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第四章「決戦・魔将軍」 Page-4



「――まず、そうだな。なんでお前が王都のすぐ近くであるここに砦を築けたか教えてもらおうか。素直に吐けば命だけは助けてやるかもしれないぞ」

『わ、わかったっ……。それは我が魔王様に直接この地に召喚されたからだ……。探知サーチスキルを無効化する魔法をかけていただいた上でな』

「ほぅ……」

 繊月は内心で少しだけ驚く。

 最早抵抗できない体になっているとはいえ、まさかティランチュラが素直に情報を漏らすとは思えなかったからだ。

 恐らく自身との圧倒的な力の差の前に感じた絶望と死への恐怖に怯えているが故の結果だと繊月は考察する。


「魔王に召喚されたのはいつだ?」

『く、詳しくはわからない。魔物の我には時間という概念が曖昧だからな。だが……恐らくは一ヶ月か二ヶ月くらいだと思う……』

「……そうか」

(一ヶ月から二ヶ月、というと俺がこの世界に召喚された時期と近いな……。偶然か……?それとも――)


「お前以外に魔王に召喚された奴は居るのか?」

『わ、わからない。魔王様とそのような話はしないのでな……』

「そうか。……では次に、お前の目的はなんだ?」

『……命令により魔王様の障害となっているあの王都の陥落、要人の殺害、並びにこの王国を崩壊させる事だ』

(……リリアンヌを殺害しようとしたフレイムバードの襲撃はやはりこいつの差金か)


「お前は要人の殺害、と言ったが、その要人の位置なんかの情報は誰から聞いた?」

――フレイムバードはまるでリリアンヌとリリセアが王城の私室に居るとわかっているかのように襲撃を仕掛けてきた。

 それはつまり、何者かによって二人がそこに居るという情報を提供されていたからに他ならない。


『き、聞いたのは魔王様だが、情報は貴様らの王国に居るという内通者からだ』

「なんですってっ……!?」

「おい、内通者とは誰だ……?」

――王国内に裏切り者が居る可能性がある。

 あんな貴族や騎士の一斉逃走という騒動の後なので生死は不明だが、万が一そいつが生きていた場合、再び王国が危機に陥る可能性がある。

 そのため繊月は意図的に冷酷な声を出しながら短杖イロアス・サヴマをティランチュラの首元へと突きつける。


『し、知らぬっ! だが、魔王様の指示でその裏切り者が居る場所へとスライアラクネの軍団を放ったっ! 生きてはおらんはずだ!』

(スライアラクネの軍団が放たれた……?なら、進軍の途中にあった、ブロド達の死体の中に裏切り者が居たという事か?)

 状況的にも彼らの中に裏切り者が居たと考えるのが一番自然だ。

 

「それじゃあ最後に……お前は魔物の中じゃどれくらい強いんだ?」

 これは実は非常に重要な質問だ。

 何故なら、ティランチュラの強さ次第で繊月は大幅に今後の方針を変更する必要があるからだ。

 もしティランチュラが魔王軍で弱い方なのであれば今後はより警戒をする必要がある。だが、強い方の場合はある程度の警戒はしつつも今回のようにパワープレーで迅速に行動をしていけばいいはずだ。


『魔王様より我は最精鋭の一角という扱いを受けていた……! 故に我より強い者等そうはおらんはずだッ……!』

「ふむ……」

 主観が混ざっているため何とも信憑性の低い話だが、重要な王都の襲撃を任せるくらいなのでティランチュラの言う通りある程度は強い方なのだろう。

(ここで漫画とかでよくある『くっくっく……我は所詮指揮官の中では最弱……。これより貴様の先には地獄が待ち受けているだろう……』なーんて台詞を吐かれたらどうしようかと思ったけどな)

 その場合、EDENにおいて非常に強力なモンスターと同等の魔物がこの世界にも居る可能性があったが、この分だと杞憂に終わりそうだ。


「リリアンヌとリフィーリアからは何か聞きたいことがあるか?」

「いえ。私は特に無いわ。聞きたい事はおおよそセンゲツが聞いてくれたから」

「……私も特にないな」

「そっか。じゃあもうお前に用は無いな」

 そう言うと繊月はまるで生ゴミでも見るかのような目でスライアラクネを見ながら短杖イロアス・サヴマを突きつけ、先端へ魔力を集中させていく。

『そ、そんなっ……! 命だけは助けてくれると――』

「悪いな。あれは嘘だ。お前がこれまで奪った命の報いだと思って諦めてくれ」

『ひっ……魔王様――』

「――光子放射フォトン・レイ

 直後、周囲を凄まじい光が包み込む。

 数秒後、それが収まった後にはまるで最初からそこに何も無かったかのようにティランチュラの体が消滅していた。

 だが、繊月を中心に広がっているクレーターだけが、そこで何らかの事象があったという事を証明していた。


「……悪いが俺はさっさと元の世界に戻らないと行けないんだ。それにお前の事は殺り慣れているんで、な」

 誰にも聞こえないような声でぼそっと呟くと、繊月は踵を返し二人が待っている方向へと歩き始めた。

 



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