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精霊国の姫君  作者: あかり
第1章
7/25

苦悩

R15です。

18にならないとは思いますが、その辺りを踏まえてご覧下さい。

銀色の二月が輝く頃、エミールは窓辺からその月を見上げ、長い銀の煙管からゆっくりと紫煙を吐き出す。



朝のドレスはすでに肌には無い。

今、身につけるのはその艶やかな肢体を少なく隠すシーツのみ、だった。


「エミール」


そっとそんなエミールの後ろから寄り添い、その銀の髪をかきわけ、うなじに口づけを落とす男。

赤い花びらを散らすようにエミールの身体には彼が付けた痕がさっきまでの情事を映しだす。


「――――――ん」


ゆっくりとうなじに舌を這わすその感覚に、エミールは堪らず声を出した。


「相変わらず、君は綺麗だ、エミール」

「や、」

―――――――さっきまで荒々しくエミールを抱いたその身体は今度は楽しむようにゆっくりとエミールを苛める。


「君の残り香を今日子どもたちに感じた時は驚いたよ、エミール。君の精霊を感じるなんて本当に久しいからね」

「っは・・・・・」

「久しぶりに君を抱きたくて堪らなくなってしまった・・・・。他の奴らに先を越されない様にするのが大変だったよ」


くすり、と彼の口の端が緩めば、エミールは身を捩ってその身体を両腕で押し、距離を取る。


「やめろ、もう・・・」

「子ども、出来るかな」

「出来るわけ、ないだろう」

「―――――エミール、そんなに悲しそうにしないで」

「お前の方が、悲しそうだ」


エミールが彼の頬にそっと触れる。

「サラサを、思い出すんだろう、エミール」

「・・・・・・・・・・」

「君の一番の友人――――――――あの麗しの乙女、サラサを」



遥か遠い、もう悠久の彼方。

エミールがまだ少女と呼ばれていた頃。

火の国の姫、サラサとエミールは同時期に恩恵者――――――ヒュラルの人間たちに加護を与える役目を持ってしまった。

いつも同じ野原を駆け、風と火の精霊たちと戯れていたあの頃・・・。愛する友人だったサラサ。


思わず過去を逡巡し、エミールはきつく瞼を閉じる。

その瞼の上に優しく唇が降ってくる。


「会いたい、・・・・サラサに」

「禁句だ、エミール」

「人間に恋なんて」

「サラサは幸せな人生を送ったはずだよ、エミール」


宥める様に何度もエミールに降り注ぐ唇。

その唇がエミールの唇に辿り着いた時、エミールは艶めく紅い唇を開き、彼の優しい舌を受け入れた。






*********************************************




『いつまで拗ねてるのさ、ミツキ』

「だって、ルーン!にいさまったらあんな嘘を吐いてたのよ」


ルーンがどうでも良いよ、とばかりに腕を突き出し、背中を伸ばす。


『そこまで世間知らずだっとはね。そっちの方が驚きだよ』


呆れた声のルーンにミツキは何も言わず頬を膨らませる。


「だってにいさまがあんな嘘・・・・」

『アデルやユーリが言う事が全てなのか?それが真実だと思ってたのなら問題過ぎ』

「・・・・・・・・」

『ミツキ、一応君は王族なんだよ?自分の目で見て耳で聞き、そして自分の知識と組み合わせて答えをださなきゃ』

「・・・・・・・・そうね」

『君は馬鹿じゃないだろ』


不貞腐れて寝台に寝そべっていたミツキは身体を上げ、ルーンの額にキスをする。


「・・・・・・馬鹿よ」

『添い寝が必要?それとも厚い胸板で泣かせてあげようか?』


ぐい、と漆黒の毛並みに包まれた小さな胸をルーンが見せると、ミツキは眼を大きく開き、笑った。



「ルーン・・・・・かあ様は何を考えているのかしら」

『エミールの考えている事よりも、これからミツキがどうするかだ』

「どうするか?」

『アデルの嘘も解って、今からミツキは色んな男に普通に会うだけさ』


普通にって、何よ。とばかりにミツキがルーンを軽く睨む。

そのミツキの仕草にルーンがちょこんと足を並べて座る。


『変な先入観も無く、他の王族たちに会うだけさ。昔馴染みたちに、ね。楽しく考えなよ』

「・・・・・そう言えば、そうね。皆元気なのかしら」


細い指先でミツキが自分の顎に添える。


『そうそう。そのからっとしてる気質がミツキらしいよ』


ルーンは寝台にその身体を伸ばし、大きく欠伸した。








ありがとうございます。ぺこり。

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