マラソンはトルベンのようです:魔法陣編
敷地を追い出され、街まで行くことにしたまりあと花子&よしお。
パッシブスキル【騎乗の巧】により、本来乗用でないアルパカに乗ることができる。
花子に乗り、よしおを連れて早足に進む。
「あれ、花子の毛のツヤが、いつもよりいい感じに」
「フェ?」
なんという触り心地ッ!素晴らしい、素晴らしいぞ花子オォォォォ!!
乗りながらワキワキと手を動かす。
~全年齢対象作品のため描写できません~
私がしばらく天国に行っていると、花子が立ち止まる。
「フェー」
「ん、どうしたの?」
長い首の横から前を覗くと、200mほど先に、傾いた荷馬車のようなものが見える。
どうやら車輪が壊れているようだ。
目を凝らすと、プレイヤー......異世界だから違うか、戦士風の人たちが、魔物と戦っている。
…あ、こん棒で吹っ飛ばされた。
って、あれオークじゃん!Lv15エネミーが一度に4体か、初心者からしたらエグいなぁ。
「じゃなくて、ゲームじゃないんだから、あの人たち死んじゃう!助けないと!」
【飛翔】を使用して高速で接近、到達までの5秒ほどで、一気に魔法陣を書き上げる。
「基底に土、スピード4倍で!」
二重円の小さな魔法陣が輝き、次の瞬間には高速の礫がバラまかれた。
ドドドッとオークにヒットするが、ダメージは少ない。
「グオォ!」
こちらの攻撃に気付き、全員が向かってくる。
私はその場で地上に立ち、さらに魔法陣を立ち上げた。
「基底に光」
小さな白い円を記述
「半径2m」
外側に特殊な文字が刻まれる
「繰り返し多重化」
魔法陣が厚みを持ち、MPをゴソっと持っていかれる感覚がする。
Lv1だとこんなもんで限界なのね。
「いでよ、レーーザーーー!」
手を前に突き出し、技名を叫ぶ(この行為に全く意味は無い)
魔法陣が巨大化し、輝く。
超極太の指向性を持った光が、一瞬のうちにオーク達を飲み込み
圧倒的熱量を以て、消し去った。
後ろから、2匹のアルパカが駆けてくる。
「大丈夫、もう終わったよ」
撫でながらそう言って、敵のいた方向を振り返ると
「ちょ、ちょっとだけ、やりすぎちゃったかなぁ、なんて?」
一直線のクレーターのようなものと、その横スレスレで気を失った護衛?の人がいた。
そうだ、ケガしてた人も助けておかないとね。
メニューからアイテムインベントリを選択、前世(?)から引き継がれた中級ポーションを、吹っ飛んだ戦士に投げる。
ノーコンでもシステム的な補正がかかって、胴体にヒットし、回復効果を表すエフェクトを表示させた。
ん、車輪の壊れた馬車から、誰か出てきたぞ。
近づいて声をかけてみる。
「あのー?襲われてたみたいだけど、大丈夫?」
「こ、これは、君がやったのかい?」
キラキラの装備をしたイケメン風の男が、質問を質問で返してきた。
残念だけど、私アルパカにしか興味ないんで。
「あー、うん、Lv1の魔力だと、どのくらいの威力になるのかわかんなくて。あの人たちも助けなきゃだし」
「いや、助かったよ。部下が自らの力を見誤った結果だ、巻き込んでしまってすまないな」
男は少し考えた様子を見せると、こう続けた。
「私はフュルトリーア王国の騎士学校で、教官を務めている、トルベンという。あなたは...…見慣れない格好をしているが」
む、確かに全身アルバート・パッカードは目立つか
インベントリから、お忍び用の装備に着替える。人気者は大変なのだ。
「な……今、何を」
あーあー、ここではゲームの話で通じないのか、面倒になってきたぞ。
「私は先を急ぐから。花子、乗せてって」
「フェー」
横についた花子に軽く飛び乗る。
テルベン?とかいう人は目を見開いて
「ま、待ってください、あなた様はもしや…!」
「そこに寝てる人、助けたほうがいいんじゃない?まだ息はあるよ」
ポーションで回復させてあるが、注意を向けさせるために利用させてもらう。
「バイバーイ」
「や、少しお話を!」
しつこい男はサヨナラだ。
「全速前進~♪」
「フェー」
時速40キロの風を受け、街のほうへと向かっていく。まだ結構距離があるなー。
どんどん速くなって風が気持ちいー!...…は、はや、速いよ花子!?
「フェー♪」
ドドドドドド、と先ほどの倍以上の速さで駆ける2人。
「やーーー、止まってーーーー!!」
街に近づくまで、スピードが落ちることはなかったという。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「おい、起きろ!寝ている場合ではないッ!!」
トルベンが、部下2人を叩き起こす。
「き、教官、オークの群れは…」
「そんな場合ではない、と言っている!アルパカに乗る女性を見た!!女神が降臨したぞ!!」
その言葉を聞いた兵士たちはハッとなり、急いで王都に戻る準備を始めた。
「私は先に行く、早急に騎士団長に伝えなければ…!」
トルベンは、鎧を脱ぎ捨て軽装になると、王都までの42.195kmを走った。
余談だが、これが後に称えられ、42.195kmを走る時間を競うスポーツ「トルベン」という競技名になったという。
馬車助けるってめっちゃ使いやすいですね(煽り)
トルベンの名前に20分くらい悩みました
Lv1じゃないだろ!って魔法ですが、後で補足が入ります