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【完結】クリムゾン・コート・クルセイド Vol.Ⅱ ”平和たる軍靴"  作者: アイセル
第四章 Cog By Cog

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歯車は噛み合う―②―

当作品の無断転載、AIを含めたあらゆる二次利用を禁止します!!

Do not reupload / use my writing for any purposes, including for AI!!

"船の墓場" 上万作(あまんさく)市と伊那口の境界 午後1時32分


「よう、ロック……悪いな、来てくれて」


 ロックの目の前に立つ男――斎藤 一平。


 炎色の前髪を立て、それに合わせたパーカーを纏っている。


「……言葉の割には、楽しそうに聞こえるけどな?」


「まあ……こ(・)れ(・)を全力で使える相手がいるからな!」


 一平が両腕をロックに向けて突き出す。


 少し前の大乱闘で見せた"命導巧(ウェイル・ベオ)":"ライオンハート"。


 手甲型の"命導巧(ウェイル・ベオ)"で、拳に装着された銃口から炎が発射される。


「ついでに言うと、ロック……お前も、今(・)日(・)は(・)持(・)っ(・)て(・)き(・)て(・)る(・)な(・)!!」


 一平の目に映るロック。


 紅い外套(コート)を纏い、拳から肘ほどまでの"籠状護拳(バスケットヒルト)"を右手に持つ。


 "ブラック・クイーン"。


 一平がその名を出した時、ロックは驚いた。


「テメェが持って来いって言ったんだろ? まあ……良いが、一番気になるのはな……」


 ロックは溜息をつきながら、


「どうして、お前が『ア(・)イ(・)ツ(・)の(・)名(・)前(・)を知(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)の(・)か(・)?』ってことなんだが?」


 朝方、ロックは一平から"リーネア"を受け取った。


 ロックの"よ(・)く(・)知(・)る(・)名(・)前(・)"と共に、決闘の時刻と場所を一平が指名してきた。


 場所は、"船の墓場"内のガレージ跡地。


 ロックはそこまでの場所を、一平から教えてもらい、たどり着いた。


 ガレージ内の一平のいう"訓練場"。


 潰れた車が重なり、四方を囲っている。


 その中で、二人の視線が絡み合っていた。


 一平の眼は、炎の揺らぎ。


 彼の眼が映す、ロ(・)ッ(・)ク(・)の(・)そ(・)れ(・)は剣の鋭さだった。


「"ベネディクトゥス"……知る人ぞ知る奴だ……」


「……知り合いというか、なんというか……そうなの?」


「というか、お前の"命導巧(ウェイル・ベオ)"が答えになってる気もするがな?」


 "ブライトン・ロック社"が厳重に管理している"命導巧(ウェイル・ベオ)"を持ち出せる人物。


 しかも、それが一平に渡っているということは、


「少なくとも"ラ(・)イ(・)オ(・)ン(・)ハ(・)ー(・)ト(・)"が本来、イギリスにあるべきなのにお(・)前(・)が(・)持(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)時点で、渡した奴は"ベネディクトゥス"か……それをブルースが黙(・)認(・)し(・)て(・)い(・)る(・)かしか考えられんしな」


 ロックの詰問相手にブルースも加わった。


「でもな、一平……"ベネディクトゥス"……その名は、俺(・)に(・)と(・)っ(・)て(・)軽(・)く(・)な(・)い(・)」


「やる気があって十分じゃねぇか!!」


 一平が左手と左足を前に出す、拳闘の構えをして言う。


「すぐに終わらせてやる……サキとの約束があるからな」


 ロックは構えるが、一平が前のめりになりかける。


「待て待て……ロック、今なんつった?」


「……『す(・)ぐ(・)に(・)終(・)わ(・)ら(・)せ(・)て(・)や(・)る(・)』?」


「違う、そ(・)の(・)後(・)!!」


 一平のツッコミに、ロックはややあって、


「……アイツとの勉強会の約束があった。お前のリーネアの前にな」


「……ダブルブッキングしちゃったの?」


 一平の声が裏返る。


 昨日、業務用スーパーでサキと別れた後に、彼女からロックへ"リーネア"が来た。


 停学で学校に行く暇がないなら、尚、勉強する意欲も出ない。


 しかし、学生であるのにそれはよろしくないということで、サキから提案があったのだ。


 ロックも勉強が実質、"ブライトン・ロック社"への報告書代わりなので、それに乗った。


「……日を改めようか?」


「一応、午後3時からだ。バスも把握しているから、大丈夫だ……お前の案内のおかげだ」


 ロックの放った思わぬ賛辞と色(・)々(・)な(・)爆(・)弾(・)発(・)言(・)に、一平が頭を掻きむしりながら、


「確かにそんなに掛からないからな……でも、心配するところはそ(・)っ(・)ち(・)か?」


 ロックは訝し気にする。


 一平の眼に映ったロックはそれから、獰猛な笑みを浮かべ、


「大丈夫だ……俺(・)が(・)時(・)間(・)ま(・)で(・)に(・)叩(・)き(・)の(・)め(・)す(・)!!」


「そ(・)れ(・)、俺(・)の(・)台(・)詞(・)か(・)も(・)ということだけど、ね!!」


 ロックは両腕で顔面を覆う。


 右に持った"ブラック・クイーン"を前に、突進。


 一平もロックに合わせて、フットワークを前に繰り出す。


 左半身を前にし、牽制の左拳がロックの顔面に放たれた。


 ロックはこれを予測して、右肘と"ブラック・クイーン"を振り下ろす。


 一平の左肘関節への打撃で、左牽制打を潰した。


 ロックは、右肘と"ブラック・クイーン"の一撃を一平のガラ空きとなった顎に放つ。


 それを読んでいたのか、一平の眼に炎を思わせる煌きが宿った。


 ロックの左頬に、"ライオンハート"越しの右拳が食らいつく。


 しかし、一平の眼が強張った。


 ロックは一平の反転攻撃(カウンターアタック)を予測して、左膝の一撃を一(・)平(・)の(・)左(・)膝(・)に向ける。


 一平が右拳の一撃を断念。


 ロックから距離を離した。


「テメェ……膝(・)を(・)潰(・)そ(・)う(・)と(・)しやがったな!?」


 呼吸を乱しながら、一平が抗議する。


 ロックは呆れながら、


「もしかして、ス(・)ト(・)リ(・)ー(・)ト(・)でボ(・)デ(・)ィ(・)へ(・)の(・)膝(・)蹴(・)り(・)を期待していたのか?」


 一平の反応からして、リ(・)ン(・)グ(・)上(・)の(・)戦(・)略(・)が(・)有(・)効(・)と(・)思(・)っ(・)て(・)い(・)た(・)のだろうか。


 しかしながら、そ(・)の(・)様(・)な(・)礼(・)儀(・)をロックは持(・)ち(・)合(・)わ(・)せ(・)て(・)い(・)な(・)い(・)。


 ストリートにしろ、任務にしろ、相手との対峙は主導権(イニシアチブ)の奪い合いを意味する。


 つまり、手段を問わず、相(・)手(・)に(・)対(・)し(・)て(・)有(・)利(・)に(・)立(・)て(・)ば(・)い(・)い(・)。


 そのために、間合いに入り次第、相(・)手(・)の(・)足(・)を(・)奪(・)う(・)。


 それが最(・)優(・)先(・)事(・)項(・)だ。


「そういうことかよ……そ(・)れ(・)は(・)そ(・)れ(・)で(・)、燃えるぜ!!」


 一平が左半身を前に出し、"ライオンハート"を構える。


 ロックの姿が、一(・)平(・)の(・)両(・)眼(・)か(・)ら(・)消(・)え(・)る(・)。


 "疑似物理現象"――"駆け抜ける疾風(ギェーム・ルー)"による神経強化で、ロックは全身の移動速度を高めた。


 "リア・ファイル"による"ナノチタニウム"製の刃を"籠状護拳(バスケットヒルト)"と鍔だけの"ブラック・クイーン"から展開する。


 逆手から持ち替え、ロックは一平の頭上に一太刀を浴びせた。


 一平の眼が、ロックの紅黒の一閃を捉える。


 爆音が炸裂し、ロックは一平ではなく。空を切った。


 刃を振りかぶったロックに一平の右の正拳突きが襲い掛かる。


 ロックは"ブラック・クイーン"を逆手に持ち替え、防御。


 しかし、刃を叩く拳の音ではなく、何かが炸裂した音と衝撃がロックの全身を揺らした。


 ロックは衝撃を防ぎきるが、思わず胴を晒す。


 それから、左の牽制打がロックの右頬を抉った。


 ロックは後ろに避ける。


 しかし、その軌跡から放たれる衝撃に意識が削がれかけた。


 意識を取り戻すが、ロックの眼前に一平の腹への痛打(ボディブロー)が肉迫。


 ロックは"ブラック・クイーン"の横殴りの斬撃で、応戦する。


 斬撃と拳撃がぶつかる寸前、空気が爆発した。


 互いの衝撃で一歩、ロックは後退(あとずさ)る。


 一平と間合いを取りながら、


――こいつ、デタラメだ!!


 一平の使った"疑似物理現象"は、"爆衝烈拳《ドーン・ナ・セーイジェ》"だ。


 拳銃から弾丸が発射されるのは、銃用雷管(プライマー)という薬莢(やっきょう)の底部を撃針で衝撃を加えて発火するからだ。


 一平が使ったのは、その際の"衝撃破"である。


 爆風消火で炎を吹き飛ばす様に、爆轟現象で出る衝撃波を使って、拳を強化。


 攻撃はもちろん、防(・)御(・)に(・)も(・)使(・)え(・)る(・)。


――"ベネディクトゥス"が目を掛けるだけはあるな……。


 一平の強さが、その場の応(・)用(・)力(・)だとしたら、速攻性のロックは早くケリを付ける必要があった。


――サキとの勉強、厄(・)介(・)な(・)約(・)束(・)を(・)し(・)ち(・)ま(・)っ(・)た(・)な……。


 ロックは右半身を下げ、一平と対峙して思った。

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© 2026 アイセル

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