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服飾店


アドラ服飾店。


「今日は買うわよ!」

ルイは勢いよく店内に入る。女性客が多いのか店内の内装は可愛らしく、中にいるだけで心が和んだ。


「ここが宿屋のおねぇさんのお薦めの店なのね」

はぁぁ、とっても良い服が沢山。教えてくれてありがとうクララさん、とルイは感謝していた。


ドレスを衝動買いした日に宿屋の女将さんのクララという女性に、この服飾店の事を教えてもらっていたのでルイはこの店の事を知っていた。


そして今日やっと願いが叶ったので頬を赤らめ感動している。


「今日はどういったものをお探しですか?」

店員がルイに向かって聞いてきた。


「気軽に着れる私服が欲しいの。私に似合う服を上下三着用意してくれないかしら。後は自分で選ぶわ」

「かしこまりました。ではこちらからお選び下さい」


ずらーとハンガーに服がかけられている。

うわぁ、今日来て良かった、とルイは思った。


「淡い色が好きだからこの辺かな。シンプルなのがいいわよね」


鑑賞用はフリルが爆付きでギラギラしたのも、レースがこれでもかと付いたものも、宝石まみれなのも好きだが、今日買いに来たのは私服だ。



薄い水色のブラウスでデニムに似たパンツもある。服飾店員の魔法で試着しなくてもサイズが合うか分かるので楽だ。


後は、クリーム色と薄桃色のブラウスに黒と茶のパンツ。同色の刺繍がルイは気に入った。


ついでに上に羽織るカーディガン五つ。こっちも刺繍がついてて可愛い。星形まである。


へぇ、肩の部分を刺繍で繋いでるんだ。こっちは裾の部分に三角が連続で刺繍されている。


刺繍が得意なお店なのね、とルイは思った。


服に簡単に付けれる布で作られた花なども売っていた。

中には小さな宝石の付いている高級なものまであって値段は銅貨で買えるものから金貨で買えるものまである。


もちろんルイは購入する事にする。いるものは全てカウンターに持っていったので、まるで花畑のようになってしまっていた。


ルイがせっせと花畑を作っていると店員がやってくる。カウンターの上の状態を見て少し固まったが、自分のやるべき事を思い出したかのように動きだした。


「ご用意できました」


店員が用意してくれたものを見てルイは感動する。やはりその道のプロの目は確かなものだった。


動きやすい服装がいいって見抜かれてるわね、ルイはそう思った。


丈夫な生地で簡単に破れそうにない同色の布を、厚い生地と薄い生地を使い分けて縫い合わせている。


縫い合わせる事で強度を上げ、しかもシンプルな色使いでちょっと可愛かった。


私が選んだのは完全な街用私服だけど、これなら採取にも行ける、とルイは喜んだ。


「全部私の好みだわ。ありがとう。会計お願い」

「お会計、三十五万千カイルになります」

「じゃあこれ」


金貨三十五枚と銀貨一枚。お釣りは無しでルイは店員に差し出す。


「収納魔法ですか。便利ですね」

そう店員が言ってきた。

それに機嫌良さげにルイは答える。


「この世で一番気に入ってる魔法なの。今日はありがとう。またお願いね」

「またのお越しをお待ちしております」



ーーーー


「さてとクララさんにお土産買っていかないとね」

食べ物がいいかなぁ、とルイは思っていたがこの辺りの路上には出店はない。


店に入って買うしかなさそうだ、と思っていると籠を持った子供達が何やら声をかけているのが見えた。


よく見てみるとクッキーや揚げ物のお菓子を売っている。これだ、と思いルイは子供達の所まで歩いて行った。


「お一つどうですか?」

スカートをはいた十歳ぐらいのお嬢ちゃんがルイに声をかけてくる。まだ籠には沢山のお菓子が残っていた。


「じゃあ十個いい?」

ルイが聞くとお嬢ちゃんはニコリと笑顔になった。


「ありがとう、おねぇちゃん」


一つが小銅貨五枚なので、銅貨五枚を支払いクッキーと交換する。茶色の乾いた葉っぱに包まれたクッキーは三枚ほど入っていた。


ルイが食べてみるとバターではない味がする。


「これは何の油を使っているの?」

「パンキーっていう小麦を食べる大きな芋虫からとった油だよ。今が旬なんだ」


芋虫・・・イモムシかぁ・・

まぁ美味しいからいいか、とルイは思う。


「こっちの揚げ菓子もどうぞ」

「五つ貰うわ」


こちらも茶色の葉っぱに包まれていて開けると白いかまぼこを素揚げしたような菓子が四つ入っている。


串が一つ入っていたので、それで一つ突き刺してルイは口に入れた。


「この揚げ菓子おいしいわね。小麦じゃなかったんだ」

中がとろとろして、たこ焼きっぽい感触がするけど味はステーキを甘くしたような感じだ。

これは好きな味だ、とルイは思った。


「これもパンキーだよ。おねぇちゃん」


ぶっ!ここでも出てくるの?パンキー。さすがにルイは驚いた。


「輪切りにして揚げて肉で作ったソースをかけるんだよ」


しかも実物の輪切り!?パンキーは現地の人に好かれすぎでしょ。生きて動いてる君には逢いたくないけど、君っておいしいわ。ありがとうパンキー。


ルイは遠い目をしつつも味わって食べた。


「あと聞きたいんだけど、見た目の可愛いお菓子を売ってるお店知らない?お土産として渡したいんだけど良い所知らなくて困ってるの」


「それならここから五軒先のお店に売ってるよ。包装も可愛いんだよ」

「さすが詳しいわね。ありがとう、行ってみるわ」

「また来てね。おねぇちゃん」

手を振って別れる。




そしてたいして時間もかからずにファンシーなお店に辿り着いた。

店の扉も可愛くハートマークや星のマークを取り入れた、ピンク色の装飾が施されている。子供が何度でも来たいと思うようなお店で雰囲気がとても良かった。


入ってみると甘い匂いが店内に広がっており、色とりどりのケーキのような丸いパンがデコレーションされて店頭に並んでいる。


イチゴっぽい匂いがするので果物でも使っているのかもしれないと期待は大きかった。


所狭しと並ぶ美しいお菓子達。宝石のように見えるのは乾燥した果物なのかもしれない。


ルイは見るだけで心を満たしてくれるこのお店が大変気に入った。だが商品が多いので初めて来たルイには味が分からない。

これは店主に聞くのが一番だと思った。


「このお店で一番売れてる商品って何かしら」

「それならこのパンキークです。果物も少し入ってますし、今が旬なパンキーも入ってますから一番人気です。お薦めですよ」



ーーーー



宿に戻ったルイは服飾店を教えてくれたクララを見つけると可愛いピンク色の箱を手渡した。


「今日はありがとう。教えてもらったお店、とっても良かったわ。これ御礼に買ってきたの。パンキークだけどどうぞ」

「それは良かったわ。ありがとね、ルイちゃん。私の大好物よ」


パンキークを受け取ってくれたクララさんは大変喜んでくれた。店主一番のお薦めは間違っていなかった。


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