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魔石と殺人狂  作者: プラン9
プロローグ
2/82

第弐話 文献漁り

 廊下に朝日が指し、廊下を明るく照らす。

 ここ屋根裏でも勿論、その影響で普段より二割は明るかった。

 その光を受け、綺麗な黒色の髪が綺麗な光の筋を作る。

 その髪の持ち主は扉を、四回ノックした。

 一……二……三……四秒ほどして、扉から「どうぞ」という返事が帰ってきた。

 その声を聞き女性は、扉を開けた━━。

「おはよーっと」

 フォロリスは、頭をかきながらアカマイに朝の挨拶をした。

 何故かまわりには布団が、彼を覆うかのように落ちている。

 女性はそれを隅に片付けると、女性はその男性に挨拶をした。

「おはようございまーす、フォロリスさーん。

 では早速、今日はみなさんに自己紹介でもしてもらおうかと思いまーす。

 皆さん一部を除いて優しい人ですよー。副隊長さん」

「へいへい……は、副隊長……?」

 その青年━━フォロリスは、目を大きくし驚いた。

 何故なら、昨日はそのような話をしてなかったからである。

 そう言って女性に質問しようとすると、「だって言ってませんもん」と反ってきた。

「まあとりあえず、朝の食事と行きましょ」

「……朝は食わない派なんだけどな……」

フォロリスはそうボヤくと、女性は「決まりですから」と言った。

「……面倒な決まりがあるもんだな、アカマイ」

アカマイと呼ばれた女性は、ボーイッシュな女の子かのように明るく笑った。


 食堂、長いカウンターテーブルに色とりどりの調味料が置かれている。

 勿論今は大分と賑わっており、その調味料が見えるのは数個ほどであった。

 アカマイは、手書きの食券を持って、キッチンへ向かった。


 フォロリスは適当な椅子に座ると、そこに新たに来た兵士のような人が取り囲むかのように座った。

 服は何処ぞの僧侶のような、腰に細長いレイピアを付けていた。

 その中の一人が、フォロリスの肩に手を置き、言った。

「なあ、お前第四十四部隊の副隊長になったんだよなぁ? ちょっとうちの隊長さんがお前に用があってな……。

 まあ、飯食ったら訓練所に来い」

 フォロリスにそう伝えると、その兵士たちは食堂を出て行った。

 それと同時に、アカマイが食器を危なっかしい足取りで持ってくる。

「お待たせしましたー」

 その食器には、見た事のない植物が添えられたサラダと、見た事のない真っ赤な肉の丸焼き、あと米が置いてある。

「一応聞くが、この植物と肉は?」

「サラダの方は、『アカマイとベジタルキャットのサラダ』と、『ピッグマウスの塩辛焼き』です。あと米」

「朝から肉……」

 朝から肉を食べる事に軽く抵抗があるフォロリスは、サラダのみを食べ、塩辛焼きは残した。

 それを勿体無く思ったのか、アカマイは塩辛焼きを一口で食した。

 それには流石のフォロリスもびっくり。

「ところで、さっきの人たちはなんだったんだ?」

 さっき、フォロリスに絡んできた兵士たちが何者なのかをアカマイに聞いた。

 すると、何故か某ケンダマとか使うアニメの説明する人みたいなテンションで言った。

「説明しましょう! 彼らは昨日話した第十七部隊の皆さんです。恐らく、今の貴方のポジション、要するに副隊長はその人の弟さんがやってたんですよ。

 まあ不良だったので、すぐ辞めさせられましたが……多分、貴方がその弟さんポジに居るのが気に食わないんじゃないんですか?」

「なるほど、殺しちゃってOK?」

「OKですね、あの人も面倒事しか起こしてないですし、相手から決闘を申し込まれた場合事故で片付けられますし……」

 それを聞くと、ご飯を飲むかのように掻き込み、二、三回ほど咀嚼して飲み込んだ。

 その後、人を殺すのが楽しみすぎるのか、若干スキップをしながら訓練所へ向かった。

 が、すぐにアカマイに止められ、

「場所知ってんですか?」

 と、言われた。

 勿論、フォロリスが昨日来たばかりなのに知ってるはずもなく……。

「案内してくれる?」

 その声は、いやに弱々しかった。


 学校の運動場二個分はありそうなくらいの砂が敷き詰められ、隅に三角コーナーのような緑の芝生がある。

 その芝生に真剣を突き刺し、屈強そうな男性が仁王立ちしていた。

 フォロリスはそれを見、「どうぞ殺してくださいと言ってるようなものだな」と呟く。

 アカマイはそれに対し、「基本みんなあんな性格ですよ」と返した。

 それを聞き、「大丈夫かこの国、戦争にむいてないぞ」と呟くと、「だから貴方を召喚したんですよ」と返す。

 その言葉にフォロリスは少し、この国の兵士に大して同情した。

 無能な上司というのは時として、強大な敵より厄介なのだ。

「貴様、私のアカマイさんと喋るな! 貴様がアカマイさんに喋るだけで吐き気がする!」

「……あれが隊長さん? えらく弱そうだな」

「貴様、私を愚弄するか!?」

 芝生に突き刺した剣を抜き、フォロリスに剣先を向けた。

 芝生が少しばかり宙を舞う。

 それに対抗するかのようにフォロリスは、袖から取り出した短剣を二本取り出し構えた。

「ふん、そのような短い短剣で何が出来る。暗殺者でももう少し長い物を使うぞ?」

「そう思うのなら、試してみるといい」

 アカマイは、フォロリスが負けるはずがないと信じていた。

 否、そうでなくては彼女が困る。苦労して召喚した意味が無くなるのだ。

 隊長さんはそれに気づいていたが気にせず、書類をフォロリスに突き付けた。

「ふん、青二才が!」

 隊長さんがフォロリスに一気に近づき、大剣を横に思い切り振るった。

 その風圧でアカマイの服が少し揺れ、芝生が舞う。

 だがフォロリスはそれを楽しむかのように破顔しながらしゃがみ避け、右手の短剣で腹を突いた。

 が、その瞬間隊長さんの身体が赤く光った。

 すると短剣が折れ、地面に突き刺さった。

「怖い怖い、なんのインチキ力だァこれは?」

「ふん、同じ兵士の好として教えといてやろう。先ほど使ったのは“魔石”によって我が呪文を強化したの━━━━」

 だ、と言う前に隊長さんの右胸に短剣が突き刺さっていた。

 血が隊長さんの服を赤く染め、紅い雫が地面に落ちる。

 その様に声が出ない隊長さんに刺さった短剣に、右手を置き……

「なァに、運が良ければ死にはしない。隙だらけなのがダメなんだぜ? ヒャハハハ」

 血に染まった短剣を容赦なく引き抜くと、噴水のように血が出た。

 素早く、隊長さんの服を引き裂き傷口に押し当てる。

 汗が染みてきたのか、隊長さんは悲鳴を上げた。

「うし、んじゃ“魔石”の詳しい説明と“呪文”の説明頼むぞ」

「そういうのは図書室で調べてください。食堂の隣にありますから」

「了解」

 そう言うとフォロリスは、血だらけの手で頭をかきながら図書室へ向かった。

 フォロリスの血に染まった後ろ髪を、隊長さんは恨めしそうな目で睨みつけていた。


 大量の本が並べられた棚から、“魔石の歴史”と書かれた本と、“魔術の使い方”と書かれた本を手にとった。

 幸いにも文字は、フォロリスが昔勉強したドイツ語で記されていた。厳密に言えばよく似た文字ではあるのだが、それも方言のような違いがあるだけだ。

 血は図書室へ来る途中に乾いたので、本に血は付いていなかったが、地面に血の跡が出来ていた。

 図書員のような人は、それを見て嫌な顔をしていたが、気にせずに魔術の本を開く。

「“魔術の手に入れ方”ねえ。二十一ページまでずらっと目次が書いてるって可笑しいだろ」

 そう呟くと、二十二ページを開く。

 するとそこには、このように書かれていた。

「なになに、“魔法はまず、悪魔か神と契約をしなければなりません。一般的には神と契約しますが、戦などに使う場合は悪魔と契約したほうがいいでしょう。

 しかし、悪魔と契約した場合ある宗教の人間に迫害され、酷い時は殺されるかもしれません。”……契約、ねえ。面倒事は御免被りたいが……ま、続き見るか」

 フォロリスの独り言が予想外に大きかったのか、図書員はフォロリスに注意した。

 するとそれを軽く受け流し、本の続きを読んだ。

「“どちらの方と契約するにしても、まず“名の契約”をしなければなりません。人間は生まれた時から使える魔法が決まっているのです。”

なるほど、それであの隊長さんはあんな魔法なんか」

 つまり屈強そうな名前なんだろうな~、とフォロリスは考えていた。

 ……あれ、じゃあヒトラーって言えばガスとか使えんの? と考えていたりもしたが、勿論出来る訳がない。

 というか、やったら死ぬ事は確実だろう。なにせフォロリスは頭以外は普通の人間なのだから。

「で、契約はどこですんだよ。そういうの書いとけよ本当に……」

 フォロリスは読んでた本と、魔石の歴史を机に置いたままで図書室へ出て行った。

 廊下からフォロリスの足音が、だんだんと遠くなっていき、消えた。

 すると図書員の一人は、フォロリスに対しぼやく。

「血が本についたらどうすんだおい」

「血については何も言わないんだ……」

「そういうのは気にしない、それがクールな人間って奴だ」

 図書員の一人は、ケケケと笑った


 アカマイは黒い髪の先っぽを見つめながら、フォロリスの帰りを待った。

 すると、フォロリスの独特な冷たい、乾いた声が聞こえた。

「待ったか?」

「ええ、暇でしたよ」

「そうか、すまんな」

 フォロリスはアカマイに謝りながら、自分の部屋へ向かった。

「あー、ちょっと待ってくださーい! 隊長さん、財布と地図持ってきてくれますか?」

「私の名前は隊長さんではないですよ!?」

 アカマイはフォロリスを止め、隊長さんに財布と地図を持って来させるよう頼んだ。

 少しばかり愚痴愚痴言いながら、訓練所へ歩いていった。布に吸収しきれなかった血の跡が地面に出来る。

 姿が見えなくなるのを確かめると、アカマイはフォロリスにこう話した。

「実は、貴方に今日は魔法も覚えてもらおうかと思うんですよ」

「なるほど、んでどうすんの?」

 フォロリスの疑問に、アカマイは何故か自信満々に魔法について説明した。

「よくぞ聞いてくれました!

 魔法は一応、“世界法律”上神殿で手続きとかメンドクサイのやらなきゃいけないんですよ。

 ですがこの国はそういうの無視して、城の中で手続きをするんですよ。まあ一応違法ですけど……国家ぐるみなら犯罪じゃありません。

 まあそれは夜にやるので、昼の間は“第二十二~四十四独立法外前線殲滅兵士部隊”の皆さんに挨拶をかねて街案内でもしようかと思います」

「本音は?」

「魔石の解析も怠くなったので、今日は休みですからハメ外しですよ」

 その言葉と同時に、隊長さんが戻ってきた。

 隊長さんはフォロリスを強く睨みつけながら、アカマイに財布と地図を渡す。

 それを「ありがとう」と言い受け取ると、フォロリスの手を握って街へ向かって行った。


 大理石の敷き詰められた部屋……とはまた違い、虎の毛皮が敷き詰められ、右上に鹿の剥製が掛けていた。

 巨大なベッドの隣にある机に、数十枚の紙とピンクの髪を垂らし、口から涎がたれている少女が居た。

 蛍光灯のような光が、涎を光らせる。

「ムニャ、猫しゃん……」

 そう寝言を言うと、少しばかり笑った。

 その時に少しばかり顔が動いたのか、いつの間にか右頬の下に書類が見える。

 それに少女の涎が滴れ、紙を濡らした。

 その姿に、ニマニマと笑ったメイドさんが、少女の肩を叩いた。

「姫様、こんなところで寝てはお体に触りますよ」

「ニャッ!? い、いつから居ましたか?」

 勢い良く少女は、顔を起こす。

 涎で濡れた書類が頬に引っ付いていた。

「うーん、猫しゃんあたりからですかね」

 メイドさんがそう言うと、姫様は顔を真っ赤にしメイドさんをポカポカ殴った。

 勿論、力は全然ないのでダメージは無に等しい。

「(可愛いな~、姫様)まあまあ姫様、私だって寝言聞かれたことあったじゃないですか」

「そ、そうですけど……で、何のようなんですか?」

 右頬についた書類を剥がし机に置いてあった書類の上に置き、涎を拭いて一体何の要件なのかを聞いた。

 それに対し、メイドさんは数回ほど咳き込んだあと、フォロリスとアカマイが城下町へ出掛けていったことを伝えた。

 その言葉に姫様は、少しばかり不安になった。

「問題事、また起こさないかしら?」

「さあ、あ。そう言えば四十四部隊に会いにいくとか言ってましたね」

 その言葉に姫様は、「もう嫌、絶対に問題事起こすに決まってるわ!」と叫んだ。

 その姫様の大声に、耳をふさいだメイドさんが手を耳から離し、姫様に訪ねた。

「そう言えば、どうしてフォロリス様をこの世界に呼んだんですか? まあ、我が国は負け続けですけど、別にそこまで戦力が無いって訳じゃ……」

「ああ、それね。実は……」

 姫様は、先ほどの涎でベタベタになった書類を、メイドさんに渡す。

 それは昔召喚された勇者の伝記が記された古文書であった。

 それを読むと、メイドさんは納得したかのように頷いた。

「なるほど、正義の勇者様ねぇ……。いや、おかしいでしょ!?」

「でしょ? たった一人で何人もの盗賊、山賊の集団を壊滅に追い込んでるのよ。明らかに異常だから、私たちも、彼らと同じ世界の住人を呼んだって訳」

「でも、これ見るからに“魔宝石”をふんだんに使った武器で戦果を上げてますね。我が国の魔鉱脈では“魔宝石”を創る技術がありませんからね」

 メイドさんは書類に貼ってあった写真を切り出すと、それを手に持ちならが姫様の部屋を出ていった。

 メイドさんが居なくなったあと、姫様はベッドに飛び乗り

「苦情が来る前に、少しでも睡眠とっとかなきゃ。あの町の人の説教、長いんだよね……」

 そのまま眠ってしまった。

 窓から風が吹き、書類をそこらへ撒き飛ばす。

 そのうちの一枚が姫様の顔の横に落ちた。

 その書類には、こう記されている。


 “イス国に異世界から召喚されたとされる人間、クドウ シンヤは七つの盗賊部隊を驚異の身体能力で壊滅さえ、摩訶不思議な呪文を唱える。

 その呪文は自身の味方と判断した者には無害で、それ以外と判断された人間には極めて有毒なガスを霧のように噴出すると言われている。何故なら、その霧が出ると口から噴水のように血を放出するからだ。

 更に、武器はイス国の魔鉱脈から採れた魔宝石をふんだんに使った魔剣を装備、その剣に切られると、ある者は傷が治り病が消え、ある者は三日三晩痛み苦しむと言われている。

 その武器を私、ジァームット・A・フレザーはある弱点を発見した。

 それは━━━━”

「それは」のあとは、インクで消され読めなくなっていた。

あー、前回は全く書かなかった後書きですが、今回は少しばかり解説などを書こうかと思います。


まず、魔宝石とは?

魔石にも宝石のような物があってもよくね? という考えから生まれたアイテムですね。

これは大変貴重なため、魔鉱脈を荒らされる危険もあるため一般書物には載っていません。よってフォロリスはその宝石を知りません。あ、それは次回書けばよかった。


次に、イス国は適当に調べたらあった神話の国の名前です。

では、次回の次回の次回あたりに戦争が出来るかな?


5/13 無駄な漢字をひらがなに変更、描写追加

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