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魔石と殺人狂  作者: プラン9
第四章~別世界~

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第六十五話 耳の長い昼

 大地に刻まれた大きな傷跡の上には、木くずや白い肌の人の腕等が散らばっている。

 見るも無残な状態の亡骸を、金髪の集団が悲しげな表情で拾い集めていた。

 誰も彼もが、美しい金色の髪を携えており、まるで一流の人形師が創り上げた兵士の人形のようだ。

 身に纏っている緑色の服と装飾の施された剣が、さらにそれを引き立てる。

 だが普通の人間とは違い、耳が長く尖っていた。

 ウートガルズより奥にある森に住まう住人、エルフ達だ。

 ウートガルズの裏側には巨大な壁と、乗り越えられないように鋭い柵が立てられている。

 故に、壁を飛び越える事が不可能。

 つまり、正門から入る事しか出来ないのだ。

 故に彼らは、正門前に駐屯していた。

 攻め入るにはここからしか無いから。

「誰が、こんな事を……酷過ぎる」

 一人の青年が、重い口を開く。

 彼らが拾い集めているのは、亡くなった戦友の死体だ。

 どれも原形を留めておらず、どれが誰のかは解らない。

 中には顔だけが残っていたりもするが、その殆どは腕や脚だけを残して消え去っている。

 まるで巨大な龍が、彼らを纏めて喰ったかのように。

「一体何が……何処の化け物がやったというのだ!」

 青年が声を荒げて、叫ぶ。

 このような惨劇を引き起こした犯人に。

 もっとも、犯人は化け物が使った武器なのだが、今の彼らにそれを知る術は無い。

 故に、大粒の涙を流し、悲しみに暮れるしか彼らには出来なかった。

 だがそれも、まともに悲しませてはくれない。

 遠くからやってきた、侵略者のせいで。

「アンドロイ、お前も犬食ってみろ。マジ不味いから、驚くぐらい不味いから」

「わざわざ不味いと解ってるものなんて、食べないよ。って近付けないで、やめて臭い! めっちゃ臭い!」

 フォロリスがアンドロイに、バラバラになった犬の脚を押し付けていた。

 それを後ろのベラは苦笑しながら、ジャックはケラケラ笑いながら見ていた。

 和気藹々とじゃれ合う集団を、バラバラになった死体を集めている青年たちは一斉に睨み付ける。

 距離はそこまで遠くはなく、散らばってる手足が見えるぐらいの近さまで迫っていた。

 だというのに、楽しく騒ぎ立てるフォロリス等に不快な念を抱くのは、これまた当然の事。

 もっとも、この惨劇を引き起こした犯人はフォロリス等ではあるが、青年たちはそれを知る術無く八つ当たりと認識していた。

 だとしても、悲劇に見舞わられた彼らにとって、仲間同士で楽しく騒ぐ彼らが羨ましく、そして同時に憎く見える。

 そして今、エルフ達は全員人間に、嫌悪感を抱いている。

 故にここで、関係のない人間を殺したとしても、彼らの神が許してくれると本気で信じているものも少なからず居り、腰にかけてある剣に手をかける。

 だがそれを、リーダー格らしき者が手で制す。

「待て。彼らは人間だが、この惨劇を引き起こした犯人という訳でもない。

 もしかしたら、別の大陸から来た難民かもしれない。ここで斬っては、エルフの名に傷がつく」

「ちょいといいか、そこの」

 先ほどまで犬の脚をアンドロイに押し付けていた男━━フォロリスが、リーダー格らしき男に話しかける。

「このテントに、飯と布団はあるのか?」

 テントを指さしながら、フォロリスがニヤニヤと笑みを浮かべながら尋ねる。

「あ、ああ……あるにはあるが、難民に分け与えるような分は無い」

「ふむ、あるのか。あるのならいい、それで」

 フォロリスは何やらうんうんと頷きながら、満足げな笑みを浮かべリーダー格らしき男の目の前に、自らの右手を出す。

 バックに控えている兵士が一斉に、ラインメタルグリードを構える。

 同時にアンドロイ、ジャック、ベラは耳をふさぐ。

 モデルとなった四十二年式降下猟兵小銃から標準器を取り外し、代わりに銃口を二つに増やし重さと弾丸の火薬量を倍ぐらいまで底上げした、化物専用ライフル。

 だがそれも、銃という物を知らないエルフ達にはただの鉄の塊にしか見えない。

 だが、何か嫌なものを察したようでしきりに仲間同士、顔を見合わせていた。

「諸君、試験射撃だ。テントは傷つけないように、屠殺せよ」

 そう言い、指を鳴らした。

 静かな草原に、音が鳴り響く。

 同時に数多の銃声が鳴り響き、硝煙の煙を上げる。

 エルフの綺麗な髪、顔、身体に銃弾が突き刺さり、血の飛沫をあげ、悲鳴を上げながらバタバタと倒れていく。

 黄金色の薬莢が、土色の傷に落ちていく。

「はい、撃ち方やめ」

 フォロリスがそう言い指を鳴らすと、一斉に発砲をやめマガジンを交換する。

 一瞬にして、エルフ達は肉片へと変わり生えてた。

 草原に構えているテントから、騒ぎを聞きつけエルフが出てくる。

 どれもこれも、かなりの美形。

 それを見てアンドロイが、舌打ちをした。

「な、なんだこれは……いったい何なんだこれは!」

 狼狽えながら、必死に何が起きたのかを理解しようとする。

 だが一人は錯乱し、頭を抱えながら蹲る。

 ベラが、満面の笑みを浮かべながらフォロリスに尋ねた。

「ねえフォロリス。あいつら、私一人で殺していい? ねえ、いいでしょ?」

「別にかまわんが……綺麗な状態で殺してほしいのなら、そういえばいいのに。

 こっちも出来るだけ、傷が無いように殺すよう努力するぞ?」

 指を鳴らしながら、ベラが答える。

「いいえ、そういうのじゃないの。

 別に死体なんて、千切れてようが腐ってようが私はいいの。でも、久しぶりに……ね?」

 そう、ベラは欲しているのだ。

 久しぶりに、人を斬る感覚を。

 長い間人を殺せなかったベラにとって、これはまたとないチャンス。

 彼女にとって死体は、ありすぎて困る事は無いいわば資源のようなもの。

 故に彼女は欲している、強欲に。死体を。殺すあの感覚を。

「まあ、いいだろう。殺せ、ただテントは傷つけるなよ? ちょうどいい駐屯所になるんだからな」

 フォロリスが許可をすると、ベラは月のような美しい笑みを浮かべ、ワイヤーを取り出す。

 蛇のように不規則に動き、太陽の光に照らされるワイヤー。

 張り裂けそうな笑みを浮かべながら、未だに狼狽えているエルフの集団に突っ込んでいく。

 光に照らされているワイヤーが、その後を続く。

 まるでベラに、金色の薄く長い羽根が生えたようだ。

「ヒッ、何だ貴様……来るな、来るな!」

 ベラに気付いたエルフが剣を抜き、ベラに斬りかかる。

 ベラはそれにいち早く反応し、剣にワイヤーを括り付け、天高く放り投げる。

 落下する剣は、錯乱し頭を抱え蹲っているエルフの頭に突き刺さった。

 声もあげず、口と鼻から大量の血を垂れ流す。

 するとベラは、その死んだばかりのエルフにワイヤーを括り付け、人形のように操る。

 死んだエルフが、生きているエルフに襲い掛かる。

 だというのにベラは、操っている兵士の方を見ずに、巧みにエルフの剣を避け続ける。

 その横から、死んだエルフが斬りかかってくる。

 エルフ達はまるで、二人相手をしているような錯覚を覚えた。

 実際は、注意が散漫しろくに戦えたものではない。

「はい、残念」

 どん、と横から死んだエルフが、ナイフを両手に持って突っ込んできた。

 脇腹あたりに突き刺さり、血が垂れ流される。

 当然彼らは狼狽えた、狼狽えてしまった。

 獲物の前で隙を見せるというのは、=死に繋がる。

 ベラはワイヤーを全員の首に括り付け、勢いよく締め上げる。

 果物を摘み取るかのように、首が飛ぶ。

 そしてごとりと音をたて、首が落ち血の雨を降らす。

 鮮血に彩られ、草原を赤く染め上げる。

「……ねえ、フォロリス君」

「ん、なんだ?」

 先ほどまで静かに観戦していたアンドロイが、フォロリスに話しかけてきた。

 アンドロイは尋ねる。

「よくよく考えたらさ、駐屯する意味無いんじゃないのかな? どうせ、今日中に攻めるんでしょ?」

「……あー、いや、一日ぐらい休んだ方がいいんじゃないか? しっかりと休息を取ったり、な?」

 何としても、テントを使わせたいフォロリスは適当な返答をする。

 確かに、フォロリスの言う通り一日ぐらいは、身体を休めてもいいだろう。普通の兵士なら、思い切りそれを喜ぶ。

 だが第四十四独立前線部隊は━━フォロリスの大隊はそれよりも、早く殺せるのを待つといった集団だ。

 いわば、普通ではない。いや、言葉では言い表せないぐらい異常だ。

 誰もが口をそろえて、異常だと言うだろう。

 だから、兵の一人が不満を口に出す。

「今日は殺せないのか……」

 何処となく悲哀に満ちた声。一応彼も、銃をエルフ共にぶっ放した一人なのだが。

 アンドロイがほらな、というようなドヤ顔をフォロリスに向ける。

「……解ったよ、んじゃ今日は休みなしに、あの国を攻め落とすぞ。いいな野郎共!」

 兵士達から歓声が上がる。

 ワイヤーを死んだエルフの身体に括り付け、引きずりながら戻ってきたベラは何事かとアンドロイに尋ねた。

「あー、今日攻め入るって事になったから。だから、あのテントもう、使わない」

「あ、そうなの」

 少し残念そうに肩を落とす。

 一応テントを傷つけずに頑張った身としては、くだらない苦労させやがってというものを思ったりもする。

 だがすぐに思考を切り替え、もっと殺せると思い直す。

「よし、それじゃとっとと行くわよフォロリス!」

「いや、少しぐらい休憩しようよ。少しは僕の事を気遣ってよ~」

 ヘタヘタと地面に座り込むアンドロイを睨み付けながら、ベラは舌打ちをした。

 うっ、と怯むアンドロイ。当然だ、一人で小隊長をしている化け物相手に睨まれたとあっては、まるで生きた心地がしないだろう。

 ふと横を見ると、フォロリスが笑っている。

 アンドロイが、ベラ相手に何も言えず、今にも泣きだしそうな顔をしていたからだ。

 フォロリスは笑いながらも、ベラを制す。

「まあいいじゃねえか、ベラ。奴らは何処にも逃げられはしないさ」

「どうしてよ、裏門があるかもしれないじゃない!」

 ベラの意見はもっともだ。

 裏手に回れば、もしかしたら入口があるかもしれない。誰もがそう思うだろう。

 だが、フォロリスの予想は違った。

「いや、裏門なんて無い。正門からしか入れない」

「どうしてそう言い切れるのよ、フォロリス隊長?」

 ベラが厭味ったらしく言う。

 彼女にとっては、逃げられたとあっては一大事だ。

 彼女にとってここまで同行したのは、死体を得る為だから。

 獲物に逃げられては元も子もない、ただの骨折り損のくたびれ儲け。

 フォロリスは、ベラの嫌味に全く反発もせずに答える。

「恐らくあの国は、こいつらと交渉か何かをしていたのだろう。 

 だが、俺たちがここまで来るのに見た街も村も無い。という事はつまり、こいつらは奥から来たという事になる。

 だというのに、何故わざわざ遠回りまでして、ここに駐屯すると思う?」

 ベラは顎に手を当て、少し考える。

 そして、ハッと何かに気付く。

 フォロリスはそれを見てニヤリと笑うと、説明を続けた。

「そう、現国王はこいつらを信頼していなかった。

 となると、こいつらが攻め入ってくる可能性のある裏門は作らず、入口を正門だけに狭める」

「それによって自然に距離を開かせ、物資の補給に時間をかけるようにしたって訳だね。フォロリス君」

 エルフの腕をもぎ取り、得意げな顔をしているアンドロイに思い切り投げつけるベラ。

 スコーンと音を立て、後ろに倒れ込む。

 それを見て兵士の中から、笑いが漏れた。

「ベラちゃん、これは酷くないかな? 結構痛いよこれ、というか血が……僕の一張羅が」

「別にいいんじゃない? 風呂だって入ってないのに、そんなの気にしなくても」

「でも血って、付いたら痒くなるものだよ? ねえ、フォロリス君」

「まあ、確かにな」

 服に付いた血の染みを憎まし気に見つめながら、フォロリスに同意を求める。

 海水に浸かると痒くなるように、血が付くと痒くなるものだ。

 海水の場合も血の場合も、痒くなる原因は塩分にあるのだから。

「テントの中に、着替え程度はあるんじゃないのか? 着替える時間ぐらい、待つぞ?」

「本当に? ありがとう、フォロリス君」

 アンドロイは感謝の言葉を言うと、そくさくとテントの中へと入っていく。

 しばらくして出てきたアンドロイは、全身緑色の服に身を包んでいた。

 ベラの「ダッサ」という一言に、兵士の一人がくすりと笑った。

姫様「ねえアカマイ」


アカマイ「はいはい、何ですか姫?」


姫様「毎日同じ服ばっか着てるけど、それしか持ってないの?」


アカマイ「いいえ、同じような服をあと二着程度……」


姫様「えっ、それだけ!?」


アカマイ「ええ、おかげで選ぶのにわざわざ頭悩ませずに済んで楽です。姫様もどうですか?」


姫様「いえ、私は遠慮しておくわ……(アカマイ、お洒落に気を遣えなくなったら、女としては終わりよ)」


 To Be Continued!

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