シュラドまでの道4
「もしかして足元のこれって薬草だった?」
指で示すルイに大きくイルシャは頷いた。
「そうなんです!これはですね、回復薬に使う薬草でして名前はピカリンっていう可愛い名前なんですよ。育てる事も可能なので自宅の窓辺で鉢で育ててる人もいるんです」
「へ、へぇーそうなんですかぁ」
「私はピンク色の可愛い鉢を買ってですね、このピカリンちゃんの株を一生懸命増やしてご家族で住んでいただいているんです」
「ほほぅ」
ルイの脳味噌の中でピカリンが一匹、ピカリンが二匹・・と数えられていく。
「家族だけでは寂しいんじゃないかと思いまして、青い鉢も買って別のご家族も迎える事にして、今、我が家にはピカリンちゃんとピカリン君のご家族の方々がいらしゃって一緒に暮らしているんです。そんな時についにピカリンちゃんの頭から花が咲きまして」
頭の中のピカリン一匹からモシャッと花が咲き乱れ、ルイはひきつった笑いを浮かべた。
その時、ルイの耳にヒーヒーと聞き慣れない音が聞こえてくる。
その音をイルシャに気づかれないようにルイが探すと、そこで見たものはポロスが腹を押さえ目に涙を溜めて蹲る姿だった。
「もう、ポロスさん。笑わないで下さい」
気づいたイルシャが注意する。
「ごめん、ごめん。いつもイルシャが会った人に薬草を勧めているのが面白くて笑ってしまったよ」
「ポロスさんも薬草育ててください」
「僕は植物を育てるのは上手くないんだよ。ごめんね」
そう言ってからポロスはルイを見る。
「ルイさんは旅人なんだよね。こういう場所は好き?」
「ええ、とても。風が気持ちいいもの。それに遠くまで見えるわ」
こうして三人で立っている今も風が吹いていた。着ている服も風に揺れる。
「これから高い位置にいくから景色が良くなるよ」
「それは楽しみね。ポロスさん達もランクAなら今まで色んな場所に行ったんでしょうね」
「まぁそうだね。依頼を受ければどこだって行くから冒険者は楽しいよ。ルイさんは冒険者にはならないの?」
「私が冒険者・・・」
ルイは自分が冒険者になった姿を思い浮かべる。
「やっぱり無理ね。建物内での仕事ならいいけど、冒険者って外に行くじゃない?それで途中で買いたい物を見つけちゃったら、冒険者の仕事に集中できないわ。特に依頼人がいる場合はとっても失礼だし、迷惑かけそうだから止めとくわ」
「そんなに買い物好きなんですか?」
イルシャの言葉にルイは大きく頷く。
「物欲が押さえられないのよ」
「そうなんですね」
「フェルミの街の職人さんも最高だったわ。何であんな良い品物を作れるのかしら。尊敬しかないわ。次に行くシュラドでフェルミの街がどんなに良かったか知らせるわ」
「私はフェルミ出身ですから、そう言ってもらえると嬉しいです」
イルシャは笑顔でそう言った。
「良い街で生まれたわね。街の人も凄く優しかったわ」
「そうでしょ。昔からそこだけは変わらないんです。ルイさんはどこ出身なんですか?」
「えっと・・私は」
ルイが自分の事を考えると自然に浮かび上がってくる。これは神がルイに刻み込んだものだった。
「西の方にある山を越えた先の、海の先に島があって、そこの出身よ」
「かなり遠くから来てるんですね。向こうの方は魔海獣が弱いから船で海を通る事ができる場所があるんですよね」
「そうよ。船で遠くの沖に行く事はできないけど、浅い方なら大丈夫だったわ。私の両親はもういないから戻る事はないでしょうけど、海が綺麗でいい所だったわ」
思い出すようにルイは言ってから、話を変える。
「もうそろそろ荷馬車に戻りましょう。皆、待ってるわ」
「そうですね。行きましょう」
ルイとイルシャが並んで歩き出す。
「山を越えた先の海の先の島、ね。イルウァナか・・」
呟くように言ってからポロスはルイとイルシャの後を追うようにして歩きだした。




