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破壊

背に大輪を背負う、異形は空を翔ける。

自身の倍はある翼は、一つ羽ばたくだけで地上を揺らした。『ジズ』の名を冠する異形の化物は王国を蹂躙し続けていた。

見れば、都市のあらゆる所で炎が立ち昇っている。

煉瓦造りの建物が建ち並ぶ、美しかった景観は今や廃墟と言ったほうが正しかった。


 人々は瓦礫の中を、逃げた。どこという訳ではない。

もはや安全な場所など、このエル・ティアナには残されていなかった。

大きな噴水を中心に、沢山の行商人と客で賑わっていたヴェールマン広場、今や見る影もないその場所に、一人の少女が立っている。その小さな背に余るほどの絶望を背負い、それでもその両眼はジズを捉えて離さなかった。


 少女の手には、樫の木の杖。40㎝程のそれを胸の前に構え、目を閉じた。

杖の先に付けられた水晶が青白い光をたたえ、淡い輝きを放つ。


「私は…貴方を信じています…」

「お願い…。」


 少女を中心に宙に小さな文字のようなものがが浮き上がる。一つ…二つ…と、それは数を増やし、大きな魔法陣を造りだした。

 杖を握る手に力が篭もる。水晶は更に強く輝きを増していく。

『ジズ』の名を冠する化物は、その輝きにいち早く気付き光の下、少女へとその鋭い眼光を向けると、背負う大輪が輝き、回転を始めた。

回転が加速するとともに、ジズの口内に赤黒い不気味な光が蓄えられていく。美しかった王国を破壊した光―。

それを少女一人に向けて―。


放つ―。


 すさまじい轟音とともに、ジズより放たれた光線は一直線に少女へ向かう。

同時に少女は目を見開く。杖の先の水晶が一際強く輝いた時、少女が叫んだ。


「               」



 赤と黒の禍々しい光と、青と白の光が交わり―――









 これは、エル・ティアナを駆けた一人の少女の記録である。

想いを紡ぎ、想いを繋ぐ。それが、エル・ティアナに伝わる『召喚師』の責務であった。


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