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精霊国の姫君  作者: あかり
第1章
10/25

1人でお出かけ

ルーンが騒がしく聞こえる扉に近付いたその瞬間、不意に向こう側から扉が開いた。


「ルーン・・・・・」

『ミツキ・・・・・・・・』


思わずルーンの顔が驚きに変わる。

困った様にこちらを見つめるミツキ。


その姿はモクレンやヒバリたちによっていつも以上に輝いていた。


無造作に束ねられる髪は一筋毎に美しくカールされ、程良い高さで纏められている。

いつも使っているエミールから贈られた髪留めは控え目にその髪に付けられ、更にその美しい銀髪に色取り取りの花が差し込まれていた。


しっとりと馴染むだろう素材の良い白いドレスは腰の部分から大きく広がって切れ込んでおり、その下に長い脚を隠す服が続く。

大きく開いても全くその足は見えないだろう。

その代わりなのか、腕は全面に出され、隠すものはない。

豊満な胸や、繊細な鎖骨は首元まで詰められて隠されているが、隠されているからなのか余計に纏い始めた色気を感じさせていた。


仄かに化粧を施されたその顔は正に美しい。

嫌みも無く、派手さも無く、ミツキの優しげな表情に良く似合っている。


『・・・・・・・・』

「な、何か言ってよ、ルーン・・・・」


ほうっと見つめ続けるルーンにほんの少し陰りを帯びた表情でミツキが小さく声を出した。

似合わないのは、解ってるのに・・・・。

いつもなら軽口を叩いてくれるルーンについ非難めいた口調になってしまう。



『驚いた』

「え」

『すごく似合うよ、ミツキ。まるでお姫様みたいだ』

「まぁ、ルーンさまったら!素直過ぎます!」

「一応お姫様なんですけど、この際よろしいかと」



ルーンの言葉にモクレンとヒバリたち侍女が飛び上がらんばかりに喜んだ。

彼女たちにとって仕える主人が褒められるのは無上の喜びだろう。


「ほ、んとう?ルーン?」

『本当』


こっくりと頷くルーンは右前足をひょい、と動かして、回って見せろと促す。

ミツキはルーンに言われた通り、くるりとその場で回る。


ふわっと腰の切れ込みが回る。


『剣舞に使うような服だね』

「ええ、ルーンさま。今日姫さまは遠出をしたいらしくて、このような服に致しました」

『遠出?』

「ええ」


探る様な目付きになるルーンにミツキは肩を竦めた。


「空を久しぶりに・・・・その・・・・」

『あぁ・・・・』


合点がいったのか、ルーンが頷いた。

この精霊国4つの王国にはそれぞれの属質の聖獣が居る。

もっぱら移動手段に使われるが、勿論王族ともなれば簡単な移動術を使う事も出来るし、使われる事は好き好き、ともなる。

だが、どこかの王国を訪問する際はやはり聖獣で移動するのが常で有り、慣習とも言える。


ミツキは移動術ばかりを使う癖が有るので、母から何年か前の誕生日に貰った上位聖獣に乗る事は少ない。

ミツキに限れば、少ない、それは騎乗が下手と言う事なので有る。


その騎乗の壊滅的下手さにはルーンも呆れるほどだ。

風の姫が高いところが苦手、とは。


『つまり、練習って事?』

「うん、そう言うこと」

『――――――気を付けなよ』

「ルーンは付いて来てくれないの?」

『ちょっと用事が出来ちゃって。しばらく留守にするよ』

「え」


ミツキの顔が一瞬の内に強張る。


『さては練習に付き合わせようとしてたね・・・・』

「あ」

『やっぱり』

「だってルーン・・・・」

『取り合えず、あいつがミツキを落とす訳無いから』


ここで言うあいつ―――――――ミツキの聖獣の事である。

風の国シルディンの聖獣は鳥だ。金色の翼で大きく力強く空を掛ける。


「そうね。朝餉を頂いたら・・・・・1人で会いに行くわ」









読んで頂き、感謝致します。

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