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魔石と殺人狂  作者: プラン9
第一章~王国崩壊~

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第十九話 ほのぼのとした地獄絵図

 フォロリスがアンドロイの肩を借り、なんとか第四十四独立前線部隊の皆と合流しようと歩いている。

 アルテミアのとの戦いは終わり、朝日が昇っていた。

 村は、もはや元の面影さえ思い出す事が不可能と感じるほど崩壊してる。

 そこらに転がる死体には、早くも蠅がたかっており、あの時追い払ったのと同じ種類とみられる野犬が歯肉を貪っていた。

 もはや悲鳴すら聞こえない村の中、フォロリスは男の頭でキャッチボールをしている二人組を見つける。

「おい、何やってんだテメェら」

「あっ、隊長と副隊長。いやー、殺る事殺っちゃったら何もやる事なくって……なあ、義弟?」

 眼鏡をかけた、細身の青年は弟に尋ねる。

「全くだ義兄。この村の男は弱すぎて話にならん、女なんぞ論外だ。所でフォロリス副隊長、その左足はどうしたのですかな?」

 二人の青年は、揃ってタキシードを着ている。

 その二人の中の、弟と呼ばれた男はフォロリスの左足について聞いた。

 フォロリスの見た目が、まるっきし変わった左足についてだ。

 無論誰もが気になるだろう。東洋人の肌とはまるっきり違うからだ。

 フォロリスは第四十四独立前線部隊の中で一番強いと言われているからだ。

 フォロリスはアンドロイの肩に手をかけながら、右袖で口を拭ってから、何故左足が無くなったかと語りだした。

「まっ、手短に言うと……勇者みたいなんと戦って足切られた、なので特価交換的な意味で足を頂いたという訳だ。他にも結構な収穫があったがな」

 そう言うとアンドロイは眼を何処かに向けながら、人の皮を取り出した。

 アルテミアの皮だ、左足の皮は、切られたかのように無くなっている。

 もっとも、実際に切られたのだが……。

「ほう、えらく綺麗に剥げたんですな。で、それをどうするのですかな?」

「無論利用する、潜入捜査にな。

 奴の実力からして、あの国との関わり合いが無いというのはありえない……んだと、思うんだ」

「……君、これ持っといて」

「はあ、別にいいですが……」

 兄者と呼ばれた男は、アンドロイからアルテミアの皮を受け取る。

 アンドロイは嫌そうな顔をしながら、手を虚空で何度も何度も振るう。

「よくもまあ、こんな物持てるね」

「その前に、だ。義兄弟達、聞きたい事はあるだろうがちょいとばかし待っててくれ」

 二人の青年は互いに顔を見合わせると、無言で頷き、地面にアルテミアの皮を置き、キャッチボールを再開した。

「お前さ、あの時ナイフ大量に持ってたじゃん?」

「うん、持ってたよ。ナイフは得意だからね」

「使った事無いって言ってたじゃん」

「うん、だって実戦じゃ使わないもん」

 フォロリスは、アンドロイが何を言っているのか全くもって解らなかった。

『得意』と言った筈なのに『使った事が無い』、更に『実戦じゃ使わない』と……。

 まるで、遊びとかに使っているような物言いだ。

「つまり、どういう事だ?」

「だ~か~ら~、言ってんじゃん。乗馬が趣味の人が合戦で活躍出来ないように、僕のナイフ投げも趣味の範囲。しかもあの時渡されたのは一本だけ、投げれば抵抗する手無く殺される。でもナイフを刺すという目的で使った事は一度もない。OK?」

「……なるほど、確かにな」

 ナイフ投げという戦術は、実はあまり実践的な戦術ではない。

 戦争や殺し合いで使う際、大抵は毒を塗ったりしてから使用するのだ。

 そうすれば掠っただけでも、敵を殺す事はあるだろう。

 だがそれ以上に、敵に武器を与えてしまうも同然の行為である事は明白である。

 普段のフォロリスのように、ナイフにワイヤーを付け瞬時に回収すれば敵の手に渡る事は無い。

 つまり、ナイフ投げは実戦向きではないという事だ。

「おい、義兄弟達。話は終わった、行くぞ」

「はぁ、何処に?」

「……爆弾を、持ってるか?」

「はい、此処に……それが何か?」

 義兄がタキシードの下から取り出した爆弾をフォロリス達に見せる。

 フォロリスはそれを受け取ると、次に火が無いか尋ねた。

「それなら、義兄が魔法を使えます」

「んじゃ、はいこれ」

 アンドロイは指輪に加工された魔石を麻袋から取り出し、義兄に渡した。

 義兄はそれを受け取り、右手の人差し指にはめた。

「それあげるから、頼んだよ」

「了解しました、……えーと……隊長」

 フォロリスの隣で、アンドロイが立ったまま何やらブツブツと言っている。

 よく耳を澄まして聞いてみると、『名前覚えてくれないんだ』という言葉を連呼している。

 フォロリスはそっと、アンドロイの肩を軽く二回叩いてやった。

「さて、皆下がって下がって。起爆させるぞ」

「了解。おいアンドロイ、鬱になるのはここから離れてからにしろ」

「……そうですよ、僕は名前なんて全く覚えられないような男ですよ……」

「駄目だこりゃ。おい義弟、こいつと一緒に俺も運べ」

 義弟は頷き、アンドロイを押しながら爆弾から距離を取った。

 すると義兄は、何処からか取り出した油でギトギトとなった枕を死体の上で絞り、、転がっていた首無しの死体に浴びせる。

 油によってテカテカとなり、日の光が反射している。

「……ついでに、死体も処理しときます?」

「それはいい提案だ、義弟。まあ後ででいいだろう」

 義兄は死体を爆弾の近くに置き、数メートルほど距離を取ってから右手の人差し指を死体に向ける。

 人差し指についている指輪が、血のように赤黒く光ると同時に、死体のつま先から火が点いた。

 その火に怯え、少しばかり早歩きで何処かへ行く野犬。

 野犬の姿が小さくなると同時に、大きな爆音が村の中を響き渡る。

 その音に驚き、今度は駆けていく野犬。フォロリスはそれを愛らしくも思いながら見ていた。

 そしてふと、アンドロイの方を見てみると、

「……」

 気を失っていた。

 無理もないだろう、急に大きな音が響き渡ったのだ。

 

 フォロリスはアンドロイを起こそうと、少しばかり強く背中を叩いていると、いつのまにやら第四十四独立前線部隊が全員集まっていた。

 手には金銀財宝、更に古びた紙やらナイフ、変わっているものでは死体を手に持っている。

 以外にも集団行動がとれるのだ。そして同時に、以外と感がいいというのが今日、フォロリスは知った。

「ようし、皆集まったな? 点呼、は面倒だがらやらん……

 さて諸君、お楽しみのところすまないな。まだ遊びたい気持ちは解る、まだ略奪したい気持ちも解る、 まだアブノーマルすぎるプレイを楽しみたいのも解る。

 だが、だがだ。重要なのはそれではない。我々が今日、大量虐殺(ホロコースト)を行ったのは死姦でも、略奪でも、眼姦でもない。この村を占領し、イス国侵略に向ける前線基地とする事だ!

 それは諸君らが、此処へ来た時から理解していると俺は感じている。つまり何を言いたいか、解るか?」

「要するに、誰かグリードへ村占領したって報告してって事」

 横からアンドロイが割って入ってきた。

 フォロリスはそれに対し舌打ちをしたが、話を続ける。

「まあ、そういう事だ。誰か名乗りを上げる者は居ないか?

 無論、提案でもいいぞ」

 フォロリスのその言葉に、大量の針金を持っている中年が手を挙げた。

「俺がさっき見つけたんだが、酒場の地下に奴隷売場があった。

  つまり、えーと、その、あれっす」

「つまり、奴らを使いっぱとすると。名案だ、初期から居る軍団員よ」

 フォロリスはその言葉を聞くや否や、最初から第四十四独立前線部隊に属している団員に、奴隷売場への道を案内させた。

 道中、少しばかり散り散りになり残った数はたったの十名となったが、彼らの中には、フォロリスの背中ぐらいはあるであろう大きさの大剣を持っている。

 フォロリスにとっては、その人材さえ残れば後はなんとかなったのだ。

 散り散りになった部下達には、取りあえず死体をヤってからでいいので燃やしておけと命令し、フォロリス達は今、奴隷売場のあるという酒場の中に居る。

「で、此処の何処にあるってんだ?」

 フォロリスはカウンターに座っている、無しの男と見られる遺体を蹴りどけ、そこに座った。

「確か、酒樽の裏だったっすね」

「なるほど。んじゃ、やるか」

 フォロリスは、アンドロイが持っている麻袋から魔宝剣を取り出し、酒樽をいっぺんに四個ほど切り裂いた。

 切れ目から、紫色のぶどう酒が流れ出、店内に酒の臭いが充満する。

 それに続くかのように、大剣を持った男達が次々に、一振りで八個破壊するといった要領よく酒樽を叩き切っていく。

 酒樽は跡形もなく粉々になり木片と姿を変える。

 中に入っていたぶどう酒が、床に水たまりを作っていく。

「……本当にあるのかよ、これ。

 おいテメェ等、ちょいとばかし退け」

 大剣を持った男達が、瞬時にフォロリスから、酒樽から退いた。

「お前ら、少しは疑問に思わねェのか。

 こんなに酒樽を破壊しておいて、本来ならすでに、床はちょいとした洪水状態になってる筈。

 だというのになってないという事は、床下にあるっつー事だ。

 ……例えばっ!」

 フォロリスは魔宝剣を、思い切り床に突き刺した。

 そして柄を持ち、横に力を入れる。

 するとヒビが入り、床に零れ落ちた酒がそこから外へと排出されていく。

 フォロリスはそれをしっかりと観察し、更に力を込めた。

 するとてこの原理のように、床が思い切りめくれあがり、ついには天井高くまで飛んで行った。

「……こういったところに、空気供給管があったりな」

「相変わらず、感がいいね。羨ましい限りだよ」

 フォロリスの言った通り、床の下に、また別の木で出来た物━━空気供給管があった。

「よし、大剣部隊。思い切り床に大剣を振り下ろせ。力を込め、骨を砕くように!」

 大剣を持った男達は、言われた通りに剣を思い切り振り下ろす。

 ほぼ予備動作なしで、何度も何度も床に剣を叩きつける。

 そして限界が来、床に大きなひびが入り、大きな穴を作った。


 酒場に居た第四十四独立前線部隊が、全員落ちていく。

 フォロリスは、ワイヤーを括り付けたククリナイフを上へと投げた。

はい、今回は短めです。

次は本格的に動い……たらいいなと思っております。

それにしても、ランキングの影響からかお気に入り登録件数が増えてきたような、来てないような……。

やはり、少々修正した方がいいかもしれませんね。

予約投稿で時間が空きますので、その時にでも修正しておきます。


では皆さん、また次回、殺人狂は貴方の後ろに……To Be Continued


補足:なすびさんと絶賛コラボ中の「人間嫌いの高校生」で、フォロリスの声とかアバウトな設定が大体は理解できます。


では今度こそ、また次回お会いしましょう。

To Be Continued

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