第十二話 侵略者と原住民の助け合い
小さな村、イス国周辺の村にフォロリスが居ついて3日になる。
他の隊員達は別々に宿をとり、ある者はバイト感覚で働き、ある者は物乞いで食いつないでいる。
どちらにせよ、あの国との横断に比べればいくらかマシと言えるだろう。
ただ一人、フォロリスは退屈していた。
村と外、ちょうどその境目あたりで石コロを蹴りながら、馬車道を歩いて行くフォロリス。
見渡す限り人の気配は無い、故に暇なのだ。
彼に目的地は無く、目標すらない。まだ完全に兵士の傷は癒えておらず、腕も鈍ってきている。
そして何より、髪が黒くなってきたのだ。
これまでフォロリスは魔物の血やら市民やらを殺し、髪の毛を染めてきた。
だが彼はもう三日、三日も人を殺す所か、血すら見ていない。これまでの生活と大きく違いすぎる。
事実、今の彼の眼に光は無く、心なしか虚ろに見える。いや、誰が見ても虚ろと言うだろう。そう断言出来るくらい、彼の眼から光は無い。
遠くから馬車の音が聞こえた。
フォロリス達の馬は道中、魔物に襲われたり、食べたりして居なくなってしまったのだ。
運よく奴隷売りと出会い、奴隷をいくらか強奪し押させたがすぐにくたばった。
「駄目だ、腕が鈍ってる気がする」
「おやおや、君には元々腕なんて必要ないじゃないか。
でも腕の劣化が気になるのなら、ニュースがある」
フォロリスの後ろに、齧った後のあるリンゴを持ったアンドロイが現れた。
フォロリスは急に現れた彼に、心底驚いた。無理もないだろう、数秒ほど前まで誰も居なかったのだから。
「なんだアンドロイ、言ってみろ。それと、急に出てくるのはやめろ」
「ごめんごめん、脅かすつもりは無かったんだ。
さて、君はどちらを聞く? 悪いニュースか、それともいいニュースか」
アンドロイは手を顔の前に持ってきて、謝罪の気持ちを行動で表した。
フォロリスはそんな彼の行動を無視し、アンドロイの言ったニュースとやらが気になった。
「まずはいいニュースからだ」
「了解。いいニュースってのはしごく簡単だ、吸血鬼の血が手に入る。それも真祖のね」
「真祖である事を強調する必要性を全く感じないのだが……」
フォロリスは能力を使い、遠くに居た人の首を跳ね飛ばした。
別に意味なんて無い、たまに使わなければ能力が鈍るだけ。そのために人を容易く殺す、それがフォロリス、それが彼の持つ異常性だ。
「それで、悪いニュースは?」
「この村で近々、吸血鬼を倒す計画を練っているらしい」
なるほど、悪いニュースだなと、フォロリスは素直に思った。
事実、彼らが今日、此処へ前線部隊のみで来たのにはしっかりとした目的が二つあった。
一つは、この村を前線基地とし他の村、町などを攻め落とすというもの。
もう一つは吸血鬼の血を入手する事だ、これはあの時攻めてきた勇者のような人材が居た場合、保険としてどうしても手に入れなければならない。それほどまでにフォロリスを召喚した国の軍力は、他の国と差が広がっているのだ。
事実これは、フォロリス達が努力に努力を重ねなんとかなるようなものではない。
何故なら、敵国には必ず、二つや三つは宝具、戦争に使うにしては大きすぎる力を持つ道具を持っているからである。
それに対しフォロリスを召喚した国は、他の国と同じような宝具は無い。
唯一あるのは、略奪してきたフォロリスの持っている剣のみ。その剣さえも、他の宝具に比べたら弱いと言える。
それ故にあの国は小さいのだ。他の国と比べ勝っている点は一つ、人体実験に対する躊躇の無さ、ぐらいと言えるだろう。
そのおかげで皮肉にも、敵国を助けているのだが……。
「それは相当不味い、一気に戦局が不利になる」
「一つだけ、作戦がある。最初の手順と違って、全員が吸血鬼にはなれないけれども確実な方法だ」
「ほう、その作戦とは?」
「簡単な事だ。ただ血を手に入れるのなら、彼らと共に行けばいい。後は目を盗んで血を少量でもゲット、以上が作戦だ」
フォロリスは今回は死ぬと予想しつつも、他に作戦が無いのでそれに乗る事にした。
事実下手に手をだしこんな辺鄙な村で部隊が全滅など、笑えない冗談であるからだ。
「まあ、仕方ない。その作戦に乗るとしよう」
「吸血鬼撃退の日は一週間後、武器は買い替えなくて大丈夫かい?」
「問題ない、爪は昨日買ったしワイヤーだってある」
フォロリスはアンドロイに手を振りながら、村の外へ出た。
目的など無く、ただ気ままに歩く。ただそれだけだ。
フォロリスは道端に隠れるように生えていた赤い茸を一つ掴むと、ポケットから瓶を取り出し、入れた。
いつもと変わらない日常、緑の髪の女は緑色のドレスを着て、村を適当に歩いていた。
彼女が人とすれ違うたびに声をかけられ、ある者は果実を渡し、ある者は酒を一緒に飲もうと誘ってきた。
だが彼女は今、それどころではない。
フォロリス達が来てから、死体や窃盗などが増えて来てるのだ。
いや、行方不明者も増えてきている。明らかに彼らが怪しい。
彼女は歩きながら、そのような事をずっと考えていたのだろう。いつのまにやら、緑の芝生がまぶしい草原へと来ていた。
「……結論を速めてはいけない、まだ彼らのせいだと決まったわけでは……?」
彼女はふと、視界の右側に黒い髪の少年を見つけた。
フォロリスだ、彼は数日も殺しをしていない。故に今の髪は黒だ。
「あれは……放浪者の人?」
あの名前は偽名だと聞いただけでわかった。だが何か隠す事情があるのだろうと判断し、彼らを向かいいれたのだ。
彼女がフォロリスの事を思い出した瞬間、土の中から大きな魔法陣がフォロリスの足元に現れた。
フォロリスの体は紫色の光に包まれ、あたりの色が紫色と変色した。
「あれはゴーレム? 何故、こんな所に」
彼女の予想通り、フォロリスの足元から紫色のオーガのような生物が現れた。
身体から紫色の土をボロボロとこぼしながら、ゆっくりとフォロリスの下から現れる。まるでフォロリスが召喚したかのように。
だが実際、フォロリスも驚いていた。無理もないだろう、いきなり大きな物体が現れたら、誰だって驚く。
「この魔力、魔物特融の……! 彼はよそ者だけど、私の父だってよそ者だったんだ。助けなきゃ…!」
彼女はフォロリスの下へ走っていく。
一目散に、他の魔物なんかには目もくれずに。
その走る速度は人知を超えていた、ゆうに六十キロは出てたであろう。
スカートだというのに、このような速度を出す。それはすなわち彼女も、あの時の勇者と同じと言える。
それにまだ、胴体までしか出ていない。
まだ間に合う、そう確信出来た。フォロリスがあのゴーレムと戦うまではまだ間に合うと。
「大丈夫ですか、放浪者さん!?」
「大丈夫も何も、まだ何も攻撃を受けていない。それより、こいつはなんだ?」
フォロリスはゴーレムの頭を、勢いよく踏みつけた。
それがゴーレムの逆鱗に触れたのか、出ていた手で頭を思い切りかきむしる。
こんな状態で身体を安定させていられるはずもなく、フォロリスは頭から地面へと落ちて行った。
彼女はそれを見るや否や更に身体を加速させ、フォロリスに手を伸ばし、頭がぶつからないように自らの身体をクッションにした。
もしこの時、フォロリスを助けていなければどうなっていたか、彼女には解らない。
「だ、大丈夫ですか!?」
「大丈夫だ。というより、何を慌ててたんだ? あの程度の高さなら、骨を少し折る程度だったぞ?」
フォロリスは礼を言いつつ彼女の身体から退くと、後ろ内ポケットから果物ナイフを一本取り出し身構えた。
彼女はそれを見ると、彼女も戦闘の構えを取った。
と言ってもフォロリスの構えとは違い、左手を弓のような物を持つように伸ばし、右手を矢を引いているように後ろへと伸ばす。
フォロリスは彼女を見ると、何をしたいのか解らなかった。
だが他人を気にしてる暇は無く、ゴーレムが下半身まで出てきて、あとは足だけという所でゴーレムは、大きな右手で地面を叩きつけた。
更新が遅れてしまい、誠に申し訳ございません。
さて、この文章はこれで何度目でしょうか。自分もそろそろこの文章だけでゲシュタルト崩壊を起こしそうになりましたよ。ハハ、笑えませんよね……。
さて、どうでもいい後書きはこのくらいにして、ゴーレムの設定とかも次の話で書くとして、何も書く事が無い!
つーか中途半端なところで終わってしまい申し訳ない!
さて、誤字誤植、ご感想がありましたら感想欄にてお願いします。
ではまた次回、いつになる事やら……気長に待っててください




