↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】クリムゾン・コート・クルセイド Vol.Ⅱ ”平和たる軍靴"  作者: アイセル
第二章 Ambush

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/175

混迷―⑨―

当作品の無断転載、AIを含めたあらゆる二次利用を禁止します!!

Do not reupload / use my writing for any purposes, including for AI!!

 火球の放たれた方向を見ると、赤、白、青緑の人型を従えた五人の"政声隊"が並ぶ。


「野郎!!」


 彼らに反応した一平が、"命導巧(ウェイル・ベオ)"を構える。


 彼の両拳から放たれた橙の火球が、"政声隊"の列を崩した。


 放たれた三発目によって"政声隊"側の襲撃者がそれぞれ、二人、三人に分かれる。


 二人組が、炎と氷の人型を伴い、一平に応戦した。


 サキとロックの前に達が立ちはだかる三人組は、炎と雷だった。


 しかも、雷を携えたのが女二人。


 二つの青緑の人型が右手に帯電し始める。


 二人の狙いはロック。


 サキは二人の女性のうち、一人へ"フェイス"を構える。


――もう一人は!?


 戸惑うサキの前で、底(・)か(・)ら(・)震(・)え(・)る(・)よ(・)う(・)な(・)声(・)が(・)響(・)い(・)た(・)。


 声の主はロック。


 先ほどの"政市会"の会員で残った四十代女性の首根っこを、ロックが掴む。


 サキは見たのはそ(・)れ(・)だ(・)け(・)だ(・)っ(・)た(・)。


 雷を撃とうとした"政声隊"の女性に、ロックの放り投げた"政市会"女性が命中する。


 "政市会"会員と"政声隊"隊員の距離としては、100メートル弱。


『うわ、エグッ!!』


 ロックの投擲距離に、"ライラ"がサキの前に現れ、叫ぶ。


 サキはそんな"ライラ"に、


「"ライラ"、彼(・)女(・)を(・)攻(・)撃(・)し(・)て(・)!!」


 短髪の守護者が驚きつつも、サキの指示に従う。


 二人目の雷の担い手へ、刃を振るう"ライラ"。


 その剣圧に、青緑の人型と担い手が吹き飛ぶ。


「おっし、一丁上がり!!」


 そういう明るい声の方を向くと、一平がいた。


 彼の足元には、二人の"政声隊"隊員が倒れている。


「ったく、お前ら……色々積もる話はあるだろうけど、落ち着こうぜ?」


 一平に言われて、サキは周囲を見る。


 何人かはロックと一平によって倒された者たちだ。


 "政市会"と"政声隊"の戦う者たちの中で、ロックとサキへ狙いを定めている。


「……俺は構わない」


 ロックの一言に、サキは頷かない。


「……お前ら、何者だ……」


 その声は、ロックを狙おうとした"政声隊"二人組の女の間にいた青年だった。


 ロックとサキの攻撃に突如晒されて、腰を抜かせている。


 彼の視線は不安定ながらも、ロック、一平に向けながら、


「"デ(・)ン(・)ウ(・)ヨ(・)"ば(・)か(・)り(・)か(・)俺(・)た(・)ち(・)ま(・)で(・)叩きのめしやがって!! ……お前ら、誰(・)の(・)味(・)方(・)な(・)ん(・)だ(・)よ(・)!?」


 男は顔を歪ませ、サキも糾弾する。


「ど(・)っ(・)ち(・)の(・)味(・)方(・)……だと?」


 サキに糾弾した男に、ロックが足を向けた。


 一歩ずつ力強く歩みながら、


「"電脳右翼(デンウヨ)"だろうが、"電脳左翼(デンサヨ)"だろうが……なんで、俺(・)が(・)テ(・)メ(・)ェ(・)ら(・)の(・)力(・)に(・)な(・)る(・)前(・)提(・)で語ってんだよ?」


 ロックの鋭い視線が、腰を抜かせた"政声隊"青年に刺さる。


 距離は20メートルくらいだが、まるでロックに首を絞めつけられているかのように真っ青になっていた。


「"紅き外套の守護者《クリムゾン・コート・クルセイド》"とはよく言うぜ……その名前と力、どっから来たのか考えたことがあるか?」


 ロックの男に向けた一言に、サキは息が詰まる。



『あなたという……物(・)語(・)は……終(・)わ(・)ら(・)せ(・)な(・)い(・)』



 どこか、懐かしい声がサキの頭の中に響く。


 "政声隊"の男に、力強く一歩ずつ距離を縮めるロック。


 そんな彼が血(・)ま(・)み(・)れ(・)で瀕死となっていた姿と重なる。


――これは……?


 サキは戸惑いつつ、ロックから視線を逸らさない。


 サキに頭痛が走る。


 痛みと共に、脳裏に浮かんだのは血(・)ま(・)み(・)れ(・)のロックを優しく抱く、少女。


 少女は、どこかロ(・)ッ(・)ク(・)に(・)似(・)て(・)い(・)る(・)凛とした雰囲気だが、儚さも持ち合わせている。


『私、私(・)の(・)命(・)を(・)……あ(・)な(・)た(・)に(・)……』


 少女の一言がサキの頭に響くと、


「テメェ……漫画読むか? なら、全てのヒーローに起源(オリジン)があるよな……なら、俺(・)に(・)も(・)あ(・)る(・)と(・)思(・)わ(・)な(・)い(・)の(・)か(・)……こ(・)の(・)力(・)と(・)名(・)を(・)得(・)た(・)経(・)緯(・)がよ……?」


 ロックが笑みを浮かべるたびに、迫られた男から血色が失せていく。


 しかし、ロックの笑みを見たサキは、


――涙?


 ロックに似た雰囲気の少女が抱きしめ、涙を浮かべている。



『誰の為でもない、あ(・)な(・)た(・)自(・)身(・)が……この世界で――』



 彼女の一言。


 それが意味することを、サ(・)キ(・)は(・)理(・)解(・)し(・)て(・)し(・)ま(・)っ(・)た(・)。


「俺は死にかけた……いや、もう死(・)ん(・)で(・)た(・)!! しかし、アイツに助けられた……アイツが、ア(・)イ(・)ツ(・)の(・)命(・)と(・)引(・)き(・)換(・)え(・)に(・)、俺(・)を(・)!!」


 "政市会"と"政声隊"の争いの声が、静まりつつあった。


 しかし、サキはそれが誤りだと気づく。


 静まるというよりは、ロックの戦(・)叫(・)と(・)も(・)言(・)え(・)る(・)慟(・)哭(・)に(・)よ(・)っ(・)て(・)沈黙に追いやられたのだ。


 "政市会"、"政声隊"だけでなく、所在なさげに見つめる秋津や、彼女を守る堀川も、ロックの異様な雰囲気に引き付けられている。


「テメェらがあ(・)り(・)が(・)た(・)が(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)力(・)や(・)名(・)は……俺と共に、生(・)き(・)た(・)い(・)と(・)願(・)っ(・)た(・)ア(・)イ(・)ツ(・)の命(・)なんだよ!! それをテ(・)メ(・)ェ(・)ら(・)の(・)勝(・)手(・)な(・)美(・)辞(・)麗(・)句(・)の(・)た(・)め(・)に(・)、使(・)え(・)っていうのかよ!!」


 ロックの眼下の"政声隊"メンバー。


 彼の目から焦点は消えている。


 涙や涎が顔を覆い、股(・)間(・)が(・)濡(・)れ(・)て(・)い(・)た(・)。


 ロックが生気のない男に、右手を振り上げ、


「サキ!!」


 一平が叫ぶ。


 彼の叫びで、ロックは訝し気な顔を作るが、


「もう、十分だよ?」


 サキは、ロックの目に映る自分の顔を直視できなかった。


「どけよ?」


「どかない!!」


 ロックの前に立ちはだかるサキ。


「殴(・)る(・)ぞ(・)?」


「殴れば良いでしょ!?」


 カナダのバンクーバーで、自(・)ら(・)の(・)力(・)を利用されたサキ。


 彼女はロックに助けられた。


 それなら、


「私はあなたを止める。あの時のあなたと同じように……"ライラ"や"ヴァージニア"と一緒に……"フ(・)ァ(・)ン(・)"さんと、あなたも悲しませたくないから!!」


 ロックと初めて会った時から、感じていたこと。


 サキを誰かと重ねている。


そ(・)の(・)名(・)前(・)を(・)初(・)め(・)て(・)聞(・)い(・)た(・)時、サキは確信した。


 彼女を失った罪悪感。


 それが彼を今(・)も(・)縛(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)。


「あ(・)な(・)た(・)を(・)助(・)け(・)ら(・)れ(・)る(・)の(・)は(・)、あ(・)な(・)た(・)し(・)か(・)い(・)な(・)い(・)……でも、あなたのために出来ることはある……それは、あなたと戦うこと!!」


 "フェイス"を構え、サキはロックと対峙する。


「……上等だ、ア(・)イ(・)ツ(・)の(・)名(・)を出したなら……覚悟はできてんだろうな?」


 ロックの"政声隊"の男への興味は失せている。


 彼の奥底にあった名前を出したサキを、敵と認識したようだ。


 ロックが地を蹴った時、サキの前に影が疾走(はし)る。


 影に覆われたロックは、地(・)に(・)伏(・)せ(・)ら(・)れ(・)て(・)い(・)た(・)。


『サキ、構えて!!』


 "ヴァージニア"の声と共に、"ライラ"がサキの前に出現。


 "命熱波(アナーシュト・ベハ)"による力場の衝突が、サキを震わせる。


「十分なのは、ロックと……サキ、アンタもだよ?」


 ハスキーな声の女性にサキは驚いた。


「和泉守先生!?」


 サキは、ベリーショートの女性――和泉守 杏菜――の闖入に声を上げた。


 水色で銃口を思わせる装飾のついたグラブに覆われた彼女の両拳。


 その右拳が、サキの顔面の寸前で止まる。


 和泉守 杏菜の右曲線突き(フック)を、サキの二体の"命熱波(アナーシュト・ベハ)"が防いでいた。


「クソッタレ……"命導巧(ウェイル・ベオ)":"ハンズ・クリーン"に"水妖(ウンディーネ)"まで出すかよ……」


 ロックが苦し紛れに声を出す。


 彼の身体を水が覆っていた。


 ロックを包む液体は、意思を持っているゼリーかスライムの様な粘体染みている。


 抵抗が激しいのか、粘体がロックの首を集中して締め上げている。


「あんたら、頭を冷やせ……みんな怖がっている中で、ぎゃあぎゃあしたら、更に人が離れるよ?」


 和泉守 杏菜の眼は、サキの呆然とした顔を映す。


 自分の敵意のない顔を見て、和泉守 杏菜はため息交じりで構えを解いた。


「アンタら……今まで出した一(・)言(・)一(・)句(・)、噛(・)み(・)し(・)め(・)て(・)考(・)え(・)て(・)み(・)ろ(・)……相当な痴(・)話(・)喧(・)嘩(・)にしか聞こえないよ?」


 和泉守 杏菜に促され、サキは自分の行動を思い出す。


 込み上げて来たモノに思わず、ロックを見ると、


「そこで俺を見るな、バカ!!」


「あ、ごめん」


 サキは思わず謝ってしまう。


 ロックがバツの悪そうな顔を作ると、


「アンナ……俺への拘束は――」


 ロックの言葉がそこで途切れる。


「よく考えろ……お(・)前(・)が(・)始(・)め(・)た(・)こ(・)と(・)だ。あ(・)い(・)つ(・)ら(・)が(・)来(・)た(・)ら(・)解くから」


 和泉守 杏菜に促されて、サキは周囲を見る。


 警察と"ワールド・シェパード社"の犬耳装甲の兵士の姿が見え始めた。


 その中には救急車も数台交じる。


 騒ぎを聞きつけて、来たのだろう。


 "ワールド・シェパード社"の社員が"政声隊"の隊員たちに駆け寄る。


 救急隊員も加わり、ケガ人の手当てを始めた。


 "政市会"と"政声隊"に関係なく、重傷者が救急隊員に搬送されていく。


 警察が、軽傷者や無傷な人を対象に聞き取りをしていた。


「取り敢えず……ロック、河上……あんたらは、生徒指導室に来い。もう学校はこの騒ぎだったら、休校になるだろうね。あと、斎藤……逃げるな?」


 "ワールド・シェパード社"と警察が集まる方へ向かう一平は、和泉守 杏菜に呼び止められる。


 逃げられないことを悟って項垂れた彼を横目に、サキはロックを見た。


 ロックに掛けられた"水妖(ウンディーネ)"の拘束が解かれている。


 彼は拘束されていた首や関節を回して、痛みを確認していた。


 彼の双眸にもはや敵意はない。


 しかし、ロ(・)ッ(・)ク(・)の(・)隣(・)に(・)サキは目を剥いた。


 彼を、白(・)の(・)服(・)を(・)着(・)た(・)少(・)女(・)が見つめている。


 彼女の両眼が、どこか青(・)緑(・)色(・)じみていたから。

面白いと思ったら、リアクション、評価にブックマーク、よろしくお願いいたします!!


© 2026 アイセル

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。