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シュラドまでの道16


シュラドの街。


荷馬車の上でルイは高い壁を見上げた。


「近場で見ると迫力あるわねー」


街全体を囲んでいるので、近くに寄ると大きく見える。その分、列に並んでいる荷馬車が小さく見えた。


巨大な門には、荷物を持った人間の列と、荷馬車の列がある。

ルイ達は荷馬車の列に並んでいた。


「ゴブリンって腰までの高さなんでしょ?何でこんなに高くする必要があるの?」

「考えてみろ。手も足もあるんだぞ。よじ登ったりジャンプしたりするだろ?それにゴブリン以外の魔獣も多いから、このぐらい必要なんだ」

「確かにそうね」


ロウフェンの言葉に、動物の身体能力は凄かった、とルイは思い出す。異世界の魔獣はもっと凄いのかもしれない。


「ルイ、あれを見て。ちょっと遠いけど見えるかしら」

「フラミー、どうしたの?あれって・・・ん?」


広大な森が広がっている方向をフラミーが指差しているので目を凝らす。何やら小さな緑の生物がいて、枝で低い木を叩き、落ちてきた何かを口に運んでいた。


それを見てしまったルイは飛び上がる。


「ぴょえっっ!!」


無駄に目が良くなってしまっていたのでハッキリと見てしまう。二足歩行のゴブリンがお食事中だった。


「ああやって木を叩いて落ちてきた虫を食べているの。畑に出ると野菜を抜いたり、かじったりするからこのシュラドでは、冒険者に討伐依頼を出したりするわ。

農民は夕方までは働いてるからゴブリンを追い払う事ができるけど、さすがに夜までは手におえないみたい。だいたい夜に冒険者が退治しているわ」


フラミーはそう言って説明しているが、ルイはブルブルと震えて話を聞いてなかった。


「ちょっとルイ、大丈夫?」

「だいじょばない。フラミー、ゴブリンに会わない方法ってないの?」

「うーん・・匂いにも強いし、音にも慣れてしまうのよね。朝でも夜でもいつでもいるし、人間を怖がって近づかないものもいれば、枝で叩いてくるものもいるのよ。

昔はゴブリンを大量に狩って全滅させようとした事があるらしいんだけど、ゴブリンを食べていた魔獣達や、海や川に流れたゴブリンを食べていた魔海獣達が陸や海、空からも人間に襲いかかるようになって血みどろの争いになったらしいわ」

「ヒィーーーーー!!そんな事まで望んでません!」

「だから今は畑にとって害獣になる分だけ狩っているの。ゴブリンが平気で見える場所にいるのはそういう訳ね」


フラミーとそんな話をしていた時、先程、木を叩いていたゴブリンが突然消える。


「え?」


ルイが木の下の部分を見ると、下草の中で、小型の犬っぽい何かに狩られているゴブリンの姿があった。


伸びた草があるので、その中で暴れている。

死んだ目をしてルイは見ていた。


「山賊も駄目。ゴブリンも駄目。二本足で歩くのが本当に駄目なんだな」

「そうみたい。可哀想だけどシュラドの街の中にいるしかないわね」


ロウフェンとフラミーの話を聞いてルイは復活する。


「それは駄目よ!海に行かないと買い物できないわ!!」

「おお、生き返ったな」

「好きな事には頑張る性格なのね」


二人の拍手を受けながら、ルイはゴブリンの方向から視界を外す。


「それだけが取り柄なの。絶対にお金を手にいれて好きな買い物をするわ!ゴブリン達には会わないように気をつける」


宣言をするルイから遠く離れた場所で、ゴブリンが黒い犬っぽい何かに仕留められ、森の中に引きずられていく。


尻尾を振ってとても嬉しそうだ。


ロウフェン達は本当にそんな事が出来るのか疑問だったが口には出さずにルイを応援する。


「頑張ってね、ルイ。ゴブリンは沢山いるけどきっと会わないよ」

「海に潜ってしまえば間違いない。素早く行動する事だ」


メルナとジャッカルドが言ってくるので、それに大きく頷いた。


「ありがとう、絶対に頑張って海までたどり着いてみせるわ」

「頑張りどころ間違ってないか?」

「こら、ロウフェン。せっかくルイが元気になったんだから、あなたも応援するの。依頼人でしょ」

「そうだったな、フラミー。ルイ、頑張れよー!」


海の方が危ないという事実を封印して、依頼人のよいしょをする黒き山脈。


ルイはそれに大きく頷いていた。



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