シュラドの街6
食堂に行くとカウンターがあり部屋番号を聞かれる。
好きなテーブルに座ってもいいらしく、ルイはドレスを着た女性の像の近くに座った。
私服を着ている冒険者らしき人達がいる。
テーブルは最大で四人座れるが、ルイは丸テーブルに一人で座っていた。
しばらくしてからルイの目の前に料理が置かれる。
パンとサラダと肉の定番料理だった。
「いただきます」
まず初めにサラダを食べる。味が染み込んでいて、とても美味しかった。
温野菜も肉の側に置かれていたので、突き刺して口に入れる。野菜の甘い味と肉汁の味が良い具合に合わさって幸せを感じた。
肉も口の中に入れる。
濃厚な肉の味だと思って口に入れたら、全く違っていたので驚く。鶏肉のようなサッパリした味だったので、見た目と違うな、と思っていた。
ふと、皿の下に紙が挟まっているのに気づく。取り出して読んでみると今日のメニューだった。
へー気がきくわねぇ。えー、香ばしく焼いたパン、朝採りの薬草を加えたサラダ、ゴブ・・・
ルイは口を押さえて立ち上がると走らないように全力でトイレを目指す。そして個室の中で袋を取り出すと吐き出して、収納魔法でなおした。
席に戻ってからもブルブルと震えている。
店員を呼んでから聞いてみた。
「あの・・ちょっと私、このお肉が苦手で・・」
「ああ、ゴブリンですね」
「ひょわー!」
ルイは耳を押さえて青ざめる。
言葉も聞きたくない様子に何があったのか店員には分かった。
「もし他に苦手なものがございましたらカウンターにお申し付け下さい。対処いたします」
「ありがとう・・ございます・・味は良かったです。追加料金を支払うので別の料理はありますか?なくても収納魔法があるので夕食には困らないので大丈夫です」
「いえ、追加料理を頼むお客様もいますので大丈夫ですよ。どのようなものがよろしいでしょうか」
「その、二足歩行をするものが駄目なので、鳥や四つ足のものをお願いします」
「では、飛行できる魔獣はどうでしょう?鳥に似ていますよ」
「人間に似た顔とか、猿に似た顔とかしてませんか?」
「ディッシャワーナやハーピーなどはおりますが、食材ではございません。大丈夫ですよ」
「物知らずですみません。では、それでよろしくお願いします」
「はい、では少々お待ち下さい」
店員は戻って行く。
ルイは頭を抱え、肘をテーブルにつけた。
「どこをどう見たらあれを食べようと思うのよ。解体現場に行きたくないわ」
確かに魔獣は美味しくゴブリンをいただき、その魔獣を人が食べるので考えて見れば食べてもおかしくはない。
けれど、心情的に人間に似た顔を持った生物を食べるのは忌避感が湧く。
ルイはさらにゴブリンが苦手になった。
「お嬢ちゃんが食べれないのは何か理由があるのか?」
突然、一つ先のテーブルに座っていた男性から聞かれる。
灰色を暗くしたような色の短髪で、茶色の瞳の下に傷がある。人付き合いは得意そうだが警戒心もある、独特の雰囲気をもった中年の冒険者らしい人だった。
「突然すまんな。一応、同じ宿に泊まっているから聞いておこうと思ってな」
「大丈夫ですよ。私のは単に好き嫌いの問題ですから気にしないで下さい」
「二本足が嫌いなんだよな?じゃあ、六本足は?」
「六本足・・いるんですか?」
「いるが、知らないのか。あんた冒険者だろ」
「冒険者じゃなくて海の採取人なんです。海の中なら足が多いのもいますけど、まさか地上にいるなんて思ってもいなくて・・」
「ああ!そういう」
男性は分かったように頷いている。
「じゃあもしかすると、八本足やそれ以上もいるって知らないのか?出会った時は油断しないようにな」
「地上こわっ!!」
ルイの様子に男性は笑う。
「あんた一人の採取人のクセに怖がりすぎだろ」
「戦った事なんてないですもん。全部、逃げてますからいいんです」
「採取人はそんなもんか」
「戦うのは冒険者に任せますよ。私の名前はルイです。貴方のお名前は?」
「俺はティモンだ。よろしくな。年は上だが同じ宿に泊まっている者同士、堅苦しい喋り方は無しにしようぜ」
「じゃあティモン。しばらくの間よろしく」
ティモンが歩いてきて手を差し出してきたので握手する。
「あんた・・やばいな・・」
それなのに相手は難しい顔をしていた。




