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私のダイアリー ~あの子とのお別れ~

作者: ぴと花

「私、二学期にはもういなの、私、転校するんだ」



 この言葉を聞いたとき一瞬時間が止まったと思いました。 時間がゆっくり動いていくがします。その子の微笑んでいる顔がひどく遠く感じました。

ーーーーーーーーーーーーーー


 中3になり、引っ越すことになった私(未来)はお母さんに言われ、部屋をかたずけていた。 

「あ、日記帳だ。懐かしい」

 私はぺらっと日記帳を開いた。


名前:佐野未来(さの みらい)

始めた日:2024年5月20日

終わった日:


 自分の字の汚さにくすっと笑った。

 それは去年の日記帳だった。気づいたら私は部屋のかたずけを忘れていた。




5月20日

「全体!回れ、右!」

 集団行動の練習中、体育の近藤先生の声が体育館中に響き渡った。

 

 一、二! 一、ニ!

 

 終わったあと、先生のため息が聞こえた。

「あのな、言っておくけど、みんなバラバラ。中二なのにこれができなかったらむりやん! 集団行動ってなにか分かる?」

 この問を私達に投げるのはこれで何回目だろう。めんどくさいな。耳にたこができそう。


「だれか、分かる人いる?」

 先生はまたため息をつきながら言った。

 一人の女のゆいかが手を挙げ、先生はその子を指した。ゆいかは中2の「三人娘」と呼ばれる仲良し三人組の一人だ。

「みんなが安心して学校生活をおくれるようになるためだと思いますー」

 ゆいかが堂々と躊躇せずに発言できるのは自分がクラスの一軍にいると確信しているからだ。


「私も同じこと言おうとしたー」

「ゆいか、ナイスゥー!」

 三人娘のなかの二人が声をあげ、一人はぱち、ぱち、ぱちとリズムよく拍手し始めた。


「そうだよな、このままだと、無理。一分時間をとるから練習して。はいっ、スタート」

 先生は吐き捨てるように言い、水を飲みに歩いていった。


 まじか。

 もっと声を出そうよ。

 俺達、真面目にやっているんだけどな。

 あんたがふざけているからでしょ。


「すみれちゃん、練習しよか」

 私はちらっと横を向き、隣にいるすみれに言った。すみれとは中2になってから仲良くなった友達だった。肌が白く、笑顔が素敵な人だ。


「えー。そうだね。でも、私やっても意味ないんだよね」

 え。すみれは何を言っているんだろう。ある一つの理由が頭を横切った感じがしたが、ありえないと思いその理由をゴミ箱に捨てた。


「私、二学期にはもういないんだ」

 ゴミ箱に捨てた理由がまた自分に向かってきた。当たってしまった。

 意味を理解するには時間がかかった。

 ――二学期。もういない。

 ――すみれが、いなくなる。


「うそだ」

 ポロッと言葉が出た。

「そうなんだ、一学期までかー」

 私は軽くその話を流そうとした。もしかしたら予定が変更するかもしれない。そんな適当な考えで一旦満足し、他のことに集中しようとした。


 一、二

 一、二


 バラバラに聞こえる「一、二」の声。だんだんと周りからせめられてくるように感じた。

 だが、私は他のことになんか、集中なんてできやしなかった。


 集団行動の練習が終わり、水を飲みにいった。

「ねえ、すみれちゃん?さっきの話って……」

「ああ、転校するっていう話?」

 うん。とコクっと頷く。あー。そのことね。と言い、かるくそっぽを向いた。

「本当なの?」

 確かめたかった。本当のことかどうか。

「嘘だったら未来ちゃんには言わないよ」

 言葉に詰まった。確かにそうだ。もしかしたらではなく、すみれは、二学期にもういないと、たしかに私に告げていた。

「そっか、そうだよね! 嘘じゃないなら言わないよね」

 沈黙のまま二人は水を飲んだ。


 ああ、最悪だ。



「疲れたー」

 先生に怒られっぱなしの体育が終わり、女子更衣室へ向かった。

 今日は集団行動のあとに筋トレをやった。筋肉マッチョの近藤先生は嬉しそうだった。そのせいで腕や背中が強くなったように感じる。でも意外とハードだった。


「すみれちゃん、別に言うの今じゃなくてよかったよね?」

 それはすみれが転校することだ。

「んー。なんか言っておきたかった」

 すみれは軽く目をそらした。


「泣いちゃうよ」

 ちらっとすみれは私の方を向いた。さすがに学校では泣かないと思うが、これを言ったらすみれがどんな反応をするか気になった。だが――。


「私は泣かないと思う」


 そんな。

 ちょっと傷ついた。それぐらい思い出が少なかったのだろうか。すれみには仲良いおなさな馴染がいるらしい。よく話で聞く。だから、すみれからしたら悲しくなく、むしろ早く帰りたいのかな、って思った。だけど、私とすみれとは何回か、どちらかの家に行って遊んだり、お昼ごはんを一緒に食べたりするなど、楽しい思い出ばかりだったと思う。そんなことを思っている私が恥ずかしく感じる。だが、そんなネガティブなことを考える私を否定した。


「私は学校では泣かないからね!」

 何を言っているんだ私は。とにかく、強ねを言い、自分の席へ向かった。くすっとすみれの声が聞こえた。


 帰りの会、係からの連絡ですみれが手を挙げた。

「すみれさん」

 日直さんが指名する。

「はい。国語係からです」

 発表するすみれはニコニコしていた。すみれに誰にも言わないで、と言われた。多分、知っているのは私だけなんだと思う。みんな、すみれがいなくなることを知らない。私はなぜか、すみれとの距離が遠く感じた。

 今日は金曜日。あとこの約三ヶ月。どう過ごそうか。



6月9日(月)

 すみれに事実を告げられた日から一ヶ月経った。本当にあっという間のことだった。すみれは海外に引っ越すことになったらしい。


「今日も一緒に帰ろ!」

 すみれは頷き、荷物を持ち廊下へ向かう。

 その瞬間、「すみれちゃーん!」と高い声をあげ、ゆいかとそれに続く二人が走ってきた。


 「すみれちゃんが三学期までいると思ったのに一学期までなんて。ちょー悲しい」

 どくんと心臓が飛び出た。ゆいかも知っていたんだ、すみれが転校することを。

 ゆいかの言っていることに、それな、と心の中で共感した。


 「悲しいかな?」          

 すみれが問う。

 どうしてそう言うのかな、すみれは。


 「もちろんそうに決まっているでしょ!」


 「そうなのかな?」


 「そうだよ!」

 ゆいかはそう言ってからバイバイ!と手を振りながら走っていった。



「ねえ、すみれちゃん、ゆうかも転校のこと知ってたんだ?」

「あー。そうだよ」

 すみれはまたニコッと笑った。

「なんだ、知ってるの私だけかと思った」

 私は残念そうに言った。


「お母さんが言っちゃったんだよね、転校のこと。だから、堀川たくまも松田も知ってるよ」

 すみれはクラスにいる人の名前を言う。

「結構知っているんだ」

「そうだよ。だって言わないのもあれだし……」

 あれってなんだろう。


「すみれちゃんがいなくなっちゃうの嫌だなー」

 これは本当。すみれが転校したらどうなっちゃうんだろう。すみれちゃんが転校した後のことを考えた。だが、あまりにも想像しても正解が見つからないため考えるのをやめた。


「誰も私がいなくなっても寂しく思わないよ。それに私がいなくなっても生活はなんにも変わらないよ。それに――」

「ねえ、すみれちゃん、やめてよ!」

 我に返った。何を言っているんだろう、私は。


「そんなこと言うのやめてよ、私がどう思っているかも知らずに!」

 話が止まらない。止まらない。

「わかったよ、ごめん。じゃあね」

 すみれはそう言い、別れた。

 同時にあのときのことを思い出す。


 六年生のときだ。

 私には二人の友達がいた。親友だった。だが、一人は六年生の終わりに転校した。残った私と親友はクラスが別々になってしまったが同じ委員会になるなど仲良かった。だが、中1になり、その親友からあることを告げられた。


「私、一学期の終わりに転校してアメリカに行くんだ」


 私の友達は一学期が終わった後、転校した。

 一学期が終わったタイミングで二人でお泊まり会をお互いの家でした。プレゼントを渡し合ったり歌を歌ったり、楽しい時間を過ごした。そして、悲しいお別れをした。


 家で泣いた。たくさん泣いた。

 泣く

 泣く

 泣く

 泣く

 泣く

 泣く

 泣く

 泣く

 泣く

 泣く

 涙が止まらなかった。


 だが、その時にはすみれがいた。

 すみれのおかげで楽しい毎日を送れることができた。その子がいなくなる。

 終わりが見えない。

 どうなるかがわからない。


 ――もう二ヶ月もないことに気づいたのはこのときだった。




6月20日

 一学期の定期テストがやっと終わった。


「すみれちゃん! 今日の放課後バドミントンだね!」

「うん! 楽しみ!」

 すみれが微笑んだ。

 私の家にはバドミントンコート(体育館)があったため、予約をすればバドミントンをすることができる。

 テストが終わったんだし、遊びまくって思い出をたくさんつくるぞ! そう私は心に誓った。

 すみれとは日本の家が近いから、これからも遊ぶと思う。いや「きっと」だ。私から連絡して遊んでやる。


 テストが終わったということは一学期はもうすぐで終わるということだ。本当にあっという間。

 私は人との出会いって本当にすごいと思う。

 今の私はまるで今までの友達や家族、そしてすみれといたことで自分が作られていくような感じがする。すみれがいなくなったらは私は誰と出会いどんな自分を作ることができるんだろう。どんな自分を見つけ出すことができるんだろう。




 月 日    


あの日に近づいちゃう。


家ですみれのことを思い出したら気づいたら泣いている。


来ないで、来ないでと寝る前にいつも言っていた。


私にはすみれしかいないと気づいたのはこの時だった。


すみれが転校した後、他の女子と仲良くなるためにずっとすみれと話すのはやめておこうと思ったことがあるけど、私は最後まですみれを選んだ。


だから、最後まで、一緒にいてください。



8月20日

 あの日は大雨の日だった。雨が私の代わりに泣いているようだった。


「また次会うのは日本でかな、みらいちゃん」

 あの子はまた笑う。

「そうだね」

 最高で幸せだったお泊まり会が終わった。ホテルでお泊まり会をし、そこのホテルはとっても広く快適だった。

 寝ると必ず明日が来る。

 朝起きると日付が変わっている。

 普通のことだがこれがとてつもなく悲しく感じる。

 あの普通に学校に行ってあの子に会って話して、次の日になったまた会って、話して、帰り道一緒に歩いて……。最後が多い。



 いつか会えると信じているのに、私の心の中では「最後」でいっぱいになっていた。

 車の中で話していると急に雨が降り出した。

ざーざーざーざー、と。

 

 最後の日は雨だった。


 今度は日本でだね。これからも親友だよ。

 あの子と話したことは絶対に忘れないからね。 

 そういやあ、最後まで呼び捨てできなかったな、


「バイバイ、すみれちゃん」





 そしてあの子はまた笑った。



ーーーーーーーーーーーーー


 私はパタンと本を閉じた。こんな日があったんだ・・・・。


 一年間で、私はこの本を開けるまで「すみれ」の存在を忘れていたのだ。でも、私はもうすぐ高校生になるから二年っていってもいいか。私はくすっと笑った。


 そして私はスマホを取り出し、懐かしい電話番号を見た。。





「久しぶり、未来だよ!――――――すみれ」






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