シュラドの街3
お店の中から道に出すように商品が並べてあるので、道行く人々が足を止めて見ている。
仲間が沢山いたので、それに紛れるようにしてルイも商品を見させてもらった。
「きれいな指輪」
相当な数の指輪が並べられている。手の届かない位置にある指輪は、店主が棒のようなものでつり上げて客に渡していた。
丁寧な扱いをされていないが全部同じ値段で、しかも安く、一つ銀貨四枚と書いてある。
「職人が思い付いたものを形にした指輪達。今から皆さんの元に行く事を楽しみにしているよ。気軽に買える品だから、贈り物にもいいし自分で楽しむのもいい。さぁ。必ず一つは気に入る品があるからどうぞ見ていってくれ」
店主の話す言葉に釣られた人が集まっている。
恋人同士のような人が多く、気軽な贈り物として女性に選んでもらっているようだ。
指ではなく紐に通してもらっている人もいる。自分の指に合わなくても問題ない人もいた。
「え、じゃあ私も首飾りにするからデザインで選ぼうっと」
ルイは手前から順々に見ていく。気に入ったものがなく上まで見ていくと、色鮮やかに見えた一つの指輪に目が止まる。
「店主さん。上から三番目。左から四番目の銀色の指輪で、黒い石に緑と金の粉がかかったような石があって・・あ、それ。さすが店主さん」
「ほら、手出しな」
ルイが手を出すと、その上に乗せてくれる。詰まんでじっくりと見てみたが、思った通りのものだった。
「店主さん。銀貨四枚受け取って」
「首につける為の紐はいるかい?」
「自分のを使うからいらないわ」
銀貨を持った手を出すと、店主が棒に籠をぶら下げて伸ばしてくる。その籠にお金を支払って礼を言った。
「ありがとう店主さん」
「ああ、またな」
店主は直ぐに他の客から声をかけられている。
「次はどこに行こうかなぁ」
次に行こうと歩き出す。三歩ほど歩くと立ち止まった。
「あ、それよりも宿屋を決めないと。次に行った店で聞いてみましょうか」
ルイは美味しそうな食べ物を売った店を探して歩く。
そしてパンケーキに似たものを鉄板で焼いている店を見つけた。
「おねぇさん。これはどんな味なの?」
「味は三種類で一番人気は蜜がかかった甘いものだよ。で、その次は苦味があるけど甘くてクセになる味のこれ。次に普通の砂糖がかかってるもの」
黄色い液体、緑の液体、砂糖の三種類ある。ルイは一応全種類を頼む事にした。
「全種類三つずつお願い」
一つ銅貨一枚だったので銅貨九枚を出す。
「はいよ。沢山かける?」
「少なめにしてほしい。でも砂糖は多めで」
「分かったよ。ちょっと待ちな」
店主が作業をしている。
それを見ながら話しかけた。
「ねぇ、作りながら教えて欲しい事があるの。この辺で良い宿屋知らない?店は高くても安くてもいいから店主の性格や評判が良い宿がいいの。旅人から話を聞いたりしてるなら教えて欲しいわ」
店主は手を止めずに作り続けている。
「良い宿屋ねぇ。旅人は結構いるから話は聞いて知ってるよ」
「ほんと!それは本当に助かるわ。どこなの?」
「この通りを真っ直ぐ進んで橋があるから渡ると、川が見える場所に看板を出している、赤い果実の宿ってのがある。そこが安いしサウナも付いてる旅人から人気の宿だよ。ただ行っても空いてないかもね。値段が高くてもいいなら、そこに見えている白くて高い建物があるだろ?」
「前の店の後ろに見えているわね」
「とにかく高いらしいけど良い店だってさ。まぁ私達には縁のない店だよ」
「服装も決まってそうね・・」
「それはないよ」
「え、そうなの?高級な宿屋ってそうなんじゃないの?」
「ここは広大な森に囲まれてるから冒険者が多いんだよ。その森の先にも結構な数の村があるから依頼が途切れる事がないのさ。だから金を稼いだ冒険者が来れるように服装は決まってないんだよ。汚れている人が来ても大丈夫なように、別の扉も用意されてあるって話だ」
「へー、考えられているのね」
「金持ちの冒険者を他にとられたくないのさ。はい、出来たよ」
店主が大きな葉っぱに包んで結んでくれている。それを受け取るとルイは収納した。
「おや、あんた冒険者だったの?」
「違うよ。採取人だよ」
「おやー珍しいね。個人でやってるんだろ?気をつけなよ」
「ありがとう。宿屋が決まって落ち着いたらまた来るよ」
「ああ、お腹が空いたらいつでも来な」
ルイは手を振って別れる。赤い看板の宿屋を目指して歩いていた。




