第十一話 囚人たちと楽しい戦争生活、最初の村
もはや食糧は尽きていた。
あの国のように荒廃はしておらず、青々とした草が辺りに広がっている。
その道なき道を通る馬車は、ひどく絵になっていた。
もしあの時生き残った兵士が全員生きていたら、フォロリス達も少しはこの光景を楽しんだだろう。
予想以上に日数がかかり、彼らはやせ細っていた。
彼ら元チンピラ、殺し屋にサバイバル知識などはない。即ち朝露から水を得るなどはせず、雨が降れば 上に口を向け水を飲み、滅多に出てこない魔物を殺し肉を喰らう。草や木、はたや蛙や虫なんぞ食べない。
「アンドロイ、一体何人、死んだ?」
「さあ、でも君が連れてきた人たちは生きてるよ」
もし、こんなに遠いと聞かされていたのならもっと食料を持ってこればよかった。
悔やんでも仕方がない、今は先を進むしかないのだ。それしか、彼らの助かる道は無い。
そう思い直し歩いていると、村が見えた。
「村が見えたぞ、幻覚じゃない事を祈ろう」
「縁起でも無い事言わないでよ」
もし幻覚ならば、最終手段として仲間を食べる事になるだろう。
フォロリスはそれを頭の片隅に置いておいた。
見えていた村に着いた。此処をこれから、前線基地にするという計画なのだが、一先ずは空腹を癒すのが先だろう。
見たところ木で出来た家が並んでおり、看板などに剣やベッドの絵が描いてある。
フォロリス達は一先ず、イス国の金がいくらあるのか数えてみた。
あの時のスパイ、そしてあの勇者から奪い取った金がいくらかはある。
もっともそれもたかが知れてる、百人以上居る兵士の空腹を満たすのは不可能と言えるだろう。
「だったら、誰か殺して金を奪い取っていけばいいだろ」
一人の元囚人だった兵士がそうフォロリスに尋ねた。
「馬鹿、こんな小さな村だぞ。すぐに噂が広まって、俺たちはすぐに殲滅される」
確かに一人一人は弱いが、数が揃えばどのような人間でも殺せるだろう。
更に此処は、フォロリス達にとっては未知の土地。村人の方が土地勘があるのは当然だ。
いくら地形で戦うのが得意な人を集めたとしても、流石に不利ではある。
ここはいくらかこの土地に泊まり込んで、地形を記憶するのが得策と言えるだろう。
「一先ず飯だ飯、物乞いとかしてこい」
「面倒だな、深夜に盗んだ方がいいんじゃないのか?」
「……それじゃ今のうちに各自散らばって、地形を記憶してこい」
兵士たちは一言もしゃべらずに、敬礼だけをしてそれぞれ散らばって行った。
フォロリスは一つ、アンドロイに頼み事をした。
「アンドロイ、武器の店の場所を記憶しといてくれ。恐らく、此処にも居る」
「居る?……あの時の、イス国からの刺客みたいな人が?」
「多分な。そうでないとこの村は今頃、魔物たちの巣窟になってる筈だ」
道中襲ってきた魔物は、いずれにせよかなりの手慣れでないと倒せはしないように感じるほど手ごわかった。
事実道中、何人もの仲間が死んだのだ。
そして見たところこの村の住人は、目立った武装はしていないし、まるで魔物が居ないかのように平和な村だ。
そんな村をたった一人で守り抜く奴が敵に回ったら、かなり厄介なのは想像に難くない。
もっとも、そこそこの実力を村人全員が持っていた方がずっと厄介ではあるのだが……。
「あら、外来の者ですか?」
後ろから声が聞こえた。振り返ってみると、緑色の長い髪をした、紅い服と白いロングスカートを穿いた、綺麗な緑色の眼をした女性がこちらを興味深そうな目で見つめていた。
この村の人だろうが、手には弓を持っている。
「空腹の為立ち寄っただけだ、弓娘」
「私の名前は、アルテミア。貴方の名前は?」
アルテミスは笑いながら自己紹介をし、フォロリスの名を訪ねた。
恐らく彼らの名は、イス国全域に指名手配されてるだろう。ここで正直に話したとしても、彼らが不利になる事は火を見るより明らかである。
「我が名はゾディアック、隣の奴はジャック・リッパーだ」
「そうですか。ゾディアック、そしてジャック。ようこそ、我が村シザンへ」
女性は笑いながら、彼らに歓迎の意を表した。
フォロリスは彼女の歓迎の意に対し、笑顔で答えた。
だが心の中では、この村を攻め落とす計画をしっかりと練っていた。
それを心の中で計画しながら、宿を探した。他の奴らは勝手に宿を探すだろう。
今回は更新が遅れ、更に文字数がものすごく少なくなってしまい申し訳ありません。
今回も出来が悪いですが、はっきり言って次の話にならないと続きを書く気力が無くなり更新してしまいました。
いやーしかし、無事高校受験も受かりましたし、今年はいい事がありそうです。
ではまた次回。
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