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精霊国の姫君  作者: あかり
第1章
15/25

赤の姫との再会

ディラスの背中に乗りながら、ミツキは横の幼馴染をつい、と見入った。

久しぶりなのに・・・・いや、久しぶりだからこそ、このヒューイの気安さでこんなに話せるのだろう。


思えば、ヒューイの様な人が、監禁何てするわけ無いし、精霊を奴隷扱いするはずもない。

つくづく、自分の考えの無さを恥じてしまう。


「何見てんの」


こん、とミツキの額を突いてくるこのやんちゃなままの幼馴染に会えて本当に良かったと思う。


リンディンは自分に乗らないと聞くや、静かにその姿を消した。

リンディンに乗るのが怖いとまでは行かないが、先程の様に醜態を見せれば、またヒューイに迷惑を掛けるから、とミツキが言った言葉に納得したように笑顔を見せて。

また練習しようねとの言葉も良かったかもしれない。

消えたとは言ってもミツキが呼べばすぐに出て来てくれるのだから問題は無い。


今はこの竜の背に2人で仲良く座っている。


「ヒューイは相変わらずね」

「ひでぇ。俺も成長したんだぜ」


それは解るわ、とミツキが頷くとヒューイが二の腕を曲げ、力瘤を作る。


「ほら」

「本当ね」


その仕草も全く変わらない。


「ミツキは、その。あれだ」

「なあに?」


急に言い澱むヒューイの顔がまたも紅潮して行く。しかし、ヒューイはそのまま言葉を紡いだ。


「綺麗に、なった、よな」

「・・・・・え」

「いや、あの。そう言うやらしい意味じゃ無くってさ!あの」

「・・・・・・ありがとう」


一瞬きょとん、とヒューイを見つめ、それから言葉の意味を解した瞬間、頬からうなじまでミツキは紅く花咲いた。

ほんのりと染まるその姿はやはりいじらしい。


「今日は、特別、なの。いつもはもっとその・・・・小汚いのよ」

「ぶっ!小汚いってなんだよ」

「今日はちゃんとモクレンやヒバリに・・・・あ、私の侍女たちなんだけどね・・・」


ミツキは知らずにヒューイとの会話にも花を咲かせ始めていた。



『そろそろ着くぞ』

「お。ミツキ、見ろよ。ほらあれが火の宮殿」

「どれ?」


ディラスとヒューイの声に、思わずミツキは初めての火の宮殿を見ようと身を乗り出した。


荘厳な山々の間に同じように聳え立つ紅い宮殿。

質素な造りなのか余り大きくは無い。


「あれが・・・・」

「あっちに有るのが姉上が作らせた修練場。毎日あそこで姉上から稽古を付けられる」


毎日くたくたになるまでだぜ?とヒューイは頬を膨らますが、どこか楽しげだ。

森の間に有る、宮殿から少し離れた場所に有るそれは正方形の形。

ヒューイだけではなく、やはりシェーラにも早く会いたい、と思ってしまう。


「シェーラ姉さま・・・・」


逸る気持ちでついまた身を乗り出すと後ろからヒューイのからかい交じりの声が届く。


「おい、ミツキ、また落ちるぞ」

しかし、その言葉を待たず、ディラスの降下にミツキの身体はまたも大きく揺らめいた。


「あ・・・・・!」

「――――――――ッ!」


バランスを崩したミツキの身体を後ろから大きくヒューイが抱き締め、そしてそのまま引き摺られる。

バクバク、と胸の鼓動が速い。


「こら!ディラス!]

『着くぞ、と言っただろうがっ!』

「・・・・・・あ」


震える指で自身を支えるヒューイの腕に触れる。


「ミツキ、お前なぁ!」

「ご、ごめんなさ・・・」


堪らずヒューイを振り返ると、そこには焦った顔のヒューイの顔がミツキのすぐ傍に有った。少しだけ眉を顰め、切れ長な瞳は怒っているのか鋭い。

睫毛、も紅いんだ・・・・

怒っているであろうヒューイの顔をまじまじと見つめると、何だか急に気恥しくなった。

思わず正面を向いて俯く。

その身体は力強いヒューイの腕にしっかりと抱かれたまま、だ。


自分とは違う男の人の腕。

骨ばったその腕を見ていると更に恥ずかしさが増す。


「気を付けろよ」


俯いた自分の耳元でヒューイの掠れた声が聞こえる。

息が掛かるほど近い、と実感する。

こくこく、と何度も頷いて、でも離して欲しいとは言えなくて。

家族以外の男性に抱き締められる初めての感触にミツキは戸惑いを隠せない。

まるで自分と違う誰かがもう1人、今自分を見つめている様な、そんな初めての感覚。

胸の高鳴りを感じて、ぎゅ、と眼を瞑ると、ヒューイはミツキの身体から腕を離した。


「あ・・・・・」

「ちゃんと、・・・・・捕まえとく。降りるまで」


そう言ってミツキの手を取ると、ヒューイはそっぽを向いた。


「ご、めんね、ヒューイ。あの、ありがとう」

「落ちられたら、姉上に何て怒られるか、解んねえし」


言葉は素っ気ないがその手のぬくもりにヒューイの優しさを感じ、ミツキはヒューイの手を握り返した。

そこへディラスの声が響く。


『降りるぞ、今度こそ摑まってろよ、ミツキ』


ディラスの気遣いなのか、初めて乗った時とは考えられないほどの優しさでディラスは地面に降り立つ。


しかし、ズ・・・・ンとやはりお腹に響く振動に、ミツキはヒューイの手を強く握る。

そんなミツキの肩を空いている方の手でヒューイは軽く捉まえてそっと支えてくれた。


「あ、ありが・・・・」

「ん」


そう言うとヒューイは手を離し、ディラスの背から飛び降りた。

そしてまたミツキに手を差し伸べて来る。

その手をミツキは迷わず掴むと、同じように地面に降り立った。

地面に着く瞬間、ヒューイが力を入れて、そっと降りれる様にしてくれている。


「ヒューイ・・・ありがとう」

「いや」


そう言うと、ヒューイの傍でディラスがまた小さく変化して、ヒューイの肩にちょこんと乗る。

そして呆れ顔でミツキに向かって呟く。


『ミツキ・・・・あんた美人だけど鈍臭いな』

「おい、ディラス!」

「こら、ディラス。何て言い草をするんだ、謝りなさい」


後方からヒューイに重なるように響くその声に、ミツキはハッと振り向く。

緋色の髪をきつく頭上に結え、美しく整った顔立ちをハッキリと出している女性が佇んで、その紅蓮の瞳で優しくミツキたちを見つめていた。

美しくしなやかな痩身を隠すその服も、見るからに男性のもの。しかしそれが思いのほかに似合っている。


「シェ・・・・・・シェーラ姉さま!」

最近文章を長くしているのですが大丈夫でしょうか?

ご意見有りましたらお願いします。

読んで頂き感謝致します。

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