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シュラドの街12


シュラドの冒険者ギルド。



依頼人用の扉から入ると、左の方に受付カウンターが見える。


先に来た人が椅子に座って待っていたので、ルイも同じように座って、しばらく待った。自分の順番になったのでカウンターに向かう。


女性の受付係がいたので、自分の用件を話した。


「それでは、この回復薬はギルドでの預かりになります」

「よろしくお願いします」


回復薬の一部は、フェルミの街のギルドに送ってもらう。輸送料金はかかったが、大した金額ではないので、手持ちの金で支払いを済ませた。


回復薬を送るのは、ギルドから支払われた後でも良かったのだが、ルイは早めに行動する。

時間がある時に済ませる方が、安心できた。


これで黒き山脈が怪我をした場合は、優先的に使う事ができ、そして期限が過ぎると他の者に使われる事になる。後はギルドが汚職や転売をしていないか、使用状況の確認をすればよかった。


半年ごとに確かめるのもいいかもね、とルイは思う。そうすれば、定期的に寄付する事も出来るし、冒険者ギルドに貢献する事にもなるので、良い客として扱われる事にもなるだろう。


「全ての手続きが終わりました」


受付嬢が声をかけてきたので、ルイは感謝する。そして用件も済んだので、ギルドから出る事にした。


お互い頭を下げてから外に出ると、眩しい光が目に入る。思ったよりも時間が経っておらず、想定したよりも自由な時間が増えた。


「これからどうしようかしら」


手をかざしながら、ルイは考えていた。





ーーーー


午前中で日も高く、時間もある。

買い物をする事は決まっているので、どの店に入るか迷っていた。


「服飾店、雑貨屋、宝石店・・」


行きたい店がありすぎて、まだ決められずにいる。懐が寒くなっているので、高級店は除外した。


外から見るだけでも楽しいので、ルイは店に並んでいる商品を、外から見て回る。

そこで一軒の店が目に入った。


そこは花屋で、元いた世界でも通り過ぎる時に見るぐらいだったが、置いている花が気になる。


決心がついたルイは、店内に入った。


「いらっしゃい。買う花は決まっているかい?」


客がいなかった為に、直ぐに声をかけられる。


「外から見たら凄く綺麗だったから、無意識に入っていたわ」

「ハハッ、そうか。どれが気になったんだい」

「一番はこれ」


エプロンを付けた若い男性の店主から聞かれて、ルイは一つの花を指差す。


光ファイバーで出来たような七色の花が、そこにはあった。


「これ、本物なの?」

「ああ、珍しい花だが本物だよ。ただ魔法の力でそうなっているだけで、五日ぐらいで色落ちするんだ。そうなると赤色に変わるから二回楽しめるよ。一本銀貨一枚だよ」

「三本お願い。それと、金貨一枚出すから花束にして欲しいの」


金貨を一枚差し出すと、店主が受け取る。


「ああ、いいよ。どういうものがいい?意見を聞きたいな」

「黄色や白の、気持ちが明るくなる感じのものがいいわ。私に似合う、元気で活発な感じもいいけど、欲を言うなら可愛さも欲しいわね。性格は可愛くないけど」

「そんな事ないさ。客の要望に答えるから任せてくれ」


店主は笑顔で花束を作りだす。

それを十分ほど待っていた。


「可愛いお嬢さん。どうぞ」

「ありがとう。理想通りね」


ルイは嬉しそうに受け取ってから、花束に顔を近づけ、香りの確認をする。良い匂いがして、幸せに包まれた。


「黄色と七色が喧嘩をしないように工夫してみたんだ。白や黄色にも様々な色があるからね。それを気をつけながら組み合わせると、こんな風に花達の美しさが、さらに上がるんだ」

「今日は来て良かった。またお願いね」


店の外に出てから花束を見る。

外で見る花も格別に良かった。


収納せずに見ていると、道行く人に、恋人に貰ったんだ、と勘違いされる。微笑ましい表情で見られるので、ルイは恥ずかしくなった。


「いやぁ・・そうよね。私の年だったら恋人よねぇ」


実は自分で買ったんです。とは言えずに持っていた花束を収納する。


それから目的もなく、歩いた。




路上で演奏している人を見つける。


金属製の細長い棒で、地面に置かれた器具に固定された、青黒い卵のようなものを叩いていた。

叩いた時に出る甲高い澄んだ音と、余韻がとても聞き心地が良い。


「何を叩いているんだろ?」


同じように聞いている数人の中に入ってルイも聞くが、音楽よりも卵の方が気になった。


演奏が終わる。


箱が置かれていたので、その中にいつもと同じように、金貨を銅貨で隠して入れていると、気づいた演奏家の青年が声をかけてきた。


「金貨をありがとう」


気づかれたルイは驚く。

青年は足元に目線をやった。


「この卵をずっと見ていただろ?気になったのかい?」

「ええ。初めて見たものだったから何か知りたかったの。もし良かったら、教えてほしいわ」


ルイがそう言うと、地面に置かれた器具に固定されている卵を一つ外すと、見せてくる。


「あら。下が平たいのね」


器具に埋められていると思っていた部分が、平らになっていた。


「これはリィビィ鳥の卵だよ」

「え、本物の卵・・なの?」


かなり引く。生きた卵を叩く目の前の人物が、得体の知れない怪しい者に見えてきた。


「ははっ。勘違いしないでくれ。この卵の親鳥は、卵から雛が孵るまでクチバシでつつくのさ。そして、この卵は俺の飼っているリィビィ鳥が放棄した卵なんだよ。子供頃から、親に卵を叩け、と言われて叩いていたら、演奏家にもなっていただけさ」

「へぇー、そんな事があるのね」

「何で鳥の代わりに卵を叩かなくちゃいけないんだ、って反発してたけど、人間って慣れるもんだ。それから習慣になって止められなくなって、最後にはこうさ。人生って面白いよな」


卵と演奏家を見比べて、ルイは頷く。


「何でも極めたら突き抜けちゃうのね。素晴らしい演奏を聞かせてもらったから、それに感謝しなくちゃ。これ鳥さんのエサ代にどうぞ」


ルイは銀貨を取り出して、箱の中に入れる。


「ありがとう。あんた冒険者か?」

「採取人よ」

「へぇー、成功した採取人ってのは羽振りがいいんだな」

「こうやってお金を使うから、全く残らないわ。その内、路上生活も経験するかもね。で、また稼いでパッと使うと」

「ぶはっ、それは素晴らしい旅人だ。街の者として歓迎するよ」

「感謝の念は行動に出さないとね。優しくしてくれる街の人に、お返ししないと居心地が悪いわ」

「そうか。そう思ってくれるなら嬉しいな。時間があるなら、違う曲を演奏するから、聞いていくか?」


演奏家が笑顔で手を広げ、聞いてくる。

それをルイは歓迎した。


「もちろん、お願いするわ」


演奏を楽しく聞いていると、どんどん人が集まってくる。


盛大な拍手で終わった。




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