↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】クリムゾン・コート・クルセイド Vol.Ⅱ ”平和たる軍靴"  作者: アイセル
第六章 St.Anger

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

70/175

脱出―⑥―

当作品の無断転載、AIを含めたあらゆる二次利用を禁止します!!

Do not reupload / use my writing for any purposes, including for AI!!

 三条の出した長身の人型――"ライティングス・オン・ザ・ウォール"。


 翼剣"ブラック・クイーン"がその純金の頭と銀色の右肩に袈裟切りを仕掛けた時、ロックの耳にもそ(・)の(・)声(・)が(・)伝(・)わ(・)っ(・)た(・)。


 巨大な灰色狼の両前足が、"巨大甲冑"の両肩を瓦礫の絨毯に縫い付けている。


 "巨大甲冑"の胸部から腹部にかけ、剥き出しだった青銅色の球体が光り出した。


 青銅色の球体が、光と共に地と空気を震わせる。


「始まりましたか……」


 三条が、自身の召喚した純金の頭をした人型の背後で呟いた。


 その光景に目を奪われたロックは、一瞬の隙を許す。


 純金頭の人型が放つ、銀色の右腕――その裏拳がロックへ撓(しな)った。


 翼剣の"籠状護拳(バスケットヒルト)"で銀色の大蛇を思わせる一撃を防ぐ。


 衝撃により三条との間合いが離れた。


 ロックは、三条と再度対峙する。


 彼女の眼が、ロックではなく青銅の色の球体を映した。


 光りながら、それは大きな嬰児の顔を作る。


 青銅色の嬰児の顔から、手足が生える。


 手足の爪が鉄錆色に染まった。


「なんだってんだ……いったい!?」


「誕(・)生(・)ですよ」


 ロックの戸惑った声に三条が答える。


 三条の眼に映るロックは、露骨に眉を顰めていた。


「赤(・)ち(・)ゃ(・)ん(・)がですよ……中々可愛らしい」


 三条の恍惚とする笑み。


 喜びを表しているが、彼女に潜む仄(・)暗(・)さ(・)をロックは覚える。


 会話の噛み合わない三条から、青銅色の嬰児に目を向けた。


 嬰児は夜の帳に輝く月を見ている。


 その眼差しは、どこか母親の面影を見出しているようだった。


 右腕を上げるが届かない。


 それに煩わしさを覚えたのか、青銅色の胴を起こす。


 夜の闇の下、青銅色の嬰児が全身で泣き始めた。


 頭部が三メートル。

 

 胴の部分は――足を入れれば――五メートルくらいだろうか。


 巨大な青銅色の嬰児の泣き声の中に混(・)じ(・)っ(・)た(・)高(・)い(・)声(・)。


 それを耳にした、ロックの背筋が凍り付いた。


『どうなったの……どうなってるのよ、お腹が熱い……熱い、私(・)の(・)子(・)ど(・)も(・)はど(・)う(・)な(・)っ(・)た(・)の(・)よ(・)――!?』


 雑賀の泣き声と共に、ロックは青銅色の嬰児に目を向ける。


 青銅色の嬰児も"ウィッカー・マン"と見て良い様だ。


 その中には、雑賀を思わせる女性の人型が見える。


 "ウィッカー・マン"の熱源であることには変わりないが、


――腹(・)に(・)も(・)う(・)一(・)つ(・)の(・)熱(・)源(・)!?


 しかも、彼女の中で小(・)さ(・)い(・)人(・)型(・)と(・)し(・)て(・)蠢(・)く(・)。


「三条、テメェ……人間で飽き足らず、腹(・)の(・)中(・)の(・)子(・)ど(・)も(・)も取り込んだか!?」


 ロックは叫ぶと同時に、翼剣型"命導巧(ウェイル・ベオ)":"ブラック・クイーン"の鍔を叩いた。


 剣の太陽十字の刻まれた鍔が大きく割れ、半自動装填(セミオートマチック)式拳銃型の"命導巧(ウェイル・ベオ)":"イニュエンド"が飛び出る。


 三条に向けて、ロックは銃弾を三発放った。


 彼女の眼前で、純金の頭の人型が銀の右の掌で全ての銃弾を遮る。


 "ライティングス・オン・ザ・ウォール"の掌の前で、銃弾が爆散。


 水蒸気が純金頭の"命熱波(アナーシュト・ベハ)"と三条を覆った。


 ロックは"定めに濡らす泪《ジェオール・ナム・マーヴ》"による、水蒸気爆発の煙幕で三条と"命熱波(アナーシュト・ベハ)"の眼を奪った。


 "イニュエンド"を"ブラック・クイーン"に戻し、駆け抜ける疾風(ギェーム・ルー)の高速移動で、三条の背後を取る。


 間髪入れず、炎に染まる翼剣――"迷える者の怒髪(ブイル・アブァラ)"による墳進(ジェット)火炎――が三条の後頭部を捉えた。


 "ライティングス・オン・ザ・ウォール"の純金の頭と銀の右腕が炎を遮りながら、ロックに迫る。


 銀の右手には、ロックの炎の残り火が纏わりついている。


「避けてみな(ドッジ・ディス)!?」


 ロックは"ブラック・クイーン"から、再度"イニュエンド"を取り出す。


 "供物を味わう舌(チェンガ・ラサール)"を"ライティングス・オン・ザ・ウォール"の右腕に放った。


 酸素食いの炎が、炎に覆われた銀の拳を食らう。


"火を以て火を制す《ファイト・ファイア・ウィズ・ファイア》"。


 ロックの放った"供物を味わう舌(チェンガ・ラサール)"の利か。


 気化燃料の炎が、"ライティングス・オン・ザ・ウォール"の全身も包みこんだ。


 炎に染まる純金の頭の守護者の背後に立つ三条。


 三条の眼が炎に染まり、ロックの怒りに満ちた眼も捉える。


 彼女が口の端を歪め、吊(・)り(・)上(・)げ(・)た(・)。


 確信に満ちた三条の眼と顔を、大(・)き(・)な(・)影(・)が(・)覆(・)う(・)。


 大きな影の正体――それは、青銅色の嬰児だった。


 彫り込まれ、起伏のない眼と口が、三条を捉える。


 容赦なく、巨大嬰児の右拳がピンクのパンツスーツの女に振り下ろされた。


――畜生!!


 ロックは三条と青銅色の嬰児から離れる。


 ロックの獲物だった三条は、嬰児の一撃に動こうともしない。


 純金の頭の守護者が銀色の両腕で、主である三条に向けた嬰児の一叩きを防いだ。


 見えない障壁に止まる、嬰児の右掌。


 それが弾き飛ばされ、大きく状態を反らした。


「さて……デ(・)モ(・)参(・)加(・)者(・)の(・)皆(・)さ(・)ん(・)の(・)避(・)難(・)も終わったので、私も引き上げるとしましょう」


 三条が純金の頭の守護者が銀色の両腕で抱えられ、ロックの側を駆け抜けた。


 三条たちが、サキ、一平と龍之助と戦っていた、三人の中年の男女――リカコ、マキナとカンタ――に突っ込む。


 炎のリカコと氷のマキナを、サキが"命熱波(アナーシュト・ベハ)"の"ライラ"と"ヴァージニア"を召喚して、応戦していた。


 雷を使うカンタも、一平と龍之助が炎と水の"疑似物理現象"で、動きを封じていた。


 中年三人組が――サキ達に背を向け――三条の後に続く。


 声にならない叫びを上げる彼らの他に、"政声隊"はいないようだった。


 "S.P.E.A.R.(スピア)"の代表である、秋津の姿も消えている。


 ただ、"白い少女"――"レン"――が残り、青銅色の嬰児を見下ろしていた。


 その眼差しはどこか満足そうで、口の端を吊り上げている。


"レン"の眼に映る"青銅色の嬰児"が移動を始めた。


「ハイハイで進んでいる!?」


 シャロンが叫ぶ先にあるのは、サキ、一平と龍之助。


 彼らのいる場所は、市役所の駐車場の南側でその出口――つまり、市役所周りの商店街だった。


「腕の逞しい赤ん坊だな」


「そのガッツは買いたいね……二(・)度(・)と(・)、戦(・)い(・)た(・)く(・)な(・)い(・)け(・)ど(・)!!」


 ロックの言葉に、青銅色の嬰児を追うサミュエルが答えた。


「ついでに言うと、街(・)へ(・)侵(・)入(・)さ(・)れ(・)な(・)い(・)た(・)め(・)に(・)、ガッツを示せ!!」


 ブルースの言葉に続いて、ロックも青銅色の巨大嬰児を追った。

面白いと思ったら、リアクション、評価にブックマーク、よろしくお願いいたします!!


© 2026 アイセル

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。