挿話4
かつて、ミノタウロスが、百体目のメタルドラゴンを倒したときのことである。
百階層最外周回廊の、ボス部屋と正反対の位置に、大きな入り口が出現した。
だが、ミノタウロスは、以来ここまで来ていないし、通りがかった人間に、この入り口は見えないようで、そこに入っていく者はなかった。
あれから、さらに三体のヒュドラを、それぞれ違った方法で倒して、ミノタウロスは、回廊を進んでいた。
どこか行く当てがあったわけではない。
少しは体を動かしてみたかった。
少しはあがいてみたかったのである。
そして、ミノタウロスは、大きな入り口の前に来た。
何だ、これは?
ここは、以前、何度も通ったはずである。
しかし、こんなものがあれば、気付かないはずがない。
とすれば、これは、自分がメタルドラゴンの部屋に閉じこもってから出来たもの、ということになる。
入り口から先には、長い回廊が徐々に下りながら続いている。
先は真っ暗である。
この長い回廊の向こうには、何があるのか。
ひょっとすると、ないと諦めていた、さらに下の階層への階段なのか。
ミノタウロスは、見たことのない回廊に、足を踏み入れた。
歩いても、歩いても、回廊は先に続いていた。
かつて、九十九階層から百階層に下りた階段も、恐ろしく長かったが、これは、それよりずっと長い。
じきに真っ暗になったが、優秀な暗視スキルと、各種の探知スキルがあるミノタウロスにとっては、何ほどの障害ともならない。
気配探知の範囲を広げてみる。
しかし、何もひっかからない。
近くに、生き物はいない、ということである。
ミノタウロスは、歩き続けた。
どれほど歩いたのか。
おそらくは、サザードン迷宮の一階層から百階層までの階段を下りるよりも、なお何倍か長い距離を、ミノタウロスは歩いた。
どこにも行き着かない道なのかもしれん。
と、思い始めたとき、先に、ぼんやりと光が見えた。
その場にたどりつくと、小さな広場に出た。
ここからは、どこに行く通路もない。
と、その広場に踏み込んだ瞬間。
広場の中央に置かれた円形の平たい石が、青く発光した。
深い闇の中で、地から照らす青い光に映し出されるミノタウロスの姿は、まるで神話の登場人物のようであった。
あそこに乗れ、ということなのか。
ミノタウロスは判断し、それ以上考えを進めることもなく、無造作に、発光する平たい石の上に乗った。
その瞬間、ミノタウロスの姿は消えた。




