表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
迷宮の王  作者: 支援BIS
第2部 ザーラ
27/44

 挿話5

 





 目の前から広場が消えた、と思った次の瞬間、ミノタウロスは、自分が今までとまったく違う場所にいることを知った。

 別の場所ではあるが、先ほど乗ったのと同じような形をした石に、自分の体は乗っている。

 ただし、先ほどの平らで丸い石が青色に光っていたのに対し、こちらの石は、形はまったく同じながら、赤色に光っている。

 そのすぐ横に、まったく同じ大きさで同じ形の石があるが、こちらは、光らず、灰色にくすんでいる。


 部屋、といえば部屋である。

 周囲の形は、上から見下ろせばいびつな円形、といってよいだろうか。

 床は、ぐにゃりとした感触である。

 うねうねとした起伏を持つ、赤褐色の床に、ところどころ、極彩色の、丸いボールが転がっている。

 ボールの大きさは、まちまちである。

 大きいものは、ミノタウロスの身長に等しい直径を持ち、小さいものは、腰ほどまである。

 形はややいびつで、模様からしても、つぼみ、とでもいったほうが近い。

 よく見れば、床から生えているように見える。

 床も天井も、そのつぼみも、ぼんやりと色とりどりに発光している。


 だが、そんなことより何より。


 この部屋は、尋常な空間ではない。

 空気、と呼ぶには、あまりにねばねばとして重苦しい気体で満たされ、濃密な瘴気が立ちこめている。

 おそらく、何らの抵抗も持たない生き物であれば、入ってすぐに死んでいる。

 今のミノタウロスなら、じゅうぶんに耐えられるが、心地よい、とは到底いえない。


 ぬめぬめした壁は、そのまま天井につながっている。

 どこにも出口が見当たらない。

 ミノタウロスは、壁の様子を確かめようと、乗っている石から降りて、一歩を踏み出した。


 すると、すぐ近くのつぼみが、ぶわっと釣り鐘型に開き、中から無数のうねうねした触手が飛び出して、ミノタウロスに襲い掛かった。


 ほう、面白いものが出たな。


 と、思いながら、ミノタウロスは、触手を片っ端から切り落とした。

 そして、間合いを取ろうと、一歩後ろに下がったところ、今度は、後ろ側のやや小さいつぼみが開いて、攻撃を加えてきた。


 同時に相手にするのはよくないと判断し、ミノタウロスは、一度跳躍して、ここに飛ばされてきたとき乗っていた、平たい石の上に戻った。


 二体の球体捕食生物は、すぐに触手を収め、元の形に戻って、何事もなかったかのように、静まった。

 後ろから襲ってきた触手に、少し左手が触れたのであるが、その触れた部分が、しゅうしゅうと腐食して、いやな匂いを放っている。

 触手の動きは、なかなかに素早く的確で、ぐずぐずしていれば、あるいは、一度にたくさんの相手と闘えば、ミノタウロスといえども、苦戦しかねない。

 そして、相手は、今ミノタウロスがいる中央付近では、まばらであるが、壁に近い所では密集している。


 ここで、人間であれば、まずは、調べたり、考えたりするかもしれない。

 だが、ミノタウロスには、そのような発想はない。

 そこに闘える相手がいて、向こうはこちらを襲ってくる。

 ならば、まず殺す。

 話はそれからである。


 あふれ出てくるどう猛な歓喜に、ミノタウロスは目に笑いを浮かべた。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ