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シュラドの街13


ー昼ー


店で麺を使った料理を食べてから、ルイは歩道を歩いていた。


「やっぱり広い街ねぇ」


馬車に乗って移動している者達が、隣を通っていく。自分も乗ればよかったかな?と少し考えながら歩き続けた。


店の前を通り過ぎる時、楽しそうに食事している家族連れが見える。それを微笑ましく見てから、目線を上に向けた。


街で一番高い建物が見える。

四角の窓がついており、屋上に人の姿が確認できた。


「防衛都市って感じね」


それだけ魔獣に注意してるのだ、とルイは思う。決してゴブリンの対策だけではなかった。


「飛行する魔獣が襲ってくる事があるのかもね」


そんな事を思いながら建物を見上げていると、人間を乗せた鳥のような生き物が飛び立つ。頭は鎧兜のようで、その下から茶色い羽毛が広がっていた。


何羽も飛びながら空中で旋回し、一列に並んだり、二手に分かれたりと、動きを変えながら移動範囲を広げていく。決められた動きなのか、乱れる様子もなかった。


ルイから少し離れた場所で、お爺さんもベンチに座って空を見上げている。子供達は笑いながら手を広げ、鳥のマネをして走り回り、見守る母親も、時折、空へと視線を移していた。


「フフフ、可愛い」


子供の遊ぶ様子に、癒されながら歩く。


焼き菓子を作っている店があり、地元の人が買いに来ていた。


この世界に飛行機がない事は分かるので、街から街へと移動する時、馬車を使う事は理解出来る。飛行する魔獣が存在するので、その生物に運んでもらう事や、魔法で移動する人はいないのかと、ルイは考えていた。


「異世界には異世界のやり方があるからねぇ。まぁ皆、馬車で移動しているから、そういう事なんでしょう」


シュラドに来る時にも、冒険者ギルドから言われたのは馬車移動だけで、他の移動方法は提示されていない。だから馬車だけなのだと、ルイは判断していた。


「急ぐ旅でもないし、空なんて飛びたくないから問題ないけど」


足場の無い、空中を飛ぶのは怖すぎる。不器用で、運動をするのが得意ではないルイは、目的がないなら大人しくしている方が好きだった。


歩き続けていると、広い場所に出る。

そこは丘のようになっていて、親子が遊んだり、地面に仰向けになって日光浴を楽しんでいる者達が、自由にしていた。


歩いている人もいれば、マラソンをしている人もいるので、行き先が気になったルイは、その後に続いて軽く走ってみる。


風が体に当たって流れていくのを感じながら、前に進んだ。


広場から出て、木々の間も走って通り抜けると、また店のある場所が見えてくる。走り終わった人達が、ベンチに座って休んでいた。


ルイも足を止め、ストレッチをしながら体を解す。

そうしていると、遠くに門が見えた。


兵士のような者が立っているが、誰も入って来ているようには見えない。何の為の門なのか、ルイには分からなかった。


「あれは誰が使うのかしら?」

「あそこの門は、領主様が通る門だよ」


ルイの言葉を聞いていた初老の女性が教えてくれる。


「民衆と同じ場所から入ると、差し障りのある人物が、あの門を通るのさ」

「そうなんですね」

「あたしらに礼儀正しくしろって言われても、そう簡単には出来ないから、ありがたい事だよ。あたしの息子なんて全く信用ないからねぇ。気づいたら牢屋に入ってたなんて聞きたくないさ」


冗談を言うように話すので、ルイも笑顔で聞く。


「あんた旅人だろ?ここら辺は安全だと言っても、女の一人行動は気をつけなよ」

「ありがとうございます。こう見えても強いんですよ」


ルイが自分なりの強そうなポーズを取ると、笑ってくれる。


「そうかい。それは失礼したね。じゃあ何かあったら助けてくれよ」

「逃げ足なら任せて下さい」

「なんだい。若いくせにずいぶん弱気だねぇ。あたしの若い頃はもっと血の気が多かったよ」


女同士の戦いを初老の女性が話してくれたが、それにルイは少し引く。髪の引っ張り合いを楽しそうに話されても、どういう表情をすればいいのか分からなかった。


「わたしは血の気よりも、食い気なんです。この街の食べ物は美味しいし、フェルミの街の食べ物も、すっごく美味しかったですよ」

「あっはっはっ、沢山食べな」

「門の事、教えてくれてありがとうございます」


頷くと、初老の女性はそのまま歩いて行ってしまった。


「さてと、私も行こうかしら」


ゆっくりと景色を見ながら歩き出した。






ーーーー



夕方になり、宿に戻ると、受付カウンターにカドモスとは違う別の男性が立っている。


こちらも戦闘が出来るような体格の良さで、暴れる者がいたとしても拳で語れそうだ。


ルイは愛想良く声をかける。


「鍵をお願いします」

「ルイ様ですね。少々お待ちください」


後ろに回ると、鍵を丁寧に持ってきた。


「十三番でお間違いないですか?」

「ええ、合っています」


受け取ると、礼を言ってから離れる。

ルイは階段を上がって、自分の部屋の前まで行き、鍵を開けて中に入った。


しばらく休んだ後、夕食の時間になったので食堂のカウンターに行く。


「今日のお食事に苦手なものは、ございますか?」


ルイの事を覚えていた店員が、メニュー表を出してきた。それを読んでから返事をする。


「これなら大丈夫なので、そのまま出して下さい」

「分かりました。ではテーブルでお待ち下さい」

「ありがとう。じゃあ、よろしくね」


昨日、座った場所が空いていたので、同じ場所に座る。周りを見渡すが、ティモンとリジーはいないようだ。


大人しく窓の外を見ながら待っていると、食事と飲み物が運ばれてくる。店員がルイの前に置いていった。


「いただきまーす」


野菜を細かく切って、赤い木の実のようなものを砕き、上から散らしている。そして、紫色のタレをかけているので色鮮やかだった。


フォークを突き刺してから口に入れる。

噛んでいる口から野菜が出ていたので、中に押し込んだ。


「爽やかな果物の味がする」


それから適当に切られた肉を、突き刺して食べると、パサパサとしているが味が濃くなっている。

タレが肉に染み込んでいるので、口の中から唾液が取られるような感じはしなかった。


ルイはパンをとって千切って食べる。

濃かった口の中が、丁度良くなった。


「あー美味しい」


飲み物に口をつける。

牛乳のような、まろやかな感じで、ミカンのような酸味もある不思議な飲み物だった。


次に、練られた白い弾力のある、ご飯のような物体を口に入れる。コンソメのような薄味がついていて、食べやすかった。


全部食べてから、飲み物のお代わりをする。


それを飲みあげてから部屋に戻った。




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