シルディンの末姫
初めまして、あかりと申します。
初めての投稿、ドキドキしながら書いてます。
誤字脱字等、有りがたく頂戴致します。
宜しくお願い致します。
ふ、と瞳を上げると目の前には煌めく輝き。だけどそのすぐ後に感じるのは漆黒の闇。
自分の真ん中・・・・・そう、左目には煌めきを感じ、右目には漆黒。
これは、何。
「ん・・・・・」
身を捩ると何か暖かい温もりを感じた。
そこでやっと本当の意味で眼が覚める。
手の先には愛する猫の柔らかい毛並みが触れていた。さわさわと撫でると嬉しそうに猫が鳴く。
広すぎる寝台の上、白く柔らかいシーツに埋もれながらしばし猫を愛でるとやっと身体を起こした。
ぐ、と腕と背中を伸ばす。
「ルーン。またベッドに潜り込んで」
ゴロゴロと喉を鳴らす猫にそう言葉を掛けながら最近見る様になった夢―――――吉夢なのか悪夢なのか解らないあの煌めきと漆黒の夢を逡巡していると、正に夢の中の様な漆黒の猫、ルーンがその伸びやかな肢体を伸ばした。
『だってミツキ。ついついその暖かい胸の中に入りこんじゃうんだ』
ペロリと赤い舌を出しながらゆっくりとミツキの膝の上に足を掛け、そのまま背中を伸ばし、ミツキの唇にそっとキスを落とす。
『おはよう、風の末姫。僕の可愛いミツキ。今日も君に月の加護が降り注ぎますように』
ここ、シルディン国の末姫、ミツキはルーンの額に唇を落とすとベッドから滑り降りた。
床に身体に纏わりついていたシーツが音も無く落ちる。
「ルーン、お母さまから貰ったあの髪留め・・・あ、有った。」
寝台の横から銀細工の髪留めを取ると、ルーンの答えも待たずに器用に長い髪を纏め、留める。
『またそんな色気も無い止め方してさ』
「色気なんて必要無いもの」
『必要だよ、ミツキ。折角のその銀髪が泣くよ』
「髪はただの老廃物。泣かないわ」
そう言う意味合いじゃ無いよ。と声に出さなくてもルーンの続く言葉は解る。
でも無視に限る、とミツキは寝所から続く扉を開いた。
豪奢な造りの部屋の中に入り込むと更に部屋の中に有る小さな扉を開き、乱雑に衣服を掴み取った。
『また適当に・・・』
「お小言は止めて、ルーン」
服なんて、身体さえ隠せれば良いの。ルーンもまたミツキから続く言葉を解っていたのかそのまま肩を小さく竦めた。
ミツキの支度は実に早い。さっと寝着を脱ぎ捨て、新しい服を身に付ける。
女性らしくなりつつある身体をルーンの前に惜しげも無く晒すものだから、慌ててルーンは視線を逸らした。
『恥じらいが無い・・・』
「ルーンは猫でしょ」
猫だろうが、人間だろうが、精霊だろうが、関係無いくせに。
そっとルーンが息を付くと、その身体を軽くミツキが抱え、肩に乗せた。
そのまま肩をぐるりと巻くようにルーンが身体を横たえると、ミツキが軽く鼻にキスをする。
いつもの朝。
シルディンの姫君、ミツキとその聖獣、ルーン。
そう、いつもの朝の、はずだった。
読んで頂き、ありがとうございました。ぺこり。