1人でお出かけ 2
朝食の場所に、アデルは居なかった。
扉を開ける前、次兄とどう顔を合わせようか考えていただけに、ミツキはユーリとエミールに気付かれないよう、ほっと息を吐く。
ミツキの今日の姿をユーリは褒めちぎってくれ、母はいつも以上に優しく微笑んでくれた。
それだけでも満足だ。
母や兄たちには昨日の事をもう聞かずにいようと、心に決めた。
ルーンの言うとおり、自分で決めて行くしか無い、そう思うから。
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「・・・・・・・・」
『・・・・・・・・・』
金色の羽毛に囲まれたミツキの聖獣、リンディンはミツキの姿に歓喜しつつも黙りこんでいた。
ミツキの倍以上も有る体躯を小さく抱え込み、リンディンはミツキを覗き込む形になっている。
相対するミツキも何を言えば良いのか解らないのか、リンディンを前に何か言いかけては止める。
「えとね、リンディン・・・・」
両手をもじもじさせながらリンディンに話しかけて来る様子はいじらしいが、途中で止められ続けているのだ。
心の中で小さく溜め息を吐いてしまう。
思い起こせば彼女が自分を使う機会は皆無に等しい。
こうやって訪れては自分の毛並みを優しく撫で、整えるくらいのものだ。
だが今日は様子が違う。
何か言いたげにリンディンを見つめ続けている。
かれこれ半刻にはなろうか。
『どうしたの、ミツキ?』
根負けしたのか、ついにリンディンがミツキに声を掛ける。
「うん・・・・」
『何よ、どうかしたの?あ、解った。何か怒られたの?』
「ん、ちょっと違うかな」
『んもう・・・・・久しぶりに会ったのに、何なのよ』
「うん」
ぐ、と両手を握りしめると、ついにミツキは意を決したのか口を開いた。
「ねえ、リンディン。私を乗せて欲しいの」
『―――――――――は?』
「っ・・・・・だ、から、私を乗せて」
『え、うん。え???何で?』
リンディンは大きな羽を揺さぶらし、驚く。
それほどに彼女の言葉は有り得ない、ものだったからだ。
「うん、ちゃんと話す。だから、リンディン、人型になってくれる?」
『え、うん。』
リンディンの羽が大きく開く。
金色の翼は光にキラキラと輝くと、急速にその光を無くした。
代わりに現れるのはほっそりとした腕。
と、同時にそのまま大きな体躯も縮み、柔らかい女性の身体になった。
金髪の長い髪に、黒い瞳、ほっそりとしたその身体はぼんやりと輪郭を描く。
リンディンはそのままミツキの傍に立つと、「これで良い?」と微笑んだ。
リンディンは雌雄一体の精霊だ。
ミツキが女性の自分を好んだ為だが、割りに自分自身も気に入っている。
「ミツキ。一体全体どうしたって言うのよ?」
「リンディン」
見上げる大きな鳥から自分と同じくらいの背丈になったリンディンの両手を、ミツキはそっと握った。
「お願い。乗れるようになりたいの。どうしても」
感謝致します。ぺこり。