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魔石と殺人狂  作者: プラン9
第一章~王国崩壊~

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第十四話 目標達成

 フォロリスとアルテミアがたどり着いた洞窟は入口から入るごく微量の光で薄暗く、フォロリスの左腕から流れた血がぬかるんだ地面の泥水と混ざり合っている。

 フォロリスは不思議に思った、不自然だと。

 この洞窟に居る蝙蝠は何処か、説明出来ない不自然さがある。

 何故そのような事を思ってしまい、たかが蝙蝠に警戒しているのかは、当の本人にさえも解らない。

 だが何かがある、特にこの洞窟の奥に何かが

「フォロリス、奥に行っちゃダメです」

 アルテミアがこの場は危険だと言いたそうな声で、奥に進んでいくフォロリスを静止させた。

 それは即ち、奥に吸血鬼が潜んでいると言っているようなもの。

 もしアルテミアが万が一、億が一の確率でも勝ってしまった場合、イス国侵略計画は失敗となるだろう。

 吸血鬼は生息地がごく僅かで、一つの国に一、二匹程度である。

 故にこの場で殺されると、後の作戦に支障を来すのだ。

 だがアルテミアは違う。村の為に必ず、容赦なく殺すであろう。

 だが今、フォロリスは奥に吸血鬼が潜んでいる事を知らない事になっている。ここで理由も聞かずに奥へ進む、又は静止するのはかえって危険だ。

 今アルテミアに疑われては、フォロリスが生きて帰る事が困難になるだろう。

「何故だ、別に崖があるとでも言うのか……?」

「えっ、そ、そうです。奥は暗いから、崖にでも落ちたら大変ですよ!」

「その点なら問題ない。むしろ俺は、ここで立ち止まっている事の方が危険だと思うがね。

 もし臭いを嗅ぎつけ狼などが現れたら、数の暴力ですぐさま死ぬだろうぜ。醜い骸を残してな」

「でも、まだ狼だったら助かる可能性があります。でもこんなところの崖に落ちたら助けなんか来ずに、餓死してしまいますよ」

 それはフォロリス自身も重々承知している。

 だからこそ、晴れている今行かなければならない。光の届かぬ場所へ、誰も助けなど来ない場所へ。

 もし雨が降れば奥はさらにぬかるみ、足を取られ死ぬだろう。

 故に今行かねば、吸血鬼に出会えるチャンスは無い。

「それでも行く、というのなら……理由を話してもらいたいですね」

「何、ただ単に好奇心だよ。この洞窟の奥には何が潜んでいるのか、何が隠されているのか。男はそれらに興味をひかれる……ごく一般的な、ありふれた十七歳なら尚更だ」

「ただの17歳が腕一本無くしてすぐに理性を取り戻すものですか?」

「……それを言うのなら、嫁入り前の娘が男と行動を共にする方に疑問を持つがな」

 事実アルテミアは絶世の美女、と言っても過言ではない魅力がある。

 もっともそれは上品というものではなく活発そう、俗にいうボーイッシュというものだろう。

 そんな美女が思春期は性格的に抜けてそうだが体は思春期真っ盛りの男性と一緒は、少なくともフォロリスの中にある常識には当てはまらない。

「……」

 アルテミアは言葉が出ないような驚きに出会ったとでも言いたそうな顔で、フォロリスを見た。

「何がおかしい、俺が一般世間の常識を語ったからか? そうだとしたらお前酷いぞ」

「いや、まさにその通りです。というか十七歳というのにも驚きましたよ」

 確かにフォロリスの顔は十七歳には見えない。もっともそんなに老けているという事でもなく、数々の戦場を駆け巡った猛者のような顔立ちをしているのだ。

 そして特徴的な、青年とは思えない老人のような声。十七歳というのが冗談にも思えるぐらいだ。

 何処となく雰囲気も同じように。故にアルテミアは、フォロリスが自分と同い年というのに驚いた。

「……話が逸れたな。とにかく俺は確認したい。昔読んだ本のように、宝があるかもしれないのだったら行くしかあるまい」

 事実フォロリス達にとっては、宝に等しい価値のあるものだ。

 強ち間違ってはいないだろう。いや、今となっては宝以上の価値があると言えるが……。

「……男って、本当に単純ですね」

「だろう? だから利用できるぞ、お前ならいくらでも。俺達はちょっとした事ですぐに女に惚れる、故に簡単に落としやすいぞ」

「そんな酷い事しませんよ。ただ、死んでももう知りませんからね」

「縁起でもない事を言われたら生き残る、大体の世界はそういうもんんだ。死にたいと思ってる奴に限って長生きしたりな」

 フォロリスは笑いながらも、アルテミアの言葉から結局最後まで吸血鬼の名が出なかった事に疑問を感じた。

 彼女の性格からは嘘はつけない。恐らくではあるが聞けば下手な嘘をつくと、フォロリスはそう予想した。

「さて、これが最初で最後の別れの言葉かもな」

 フォロリスは楽しそうに、だがどこか悲しそうに笑った。

 それを聞くとアルテミアは諦めたようにため息をつき……

「不吉な事を言わないでください。……一緒に帰って、パーティーでもしましょうね」

「ははっ、それは楽しみだ」

 フォロリスは笑いながら、洞窟の奥へと進んでいった。

 ぬかるんだ地面にフォロリスの足跡が残った。

 アルテミアはそれを悲しそうな目で見つめながら、一言。

「……馬鹿な人」




 人は常に寿命を延ばし、生きながらえたいという欲望を心のどこかに持っている人間である。

 だがその願いが叶ったとしても、次に人間はこう言うだろう。

「いつまでも生きたくない、好きな時に死にたい。……まさに、長寿の人間が持つ心の中の迷いだ。

故に俺の世界では不老不死が実現出来なかった……のかもしれない」

 フォロリスは、明らかに人工物であろうひし形の発行体が照らす、薄暗い洞窟を進んでいく。

 だが行けども行けども崖のようなものは見えない。

 だがフォロリスは気にせずに進んでいく。

 天上からの水が垂れ、フォロリスの足元の水たまりに落ち波紋を作った。

 フォロリスは大きく息を吸い、大声で叫んだ。

「おい吸血鬼、さっきの俺の考えをどう思う!?

 聞こえてたのなら姿を見せ、俺と語り合おうではないか! 人間のエゴ、そして貴様の悩みを!!」

 フォロリスの声が洞窟内を反響したが、答えは帰ってこなかった。

 フォロリスは今になって、此処は吸血鬼のいない洞窟なのかと疑問に感じた。

 だがすぐに、それは無いと自らの考えに否定の答を出した。

 何故なら先ほどからこの洞窟内を照らしているランプのような物……初心者であるフォロリスにも解るほど、不自然な形をしているのだ。

 もしこんな物をフォロリスの世界で見たら、火山岩から加工済みのダイヤモンドが出たような衝撃を受けるだろう。

 それほどまでに不自然な形をしているのだ。

「これほど奇怪な物も無い、持ち帰って研究したいものだな」

「おやおや、それは困るよ。少年君」

 フォロリスは後ろから、初老の人間のような声が聞こえたので振り返ると、そこには薄い紫色の霧が広がっていた。

 先ほどまで霧は出ていなかったのを疑問に思うと同時に、その霧が一か所に集まり人型になる。

「ほう、俺の誘いには乗らずこの道具に興味を示したら出てくると……地味に俺の心は傷ついたな」

「あははははは、それはそれは大変失礼致しましたっと。

 まあ実際それを持ち帰られたら俺が困るんだよ、大切なコレクションなんだ。穏便に俺は君の腕の怪我を直し、洞窟に居る少女と一緒に村へと送ってやろう」

 人型の霧は道化のように笑いながら、優しい声でフォロリス達を村へ送ると優しく言った。

 無論フォロリスはその言葉に疑った。誰だって疑うだろう、種族こそ違えどこれまで襲ってきてばかりだった魔物に、親切にも村へ送ってあげようと誘いがあったら。

「あはは、疑ってるようだね。まあ仕方ないか、何せ今じゃ教会の無い村や町なんてほぼ無いもんね。

故に奴らの都合のいいように洗脳(きょういく)されても居るし……だろう?」

「いや、道中魔物が襲ってきてね。その時腕を失ったものだから不必要に警戒しているんだ。

 不快にさせてしまったのなら申し訳ない」

 フォロリスは軽く頭を下げる。

 無論心の底から謝っている訳ではなく、礼儀のようなものだ。

「いやいや、別に気にしてないよ」

 人型の霧からの許しが出るとフォロリスは顔を上げ、口を開いた。

 この洞窟にやってきた訳を話すためだ。

「では、ここへ来た理由を話してもいいか?」

「ああ、俺もそれが気になってんだ。是非話してくれ」

 人型の霧は軽く頷いた。

 フォロリスはそれを確認すると、二つ間を開けて話し始めた。

「吸血鬼の血が欲しくてな。なに、ただとは言わない。……なあ、吸血鬼よ」

「……バレてた、って訳か」

 人型の霧は更に一つの場所に凝縮されていき、全身黒い紳士服を身にまとった銀髪の、二十代前半に見える青年が瞼を閉じながら現れた。

 霧が晴れると同時に瞼を開け、紫の左目と赤い右目をした瞳を見せる。

「バレてたのなら姿を隠す必要は無いね。

 で、何と交換してくれるというのかい? 物によっては、君の望みを完璧に叶えよう」

「声と姿にギャップがあり過ぎるんだが……まあいい、交換するものは情報だ」

「君が言うか。して、その情報とは何ぞや?」

「この世で手に入りづらく、もっとも重宝する物だ」

「で、それが俺に何をどれだけ齎してくれるんだい?」

「齎すのは一つだが、それが大きい一つなんだよ」

 作戦の一つでも敵軍が知れば、それを叩くためのすべを簡単に手に入れられる。

 第二次世界大戦中、もし日本が原爆を作る技術を持っていたらアメリカに対抗し、今でも戦争が行われていたかもしれないだろう。

「例えば暗殺とかをする場合だ。地形や死角、罠の配置や暗号、はたまた対象の部屋やアレルギー等を知っていればそれだけで難易度は変わる」

「なるほど。で、その情報とやらは?」

「不意打ちをされないだけだが……一週間後、吸血鬼討伐の為村人がやってくるそうだ。

 恐らくだが教会が絡んでいるものと見られる、これまでそんな話聞いた事が無いんだろ?」

 もしすでに前例があったのなら、村が無くなるかここはもぬけの殻、もしくは獣の巣窟になっている筈だからである。

 そして教会が絡んでいるのは明白だ。

 何故なら態々聖水に触れると死ぬと書かれているのだ。恐らく協会側が裏で手を回し、協会の立場、そして支持率を上げているのだろう。

 そうでなければ、信仰をしない人間からしたらだが、ただの水で死ぬなどと書かれている訳がない。

「……なるほど、ありがとう。おかげで争わずに済みそうだ。別に聖水などは喰らっても何も問題は無いが、痛い目を見るのも合わせるもの嫌だからね」

「そうか。それでは……約束の血を貰おうか」

「上げるのはいいんだけど、その前に何のために使うのか聞かせてもらいたいな」

 誰でもそう思うだろう。

 吸血鬼になる条件はなるための細菌を体内に取り入れるという方法、故に血である必要は無い。

 もっとも、男の唾液から菌を体内に入れるというのはあまり気が進まないだろうが……。

「俺は長生きしたいのさ。この身体が若いまま、人外じみた力を手に入れてな」

「なるほど。あまり気は進まないけど仕方ない、ナイフと容器を一つ貸してくれないか?」

 フォロリスは懐のポケットから透明なガラス製の、ポケットに入るような小さな瓶と果物ナイフを取り出し、瓶の蓋を開けてから吸血鬼に渡した。

 吸血鬼は手首を瓶の上に持っていき、ナイフで切れ込みを入れた。

 普通の人間から見たら、リストカットをしているようにも見えるだろう。

 吸血鬼は切れ目に血を、一dlほど入れるとフォロリスに、ナイフと一緒に手渡した。

 フォロリスは蓋を閉め腰あたりに手を伸ばす。

「あっ、袋無いんだった。どうしたものか……」

「それだったらいいものがある。前豚の魔物を倒した時の皮が食べずに残っていた筈だ、これで即席ではあるが袋を作ってやろう」

 吸血鬼はフォロリスの後ろ側、先ほどまでフォロリスが進もうとしていた場所に移動し地面に落ちている物体、イノシシのような皮を自分の胸元あたりまで持ち上げ、フォロリスに見せた。

「……感謝するぞ、心優しき吸血鬼さん」

「礼を言うのはこっちだ。無駄な血を流させずに済んだのだからな」

 意気揚々と袋を作り始める吸血鬼の後ろ姿を見、フォロリスはほくそ笑んだ。

 数時間後フォロリスは吸血鬼に拵えて貰った袋を手に持ち、アルテミアの待つ場所へと戻る為、ともに洞窟を出た。

今回はいつもより遅れてないですね、ナムです。

毎回この感想欄、何をかけばいいの、はたまたやる意味はあるのかと日々疑問を感じています。

ちなみに今回はいつもより文字数が多くなっちゃいました。いや、他の小説からしたら少ない方かもしれませんね。


さて、話はグルっと変わりますがジョジョの二部、もう少しで最終回突入ですね。

噂によるとDVDの売り上げが映画作れるレベルまで売れたとか……いやはや、やっぱジョジョって凄いんですね。

映画は無かった、でも少し見てみたかった。アニメから入った新参ですが心から思います。


ちなみに個人的な話になるのですが、主人公の声イメージは田中信夫です。誰が何と言おうとですよはい。

おっと、話が逸れましたね。もしそのようなバトンが来たら書くとしましょう、多分来ないだろうけど。


では異世界の生命体説明に移ります。気のせいか毎回タイトルが変わってる気が……。



~吸血鬼~


種族:アンデッド

外見:髪の白い人間


魔物の中でも人間並、又はそれ以上の知能を持ち、岩をも砕く力、刃物の傷ならば20秒で治るほどの自然治癒力を持ち、更に不老不死に近い生命力を持っている。

だが性格は温厚であり、稀に吸血鬼に助けられたという証言もあるが、大体は教会によってもみ消されられ、無かった事になっている。

一般的に洞窟内でひっそりと生活しており、食物は主に他の魔物や植物など、普通の人間と大差ない生活をしている。

だが体の何処からでも対象のエネルギーを吸収し、魔物に変え強制的に従えさせることも可能。

食糧危機や毒を避けて食事をする為、感染者を広げる為進化されてきたと予想されているが、真相は不明

故に古より人間から危険視され、彼らを倒したという逸話、造話等多くを教会から出し支持率を高めている。彼らの弱点とされる聖水もそれが影響しており、吸血鬼にいくらかけても死ぬ事は無い。

だが基本彼らから襲ってくる事は無く、大体は人間側からちょっかいを出す。

洞窟内などに生息しているのはそれが影響とされている。

体内には吸血鬼、ゾンビ特有の菌を持っており、その菌を体内に入れる事で体が大きく変化する。

その際性格はある程度中和されるが、基本その生物の性格が変わる訳ではない。

吸血鬼と人は見分けるのが難しいが、老人のような声をしている。

故に見た目が若いが、その年齢と釣り合わないような声をしているものは吸血鬼と見分けられるが、この方法は一般的にあまり知れ渡ってはいない。



誤字誤植ご指摘ご感想などがありましたら感想欄へ書き込みを。

ではまた次回、To Be Continued

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