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シュラドまでの道2


「紅茶・・じゃなくて、赤香茶も欲しいわね」


カップに入った飲み物を手元に出すとルイは飲む。この紅茶に似た味の赤香茶はクッキーの味と良く合った。


ロウフェン達も持参した飲み物を飲んでいる。その中で、ジャッカルドが乳白色に水色を足したような色の石を出したので、何だろ?とルイは見ていたのだが、ジャッカルドは手に持った小さな石を大きなカップの上に持ってくるとジッとして動かない。しばらくすると、その石からドボドボと水が出てきた。


ルイはそれを見てあんぐりと口を開ける。

何とも間抜けな表情で石から水が出る様子を見ていた。しかしルイにとっては異様な光景でも、異世界では普通の事で誰も驚いている様子はない。


私は何でこんな良いものを知らなかったのか、とルイが考えていると、気づいた時にはジャッカルドの至近距離で石を観察していた。ふいに水が止まる。

もう少し見たいと思っていたルイの手に、ジャッカルドが石を乗せた。


「菓子の礼だ」

「え?さすがに悪いわよ。旅に必要なものなんでしょう?」

「たったの二日だ。それにその魔法石は質も良くないから、すぐに使えなくなる。そんなに高いものじゃない」

「そうなの?でも貰いづらいから私からも何かあげたいわ」


ルイは海の底で手に入れた謎なブツを取り出す。

貝の欠片やヒビの入った牙や爪のようなものから綺麗な石などあったが、ルイから見てジャッカルドに似合うのは黒い牙だと思ったのでそれを渡した。


「穴を開けたら首飾りになりそうだから拾っておいたの。あなたなら似合うと思うわ」

「これはいいな」


確かに装飾品にしたら自分に似合いそうだとジャッカルドも思う。


そんな中、メルナも参加する。


「ええー、面白そうだから私も交換したい。私、緑の魔法石をもってるよ。これは風が出るから掃除したり暑い時に涼んだりできるんだよ」

「交換しましょう!」


ルイは嬉しそうにメルナの手を両手で掴む。その目は緑の魔法石に釘付けだ。


「メルナは何色が似合うかな。髪が赤いからその系統の色にしようか」


メルナは黙って待っている。自分に何が似合うのか楽しみにしているようだ。

ルイは思いついたものを出してみる。ジャッカルドのものは黒系統のものだったので、それに比べて色鮮やかなものが出てきた。


海で適当に拾ったので砕けているものもある。その中から、赤い鱗を手に持った。


「これなんかいいんじゃない?」


中心部分が炎のように色を変える赤い鱗はメルナに似合いそうだ。メルナもそれを見て目を輝かせている。


「じゃあメルナはこれね。魚の鱗だとは思うけど、色落ちしてないし似合うと思うわ」

「ありがとう!」


メルナの喜ぶ姿を見てルイも嬉しく思った。


ルイが普段調べるのは毒の有無ぐらいなので、鑑定魔法は売る時以外は極力使わないようにしている。

全てを知ったら幸せになれるかと言われたらそうじゃないとルイは思っているので、必要な時に必要なものだけ調べるようにしていた。

要するに、買い物をする時間が減るのも、買ったものを愛でる時間が減るのも嫌、という単純な理由だった。


「どう?フラミー。似合う?」

「いいじゃない。似合うわよ。綺麗な髪をしてるから鱗の色とぴったりね」


フラミーとメルナが話している。

物々交換も楽しいわね、とルイは思っていた。


「しかし、見た事がないものだな」


ロウフェンは隣にいるジャッカルドの持つ黒い牙を見る。こんな牙を持った魔海獣いたか?と考えていた。


「まぁいいじゃない。知らない方が楽しいし。そうでしょ?ルイ」

「そうそう!分かってるわね、フラミーは」

「もちろん、私にも似合うものを用意してもらえるわよね?土が出るから園芸用にも使えるし穴を埋めたりできるわ」


フラミーの手には黄色の魔法石があった。それを恭しく受けとるルイ。


「直ぐに用意するわ。フラミーは紫色の綺麗な長い髪をしてるから紫色とか白色がいいかしら」


そんな事を考えながら収納魔法で取り出すと、ルイの手にはジャラジャラと乗る。銀色に光る三日月の形をしたものを掴むと、これがいいわね、と思った。


「髪飾りにしたらフラミーに似合いそうだわ。さすがに今の格好には合わないかもしれないけど、清楚な感じの私服ならいいと思うよ」

「確かに良さそう。良かったねフラミー」


ルイの言葉にメルナが同意する。あげるものが決まったルイは、フラミーの手にちょこんと乗せた。

気に入ったようでフラミーも微笑んでいる。


「ありがとう。自分以外の人に選んでもらうのは案外貴重ね」


受け取った三日月形の謎の物をフラミーは大切そうに持っていた。ルイはまだ持っていたものを調べると一つ取り出す。フラミーの持っているものと質は同じで形がドーナツ形のものだった。


「ロウフェンはこれでいいわよね?」

「おいおい、俺は強制かよっ」


ルイが放るとロウフェンはキャッチする。ルイが手を出したまま要求していると、渋々と赤い魔法石を出して投げて寄越した。

ルイは素早く受けとるとその石を掲げる。赤くて綺麗だった。


「火の出る魔法石だ。着火するのに役に立つ」


ロウフェンが石の説明をするとルイは頷いていた。


「やっぱり最後は火よねぇ」


ルイの手には水、風、土、火の四つの魔法石がある。それを満足そうに見ながら、一つ一つしっかりと見て確認していた。


「そんなに珍しいものじゃないぞ」


そうロウフェンが言ってくるがルイは魔法石から目を離さず答える。


「私は珍しいものにこだわってるんじゃないの。その時に欲しいと思ったものが大事なの」

「そうか・・」


呆れた様子でロウフェンがフラミーを見ると、フラミーは吹き出して笑っている。

ロウフェンがルイに魔法石を強奪された事が面白かったようだ。


「そりゃないだろ、フラミー」

「ご、ごめんなさい。自分の欲しいものをしっかりと手に入れたルイが面白くて・・でも、私と同じ質のものだから良かったわね」

「まぁそうだな」


フラミーとロウフェンの手には形は違うが、同じ色に輝く物が乗っている。髪飾りと首飾りにすればお揃いになりそうだ。


全員の物々交換は満足のいく結果で終わった。


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