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精霊国の姫君  作者: あかり
第1章
21/25

赤の一族


扉を開くとそこは紅の色で統一された絢爛な部屋。

重厚な家具は質が良いのを窺わせる。


大きな円卓が部屋の中央へ置かれ、そこに座るのは赤の王家一族と、大好きな母。


「かあ様・・・・・」

「ミツキ」


カタリ、と音を立て、エミールが椅子から立ちあがると、その場へミツキは駆け寄る。


「一体、どうして」

「ふふ。朝に遠出をすると言っていたからな。心配だったからつい見張っておった」

「ユーリ兄さまとアデル兄さまは・・・・」

「ああ。余りにもお前の事で五月蝿いので政務を全て押し付けてやったわ」


ニコリと微笑み、ミツキの頭を撫でると、小さく「余り心配をかけるな」と囁く。


「ごめんなさい・・・・・」

「うむ。今日はヒューのお陰で助かったのだから、良くお礼を言わないといけない」

「はい」


母の言葉に小さくミツキは頷く。


「ま、良いじゃねえか。怪我も無く、ついでにこんな美人処が2人も来てくれたんだ。コッチとしては感激もんだぜ?」

「――――――――王、またそんな言葉遣いを」

「良いじゃねえか。久しぶりの再会なんだから」


軽い調子の口調を優しい調子で宥める。

ああ、そうだ。昔と変わらない。


「お久しぶりです、おじさま。そして――――――王妃さま」

「俺はオジサマ、で、リリーには王妃かよ」


ズルリ、と椅子から落ちそうなふりをしながら、火王――――――リューティが不貞腐れた表情を浮かべる。


「おじさまと呼ぶのはミツキさまくらいでしょう。許して差し上げなさいな」


リューティのすぐ傍らに座り、ふわりと微笑むのはその妻であるリリーだ。

花の精霊でもあるリリーはその美貌を愛する夫に向けながら、優しく言葉を紡ぐ。


「ミツキだからなぁ。まぁオジサマで良いよ、うん。ま、座れ」

「はい」


軽く会釈をしながら差された席に座ろうとすると、エミールの傍に座っていたヒューイが席を席を引いてくれた。


「ヒューイ・・・・あ、ありがとう」

「いや。さ、姉上も」


ミツキのすぐ後ろに居たシェーラはヒューイの言葉に頷く。

そしてエミールに膝を付き、ドレスに口付ける。


「シェーラ。美しくなったな」

「陛下。お会いできて光栄です」

「ふふ。嬉しい事を言う」


皆が席に着くと、ドタドタ、と重厚な扉の向こうから足音が聞こえる。

ついで聞こえて来る可愛らしい声達に、ミツキは先程の可愛らしい弟達を思い出し、微笑んだ。



「相変わらず、だな、あいつらは」

「すみません、陛下。まだまだ躾がなってなくて」

「構わん。元気が有って良い事だ」

「――――――――――後でお仕置きしてやる」

「姉上、手加減を忘れないで下さいよ・・・・」

「可愛らしい弟君さまたちでした、かあ様」



重厚な扉が開かれると、会話の種で合った可愛らしい赤髪3人が姿を見せる。


「「「遅れてすみませんッ」」」


声を揃えて3人が直立する。


「何と・・・・・可愛らしい」

「でしょう、かあ様」


にこにこ、と微笑むのは先程の可憐な姫君。

その横に座るのは同じ髪、同じ瞳の美し過ぎる麗人。


瞠目しながらその人を見つめれば、楽しそうな父王が声を掛けた。


「横から順にサーシャ、リューイ、ルーシェ、だ。皆、風の王族の方々だ。エミールと娘のミツキ。あ、エミールはおっかねぇから気を付けろよ」

「――――――どんな紹介の仕方だ、リュー」


呆れた声を出すその麗人。

その横のミツキはくすくす、と実に楽しそうだ。


先程の剣技の時とは違う、優しげな表情。

3人はペコリと頭を下げると、それぞれ席に着く。



「よし。んじゃぁ、始めっか。今日こそお前に勝つぞ、エミール」

「ほざけ。返り討ちにしてくれる」

「見てろよ。――――――者ども、行くぜ!今日は無礼講だ!酒持ってこい!」


リューティのその掛け声で、侍女たちが次々と料理とお酒を運んで来る。


「勝つって、まさか・・・・酒盛りで?」


ミツキの言葉に、火の一族は呆れた様に頷いた。


次々と空けられる杯に、ミツキは黙ってしまっていた。

するするとエミールとリューティが空けて行く。


飲む、空く、注ぐ、の繰り返しだ。

その速さに眼を白黒させてしまっていた。

――――――――か、かあ様、凄い。


そんなミツキの様子に、リリーが「大丈夫よ」と微笑んだ。

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