭を撫でながらそう思っていると、
「他所でやってくれねぇか?」
「…変態」
おじいさんとエルミールさんが冷めた目で俺達を見ている…。
そして、
『…シュウ?』
あえて気にしない様に心掛けていたが、リーシャも冷たい声で俺の名前を呼んでいる…。
それからルリィを離そうとしたが、俺から離れようとせず、仕方なくルリィを前にくっ付けた状態で話し始める。
「すみません。どうか続けて下さい」
俺がそう言うと、エルミールさんはおじいさんと話し始める。
「騎士の鎧を点検しに来て欲しいのですが来られますか?」
「大丈夫だ。近々城に行こう」
「お願いします。その際に予備の剣を50本持って来て下さい」
「もう折れたのかい?」
「戦いに向けて皆訓練に勤しんでます。消耗が激しいのは認めますが」
「国を護ってるんだ、文句は言わない」
「ありがとうございます」
どうやらエルミールさんの用事は済んだようだ。
俺はくっ付いているルリィに話し掛ける。
「ルリィ?ごめんね。まだ依頼が済んでいないんだ」
俺がそう言うと、俺にピッタリとくっ付いていたルリィが少し離れる。
「ご主人様…」
「何?」
「私…寂しいけど頑張ります!!何でも出来る様になってみせます!料理も編み物も鍛冶に調合だって!だから…ご主人様も頑張って下さい!」
ルリィは少し涙目でそう言った。
俺はルリィの頬に手を添えて、
「ありがとうルリィ。お互い頑張ろう。必ず迎えに行くから」
ルリィの頬を撫でながら、俺はルリィにそう言う。
すると、ルリィは頬を撫でている俺の手に触れて、
「はい!」
元気よく返事をする。
すると、ルリィは俺から離れておじいさん方へ行き、
「もっと鍛冶を教えて下さい!お願いします!」
そう大きな声を出して、奥の扉の中へ行ってしまった。
俺がルリィの消えた扉を見ていると、
「…兄ちゃん」
「はい?」
おじいさんが話し掛けてきた。
「あの子…手先が器用だよ…。わしの技術をどんどん吸収してる。期待してな」
「ルリィをよろしくお願いします」
俺はそうおじいさんに言って、頭を下げる。
「任せときな」
その言葉を聞いてから、俺とエルミールさんは武具屋を後にした。
今は道具屋に向かって歩いている。
「ルリィさん、元気そうで良かったですね」
「はい。エルミールさんは道具屋に何の用事があるんですか?」
「道具屋では、マドロラさんが道具の発注に行ったはずですので、情報収集の為にですね」
内通者の話か…。
それから少し歩くと、道具屋が見えてくる。
道具屋に着くと、
「私が聞いてきます。レスティンさんはここで待っていて下さい」
「わかりました」
エルミールさんはそう言って道具屋の中に入って行ってしまった。
それから少しして、エルミールさんが道具屋から出てきた。
「どうでしたか?」
「彼女はしっかりとここに来ていたようです。店主と中にいたお客さん2人がそう言ってました」
「そうでしたか」
「こうなると、誰かわからなくなりますね」
「そうですね」
俺とエルミールさんは道具屋の前で考え込む。
すると、
『シュウ、彼女に聞く事があるはずでしょ?』
リーシャが俺にそう言ってくる。
そうだった。
「エルミールさん、少し聞きたい事があるんですが」
「それは依頼の事についてですか?」
「はい」
「では、ここでは止めときましょう。誰が聞いてるかわかりません。今夜貴方の部屋に行くのでその時にお願いします」
「わかりました」
それからエルミールさんはまだ用事が終わってないと言って歩き出す。
俺も一緒に歩き出す。
「今度はどこに行くんですか?」
「服屋です。メイド服がそろそろダメそうなので」
「そうなんですか。俺も付いて行って良いんですか?」
「かまいません」
エルミールさんはそう言うが、俺はどうしたらいいんだろうか?
そう思いながら、歩いている内に服屋に着いたようだ。
外からでもわかる完全な服屋だ。
お店の看板物なのか1つの服が見えやすい様に置かれている。
エルミールさんは先に入って行ってしまった。
俺も後に続いて店内に入ると、物凄い量の服が置かれている。
見ると、エルミールさんが可愛らしい人と話している。
店主か店員さんかな?
そう思いながら俺も彼女の所に行くと、
「いつも通りでお願いします」
「良いんですか?最近は女性冒険者が戦っている時も可愛いのが良いと可愛らしい服を破れない様に加工する様にしてますよ」
エルミールさんと話している可愛らしい女性の声が完全に男の声だった…。
「え?」
「ん?おぉ、いらっしゃいませ」
俺が思わず出した声に反応して、俺の方を見てくるお店の人。
やはり声は男だ…。
「見ない顔だね?何をお求め…」
「いえ、彼は私の連れです」
お店の人の言葉を遮って、エルミールさんが俺の説明をしてくれる。
「エルミールさんの彼氏…」
「違います!」
お店の人がエルミールさんに笑いながらそう言った瞬間、エルミールさんが全力で否定してくる。
ちょっとだけ…なんか辛い…。
俺が1人でショックを受けていると、
「お兄ちゃ~ん、何騒いでるの~?」
そう声が聞こえて、階段から足音がする。
階段を見ると2階から下りてきたのは、エルミールさんと話しているお店の人と全く姿が一緒の人が下りてきていた。
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