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シュラドの街2


冒険者ギルドの中で護衛依頼完了の手続きを終えたルイは、今度は護衛依頼を受けてくれた者達に追加料金を支払いたいとギルドに頼む。

こういう事はよくあるので簡単に手続きが出来た。


後は今回の依頼を受けてくれた冒険者が良かったので、冒険者ギルドに二十万カイルほど寄付をしておく。こうしておけば、良い冒険者が優遇される事になるのでルイもお金をおしまなかった。


「今回は本当に助かったわ」


ルイだけだと、山賊をどうすればいいのかも分からなかったし、人道的に扱う事も出来なかった。ランクHの皆には世話をしてもらって感謝している。追加料金が全員にきちんと届くように願った。


山賊討伐の報酬は二日待って欲しいと言われるが、別に急ぐ事でもなかったのでルイはそれに了解する。そして全部がすみ、やっと終わってギルドの建物の外に出ると、少し前まで一緒にいたロウフェン達が出てくるのを待っていた。


小走りで近寄ると、

「手続きは済んだようだな」

ルイの様子を見ながらロウフェンが言う。

黒き山脈の仲間達も表情が明るかった。


「もう行ったのかと思ってた。今回は本当にありがとうね」

「こちらこそ、雇ってくれて感謝している」


ロウフェンが手を差し出すのでルイは一瞬、ん?と思うが、

「おー!」

と、理解する。

異世界にも握手って存在するんだ、と思いロウフェンの手を握った。


「握手ってあるのね」

「何を言っているんだ?やった事ないのか?どんな田舎だよ」

「うちの田舎は木の棒に火をつけて感謝の舞を躍り狂った後、屋根の上に登って火を吹くんだよー」

「絶対嘘だろ。信じないからな」


そう言いながら握手していた手を放す。二人とも良い笑顔を浮かべていた。


「初めはどうなるかと心配したけど良かったわ。また機会があったら雇ってね」


そう言ったフラミーとも握手する。


「もちろんよ」

「今度は普通の依頼を頼む」

「私は同じような依頼でもいいよ」


そして、ジャッカルドもメルナとも握手した。

皆が笑顔なのでルイも嬉しくなる。怪我をせずシュラドに来れて良かったと改めて思った。


「ゴブリンに襲われたなら言ってこい。適切な対処方法を教えてやる」


ジャッカルドはそう言いながら右腕を出して、何かを捻るような手の動きを見せる。手慣れているのか迷いがなかった。

ルイはそれを見逃さない。


「その対処方法って口に出せないような事でしょ!表現方法を優しく言っても伝わるような想像してしまうような方法なんでしょ。私は絶対に回避してみせるわ」

「ルイ、頑張ってね。ゴブリンは子供以外には危なくないから討伐依頼があまりないけど、ゴブリンを食べる魔獣はシュラドには多いから討伐や護衛を頼む事は簡単だよ。血を見たくないなら追い払うだけの依頼もいいと思う」

「ありがとうメルナ。もし本っっ当に駄目だったらそうするわ」


そう言ってルイは全員を見る。


「依頼を受けてくれてありがとう。勉強にもなったし、助けにもなってくれた。とっても感謝してる。知らない事も沢山あったし、今回冒険者がどういうものなのか知れて本当に良かった。冒険者ギルドにも凄く感謝してる」


後ろにある建物を見上げる。


「本当にありがとう。また機会があれば会いましょう」

「ああ、じゃあ名残おしいがそろそろルイを解放しないとな。行きたい所もあるだろうしな」

「ちらちら店を見ている事だし行かせてあげないと」

「ちょっと!私そこまでじゃないからっ」


ロウフェンとフラミーにからかわれる。

まったくもぅ、とルイは呆れた顔をしたが直ぐに笑顔に戻した。


「今回は本当にありがとう。また何かあったら指名依頼するからその時はよろしくね」

「ああ、今後とも黒き山脈をよろしく頼む」

そうしてルイはロウフェン達と別れた。




ーーーー


別れた後、ルイは周りを見渡す。

来た事がない場所なので興味深々だった。


「さてと、まずは買い物ね。もうすぐ夕方だから早く行かなくっちゃ」


スキップしながらルイは買いたい物がある店を目指す。だがその前に露天で売っている食べ物の前に足を止めた。


少し年をとった恰幅の良い女性が、ジュージューとトウモロコシと茄子を少し足したようなものを焼いている。香ばしい匂いに、微妙にスパイシーな香りを足して、柑橘系の混ざる甘い匂いが漂っていた。

生唾が溜まる匂いに完全に足が止まって動かず、買おうと後ろに手を回して収納から銅貨を一握り取り出すとポケットに入れる。

そして店に近寄って中を覗いた。


「熱そうだけど美味しそう」

「二つで銅貨一枚だよ」

「じゃあ、これ。銅貨四枚。八つお願い」

「はいよ、ちょっとまちな」


景気のよい声と共に焼いていたものを転がす。


「これって何て名前なの?」

「これかい?これはネバカルだよ。食べると口の中が少し粘るけど、それが美味しいんだ」

「へー、匂いからして美味しそう」

「先に一つ食べるかい?」


女性がルイに一つ葉っぱに包んで渡してくる。


「ありがとう。いただきます」


食べると確かに粘つくが、そんなに嫌なものではなく旨味も一緒にやってくるので美味しかった。


「これいいわ。お腹が空いてたからどんどん食べれるわ」

「それは良かった。ほら、全部できたよ。受けとりな」


ルイは女性から受けとると、食べているもの以外は収納する。


「収納魔法かい。便利でいいねぇ」

「ええ、とても便利で助かってるわ。また来るね」

「ああ、気に入ったならまた来な」


ルイと女性はそう言って別れた。

邪魔にならない道の脇に寄ると、手に持ったものを全部食べあげてから、またもう一つ取り出すとまた食べる。

火傷をする事がないので熱々で美味しかった。

桃に似た濃厚な味で、匂いはスイカのような飲み物を収納魔法で取り出してからゴクゴクと飲む。食べたネバカルとは味が合わなかったが、お腹が空いていたので濃い味のものが良かった。


「はぁ、美味しかった」


満足したのでルイはまた歩き出す。

歩きながら、あちこちを見ているとフェルミの街との違いが見えてきた。

フェルミの街はルイが知っているヨーロッパっぽい感じがしていたが、こちらのシュラドはまるで知らない世界にいるようだった。


防衛に力を入れているのか建物自体も頑丈そうな感じを受ける。木材が少なく石材が多いので、そういう風に感じるのかもしれない。

そして一番違うのは周囲を囲んでいる壁で、圧迫感と安心感が同居する不思議な感覚で、ルイが知っているのは高波を防ぐ防波堤だった。


一定間隔に木が植えられ、根本には花が咲いている。

その横にはベンチがあって人が座っていた。

公園っぽい所では集団で運動をしている。腕立て伏せをしたり、懸垂をしたり踊ったりと様々だ。

それを眺めながら歩く。


五分ほど歩いていると店が立ち並んでいる場所に出た。



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