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アルパカに熱狂する人、増えてます

「うーん、やっぱ大魔法はマズかったか」


ゲームでは基本的にオブジェクトを破壊してもすぐに直ったが、この練習場の大穴は空いたままになっている。


MPの心配から一番扱いやすい<七色の神槍(ブリューナク)>を選んだが、使いやすさ≠威力なのを忘れていた。



修繕の請求とかされないよね、これ。

さっさとズラかってしまおう。


「はいこれでクエスト行っていいでしょ、あー忙しいなーもう行かなきゃじゃあね」

早口で捲し立て、出口に歩いていく。


ギャラリーもおっさんも何も口出しせず、固まっている。勝った!(?)



よし、このまま花子とよしおを連れてゴブリン殲滅に行こう。

大通りに出て、宿へと戻ろうとする、が



「すみません、今よろしいですか?」

肩を叩かれる。まーたナンパか、モテる女は辛いね。


「悪いけど今急い…で……」



テルベン?とかいうイケメン風騎士っぽいのがいた。



「失礼、私の見間違いでなければ、昨日オークから私どもを助けて頂いた方ですね?」

「違います」


「いえ、少しだけ、お礼をさせていただきたいだけなのです」


どうやらこっちを断定しているようだ。花子もよしおもいないし、エステで容姿変更してきたのに。


「違います」

「しかし、その羽は……」


装備戻すの忘れてた☆

コートを別のものに変更する。


「羽なんてないです」

「あ、その着替え方も……間違いない!」


ふえぇ…墓穴掘ったよぅ…



「もー、お礼ならあの時言ってたじゃない」


「まぁまぁ、どうですか、近くのアルパカカフェでおはなs 「行きます」…ハイ」

む、条件反射的に答えてしまったぞ。


でも場所もわかんないし、仕方ない仕方ない。




……あれ、私ってチョロい?








☆★☆★☆★☆★






私はフュルトリーア王国の騎士学校で教官を務めている、トルベンという。


女神様の確保に成功した。

偶然背中の羽を見つけたが容姿が変わっていて、間違いかと少し焦った。


だが伝説上の「アルパカの女神」はアルパカをこよなく愛したという。

アルパカカフェへの同行を認めてくださったから間違いないのだろう。



今彼女は店の子アルパカとじゃれあっている。


「うわ、テルベンさんめっちゃ嫌われてるね」


「トルベンです。確かに近づくとツバをかけられるから動かないようにしているのですが……」


こちらとしては、そこまで仲良くできるのも貴女だけでしょう、と言いたいところだ。

臆病なアルパカさんが初対面であそこまで信頼を寄せるのも、女神たる証拠だろう。


「まず金属外す、ひかって怖いでしょ」

「お、おわわっ何を」


鎧と武器が一瞬のうちにテーブルの下に転移されていた。

訓練用の服だけになってしまう。



「次、もっと頭を低く、手を前に出さない」

「ぐおぉ!?体が!」

「うるさい」

「すみません」


急にものすごい圧で土下座のような体勢にされてしまった。



「で、これ持って献上」


目の前に上質な干し草が出現。

私はそれを手に取ると、顔を上げないまま子アルパカさんに差し出す。


「ほらユーちゃん、ごはんくれるってよ」


女神様の言葉から少し待つと、手に動く感触が伝わった。恐らく食べているのだろう。



「ユーちゃん、やっちゃえ」


干し草がなくなると女神様がそう言って。



「アイテテテテ、髪が!?」

ぬおぉぉお!髪を毟られているッ!



「はいおっけー。顔上げていいよ」


恐る恐る顔を上げる。

そこにはこちらに対して見下しているかのような憎たらしい無表情をする子アルパカの姿があった。



「ん、多分これで他の子も大丈夫だと思うよ。触ってみな」


気が付くと興味深そうに何人かのアルパカさんが近寄ってきていた。

しかし、私は人生で一度もアルパカさんに触れたことがない。


女神様を信じてゆっくり手を伸ばす。


…………!!?!??!?!?


何という感触!!普段使う毛製品とは格段に艶やかでフワフワとした触り心地。


「ようこそ、こちら側へ」


女神様が何か言ったような気がするが、全く認識できなかった。

私の全神経がその感触に費やされ、何も考えられない。






しばらく至福の時が過ぎた。


「あの、お客さんそろそろ」

店員が話しかけてくる。


気づけばかなりの時間が経っていたようで、もう夕方に……


何、夕方だと?何時間こうしていたというのだ。


「そ、そうだ、こんなことをしている場合では」


周りを見るが女神はいない。



「会計、いいですか?すぐに帰られた女の人と二人分ね」




「に、逃げられたぁああ!!」



トルベンの明日はどっちだ!





◇◆◇◆◇◆◇◆



「こんにちは、マリーさん」

宿に戻ると、受付の子がひょっこり顔を出した。


「冒険者登録してきちゃった。これから出るけど、しばらく泊まるから先払いでいい?」


「大歓迎です。どれくらいになりますか?」

「とりあえずこれだけ」


ジャラジャラと金貨を出す。不審に思われないよう、いったん袋に詰めてそこから出している。

払ったのは7万EN、10日分だ。


「10日分ということなら、2日目からは1000EN安くなるので6万ENで大丈夫です」

「あらら、じゃ、それあげる」


5700万近く持ってるからそれくらい何とも思わない

というかドラゴンの肉やらの食費でむしろこっちはプラスだ。


「えっ、そんな、もらっちゃうわけには」

おう、目がキラキラしているぞ少女よ。


ちなみに名前は服に「アンネ」って書いてあった。


「いーからいーから、取っといて」


「いっぱいサービスします!」

喜んでもらってくれた。




「さて、私は花子とよしお連れてクエストに行ってくるよ」


いったん部屋に戻る。

うわ、2匹とも魔法陣でなんか遊んでる。


この世界では人間が杖みたいな「魔法式を保存してある機械」に必要な魔力を全部流し込んで魔法を使うらしい

1人1人の魔力の性質で、使える杖が違うとのこと。


アルパカは魔法陣を使って自由自在に魔法を使う。

魔法陣は記述に魔力を使うだけなので、どんな人でも変幻自在の万能魔法を使えるのだ。


ただ魔法陣に使われる文字を解読できていないため、多分使えるのは<魔法陣知識>を持ってる私だけ、のはず。

ゲームの廃人どもは頑張ってたけどね。何度教えてくれと頼まれたことか。



「ほらほら、ゴブリン狩りに行くよ」

「フェ」「ムェ」


買ってきたベットやらを設置して早々に部屋を出た。



トルベンさん……

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