俺がスクリーンの中に夢をみた話
「さあ、行くぞ、離れろ」
壁を爆弾で破ろうとしているナガタが俺に危険を促す。
俺は壁から離れ、爆発に備えて耳を両手で塞いだ。
次の瞬間、けたたましい爆発音と共に壁が破壊された。
「なんていうか、お前すごいな」
破壊された壁を見ながら俺はナガタに感想を述べる。
耳がキーンとしている。
まるで映画を観ているようだが、これは現実すぎる。
爆破された部屋の中を見ると誰もいない。
「おい、誰もいないぞ」
「もう一枚先みたいだ」
ナガタは静かに答える。
こいつはなんだ特殊工作員なのか。
とりあえず監禁された場所から抜け出して、おおよその概要はナガタから聞いた。
警察や暴力団などから一目を置かれるようなとんでもない組織に誘拐されたサキちゃんを救うらしい。
今がその組織の基地だ。
らしいって他人事のようだが、俺も当事者である事は間違いようのない事実だ。
ナガタはサキちゃんが誘拐された事は自分の未来を見通す能力で解ったが、
どこに誘拐されたかが解らなかった為、俺をその組織にわざと拉致させて、
それを手がかりにこの組織の基地に潜入したらしい。
何故、俺だったのかとナガタに聞いたが、
返ってきた答えは「暇そうだったから」だそうだ。
そりゃあ、俺が探偵という文字を書くのを練習していたら、暇だと思われても仕方がないのか。
でも暇つぶしにしては暇をつぶしすぎていやしないだろうか。
成り行き上一緒に助ける事になってしまっているが、
そもそもこんな所に置き去りにされては自分一人ではどうしようもないし、
最早もうここまで来たら、ナガタの手を借りて助けてもらうしか方法がないように思える。
本当に危ないと思ったら、何とか自分だけでも逃げ出す算段ではあるが、
最早本当に危ないというラインは越えてしまっての今ではないだろうか。
感覚が麻痺してしまっているのか、拉致されてしまって何か少しハイになっているのか、
今、ナガタという俺の友人が壁を爆弾で壊したというのもあまりにも非現実的すぎる。
まるでスクリーンか夢の中にいるみたいだ。
「よし、下がれ」
とぼんやりしているとナガタが再び壁を破壊しようとしていた。
この先がこの組織のボスの部屋らしい。
そもそもなぜ、サキちゃんがこの組織に誘拐されたのかも解らないという。
そしてボスに会って、一体どうするというのだろうか。
そんな事を考えていると再びけたたましい音と共に壁が破壊された。
がれきのホコリの中から、薄っすらと人影が見えてくる。
「何だ、貴様等は?」
中のボスらしい風格の人物がこちらに語り掛けてきた。
あーあ。貴様等だってさ、俺も入っちゃってるよ。




